見出し画像

【詩】ロストハイウェイ

テナーサックスが
隣の部屋で鳴っている
完全防音のはず
それなのに解る

頭痛と似た
タイミングで解る
 
ネオンは赤いまま
濡れている
脳裏にこびりついた
垢みたいに
 
君は振り返った
でも、暗すぎた
誰の顔だったろう?

手で頬に触れたら
何となく
君だなと思えたし
思いたかった

記憶は曖昧なままでも
そこに理由が
見いだせるように
信じていた
 
夜の高速道路を走る
どこへ行くのか
まるで
見えてこない
メーターだけが
静かに壊れていく

だけど
ナンバーを付けたあと
それは俺の責任
そして
無我夢中な自由
 
愛なんて
バックミラーの奥で
笑っていた影
君の白い前歯が
暗闇で妙に浮く
 
部屋の電話が鳴る
「君はもう家にいるよ」

低い声
受話器の向こうで
誰かが息をしている
奇妙な息遣いで
記憶の断片か
感情の名残りか
思い出させようとする

俺は
思わず
息を詰まらせる

渦巻く気持ちに
悩まされても
その名前は
思い出せない

けれど
君の爪だけが
まだ白く光っている
 
赤いネオンと
赤い血と
白く光る爪の
コントラスト

テナーサックスを
ハイウェイの脇で
鳴らす男がいた

かつて夜のジャズに
生きていた

マガジンへの追加、誠にありがとうございます😊🌷🐆🐾

いいなと思ったら応援しよう!