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#28 中国の洗礼と中山公園の記憶

中国の幼稚園に通い始めて、しばらく経った頃。
幼稚園からイベントや持ち物についての連絡がちょこちょこ来るようになった。

ただ、この連絡が結構突然だった。「〇〇を持ってきてください」と、前日や数日前に言われることも珍しくない。中でも私が一番驚いたのは、「保護者が絵本を作って月曜日に持ってきてください」という連絡が金曜日に来たことだ。

参考写真の絵本は、プロが作ったのかと思うほど緻密で完成度が高い。
……これを週末で作れと?
金曜日の夜、私は途方に暮れた。中国での生活にも少しずつ慣れてきたとはいえ、こういうところはまだまだ日本とは違う。

そんな「中国の洗礼」は、幼稚園の外でも待ち構えていた。

ある日、家族で「中山公園」へ遊びに行ったときのことだ。ここは遊園地や動物園もある大きな公園で、パンダやホワイトタイガーもいて見応えがある。だが、あちこち見て回っていると、驚くような光景を目にした。

動物たちに勝手に餌をあげている人がたくさんいるのだ。馬やラクダだけじゃなく、猛獣にまでカバンから出した野菜を投げ込もうとしている。「餌やり禁止」の掲示板は、彼らの目には映っていないようだった。

さらに衝撃的だったのは、ある檻の前を通ったときのことだ。
「えっ……?」
目の前で、動物同士がまさかの共食いをしていた。ハリネズミかヤマアラシのような、割と大きなサイズの動物だったので、その生々しさはかなりの衝撃だった。

日本の動物園とは、いろいろな意味でルールもスケールも違う。
そんなカオスな部分も含めて「これが中国か」と圧倒されていたのだが、同じ中山公園で、私の心を動かす別の出来事が起きた。

後日行われた、幼稚園の親子遠足でのことだ。
行き先は、あの広い中山公園。現地集合だったが、先生たちも家族連れで集まってくる大らかな雰囲気の中、遠足が始まった。

頑張って作ったキャラ弁

芝生で遊んだり、お弁当を食べたり。子どもたちが楽しそうに過ごす中、同じマンションのママさんが私の方へ駆け寄ってきた。
「こないだ、娘ちゃんが初めて話しかけてくれたの!」
青島に来てから4か月ほど。娘から初めて話しかけられたことが嬉しかったらしい。それを聞いて、私の胸も熱くなった。

娘は、とにかく人見知りだった。日本の幼稚園では、1年間担任をしてくれた先生ですら「娘ちゃんの声をほとんど聞いたことがない」と言っていたくらいだ。

そんな娘が、中国に来て、少しずつ自分を出している。

考えてみれば、娘の周りにはいつも同じメンバーがいた。
幼稚園も、バスも、住んでいるマンションも、習い事も同じ。なんなら休みの日も顔を合わせる。ものすごく狭いコミュニティだ。

でも、その「狭さ」が娘には合っていたのかもしれない。
毎日同じ顔を見て、話しかけられ、少しずつ慣れていく。そして、いつの間にか「話してみようかな」と思えるようになる。

日本ではなかなか見られなかった娘の姿を見ることができて、「青島に来てよかったな」と、このとき初めて強く思った。

突然の絵本作りや、動物園での衝撃的な光景。振り回されることも多い中国生活だが、この「近すぎる距離感」こそが、今の私たちには必要なものだったのかもしれない。

そんな違いを楽しみながら、我が家は少しずつ、この街の住人になっていった。

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