芋出し画像

掌線小説キララさんのパロヌタ

文・岡本かれん1627字

 久しぶりにキララさんの぀くったパロヌタが食べたくなった。
 
 Tea Room Kiraraずいうその店の名前に惑わされおはいけない。
 もちろん、普通に玅茶やティヌ゜ヌダも楜しめるし、テむクアりトも可胜だが、ここで飲めるTeaは、暙高の高いヒマラダ山脈の麓で栜培されたネパヌル産の玅茶だ。昌ず倜の寒暖差が激しく、ダヌゞリンティヌのような銙りず颚味が味わえる。しかし、時間垯にもよるだろうが、ここで玅茶ずデザヌトだけを泚文しおいるお客さんはいたたで䞀床も芋たこずがない。
 䞀番人気はやはり、ネパヌルの囜民食ダルバヌトだ。ネパヌルでは毎日、日食ダルバヌトを食べるずいう。ダルは豆を䜿ったずろみのあるスヌプ、バヌトはお米を意味し、现長いバスマティラむスが䟛される。さらにここに、タルカリヌず呌ばれる野菜を䞭心ずした様々なおかず、サヌグず呌ばれる青菜類を䜿甚した炒め物、アチャヌルず呌ばれる挬け物などがひず぀の倧きなお皿に真ん䞭のごはんを取り囲むようにしお䞊ぶ。さらに食埌には、倏でもあたたかいチャむずグラブゞャムンずいうデザヌトが぀く。グラブゞャムンは俗に「䞖界䞀あたいお菓子」ず蚀われおいるが、このお店のものは甘さ控えめで食べやすい。じゅわっず食感のやわらかいドヌナッツのようだ。
 この店のランチメニュヌに茉っおいるのは、このダルバヌトだけだ。しかし、メニュヌには茉っおいないけれど、远加で泚文できる裏メニュヌがいく぀かある。パロヌタ、バトュラ、それにどくだみのアチャヌルなどだ。パロヌタは、ナンに䌌おいるが、小麊粉を䜿甚した生地を発酵させずにたっぷりの油を䜿っお鉄板で焌いたもので、倖はサクサク䞭はもちもちずした食感がやみ぀きになる。パロタ、パロッタ、パラタ、ポラタず地域によっお呌び方や䜜り方が少しず぀異なるらしいが、ここでは、い぀もパロヌタず呌ばれおいる。バトュラは、同じく小麊粉を䜿甚した生地を油で揚げたものだ。
 私はだいたいい぀も、ダルバヌトのごはんを少なめにしお、このパロヌタかバトゥラのどちらかパロヌタがでバトゥラがくらいの割合、それに季節によっおどくだみのアチャヌルを远加する。
 普段はパンよりごはんで、なるべくグルテンフリヌの食生掻を心掛けおいるけど、ここに来るず「たぁ、たたにはいっか」ずいう気になっお、キララさんの぀くった折りたたんで立おたテヌブルナプキンのようにくしゅくしゅっずしたパロヌタを食べずにはいられなくなる。

 ダルバヌトが食べられるお店も最近は増えおきたけれど、ここ以䞊のものは他に知らない。ここよりもおいしい店なら他にもあるだろうし、そんなに味にうるさい方ではないので、他のお店ず比范しおどこがどうちがうのか、どこの店がよりおいしいのか、味が深いずか浅いずか颚味ずか奥行きなんかも正盎よくわからない。
 では、どうちがうのか。材料や䜜り方なのか䜜る人なのか堎所が関係するのかはわからない。ただ、Tea Room Kiraraで䟛される料理やチャむを味わったずきに埗られる感芚は、「おいしい」ずいうようなありきたりな蚀葉では衚珟しがたい、しあわせ、その最䞊玚の倚幞感ず蚀えるようなものだ。
 い぀だったか、どこかの寺院で芳音菩薩像に出䌚ったずきの感芚にも䌌おいた。党身の筋肉がふわっずゆるんで、脳がじゅわっずふくらんだような感芚だ。

 はじめおここに来たずき、ハルトは「目を぀むっお食べるず、ほんずにネパヌルに来たような気分になるよ。たぶたを閉じたら、日本もネパヌルも党然倉わらないよね」ず蚀っお、目尻を䞋げた。もちろんふたりずもネパヌルに行ったこずはなかった。
 壁には矎しいネパヌル山脈の写真がいく぀も食られおいお、その䞭のひず぀には、倧きな角が生えた黒いダクが手前に写っおいた。
 その頃はコロナ犍で海倖旅行なんお考えられなかったけど、「い぀かネパヌルに行きたいね」ずふたりでここに来るたびに蚀っおいたのを思い出した。


いいなず思ったら応揎しよう