変化を恐れずに

高校野球の夏の大会が終わりました。

大会期間中は、試合そのものについての話題だけでなく、現在の高校野球のあり方についての意見も多く見受けられました。

暑さ対策、選手人口の減少、さらには部活動制度そのものについて。

暑さ対策を行うという前提で考えた時、球場の問題や試合形式の問題が浮かび上がります。現在の形式を維持したままでは、大会期間を大幅に延長することも難しいでしょう。

試合形式に関する議論のテーマとしては、指名打者制、タイブレーク、7イニング制、投球数制限などが挙げられます。また、甲子園以外の球場をもっと活用するという案も、日程や運営、資金の問題、そして歴史的な位置づけを考えると、簡単な話ではありません。

私自身、高野連の内情に詳しいわけではないので、軽々にどうすべきとは言えません。
ただ、一連の議論を見聞きして少し気になるのは、元プロ野球選手を含め事情に通じていそうな方たちの中にも、非常に説得力のある意見がある一方で、少し「感情」に寄りかかりすぎている議論も見受けられる点です。

よく「球児たちに聞けばいい」という意見があります。
もちろん、当事者の声を聞くことは大切です。しかし、当事者の希望だけで制度を決めてよいのかというと、私は少し違うように思います。

例えば、「甲子園以外で開催したほうがいい」と答える球児は、おそらく多くはないでしょう。
7イニング制についても、現役の球児に聞けば「9イニングでやりたい」という声のほうが多いのではないでしょうか。タイブレークについても、延長戦を最後まで戦って勝敗を決めたいという意見が多いかもしれません。

こういった意見を持つのは、当然だと思います。

高校球児にとって、甲子園で9イニングを戦うことは、これまで積み重ねてきた練習の先にある大きな目標ですし、中途半端な決着も望んではいないでしょう。野球は記録のスポーツであり、これまで積み重ねられてきた歴史の重みも存在しています。

だからこそ、制度を考える側には、当事者の希望とは別の視点も必要なのではないでしょうか。

例えば、世界の野球の流れを考えれば、7イニング制という選択肢も決して突飛なものではありません。極端に聞こえるかもしれませんが、春から夏にかけてのリーグ戦と、それを勝ち抜いたチームによるトーナメント戦を組み合わせるなどといった形も、一つの案かもしれません。

近年の異常な暑さを考えると、「今までこうだったから」という理由だけで従来のやり方を守り続けることが本当に正しいのか、再考する必要があります。

もちろん、暑さと選手の健康被害との因果関係については、個々の事例を慎重に検証する必要があります。
ただ、これほどの酷暑の中で試合を続けていれば、いつか取り返しのつかない事態が起きても不思議ではありません。

もしかすると、すでに何らかの影響を受けた選手がいるのかもしれません。それが暑さとの因果関係を明確に証明できないために(忖度があった可能性については考えたくないので、ひとまず置いておきます)、報道されていないだけという可能性もあります。

さらに考えたいのが、選手の「寿命」です。

酷暑の中での連戦や過度な負担は、関節や筋肉への障害リスクを高めるだけでなく、高校3年間で燃え尽きてしまう原因にもなりかねません。高校野球の3年間だけを見て制度を考えるのではなく、その先の大学野球、社会人野球、独立リーグ、プロ野球、あるいは生涯スポーツとして野球を長く楽しむことまで見据えた制度設計が必要です。

例えば、球数制限の厳格化や登板間隔の調整、あるいは出場機会を平準化する仕組みを取り入れることで、一人の選手に過度な負担が集中するのを防ぎ、より多くの選手が安全に長くプレーを続けられるようになります。日本の部活動はレギュラー以外の選手のプレイ時間が少ないという指摘もありますが、多様な選手が実戦経験を積める環境づくりは、競技全体の底上げや選手寿命の延びにも直結するはずです。

決定的な問題が起きる前に、何を目標にしていくのか、何ができるのかを改めて議論すべきだと思います。

守るべきものは何なのか。

甲子園という舞台なのか。

9イニングという試合形式なのか。

高校生が野球に打ち込める環境なのか。

それとも、できるだけ長く、健康に野球を続けられる選手を増やすことなのか。

もちろん、これらをすべて両立できれば理想です。しかし、現実には何かを変えれば、何かを失うこともあります。

高校野球を100年後にも残したいのであれば、今の形をそのまま保存することではなく、時代に合わせて変化させていくことが必要なのではないでしょうか。

高校野球は、選手たちのものです。
同時に、選手たちの未来やその後の人生まで含めて考える大人の責任もあると思います。

そろそろ、感情論ではなく、データや世界のトレンド、選手の健康、競技人口、そして野球の未来を踏まえて、より冷静に議論を進めてもいい時期に来ているはずです。

蛇足ですが、今回は分かりやすく高校野球に絞って書きましたが、この問題は学校の部活動全体の問題であり、夏に行うスポーツ大会全般の問題でもあると思っています。

#高校野球 #部活 #暑さ対策 #スポーツ

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