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野生動物の痕跡からクレパス画を描く旅|辰己ヶ沢 ②下絵編

かなり以前、フリーランスという立場で野生動物調査を請け負っていた私は、サルのテレメトリー調査も頻繁に請けていた。

テレメトリー調査とは、対象の動物に発信機を着け、その発信機から発せられる電波を八木アンテナで拾ってその動物の位置を特定、追跡する調査である。

このテレメトリー調査は多くの動物に用いられるが、中でもサルの調査が私は面白かった。
クマなどのテレメトリー調査は八木アンテナにより、クマがいる位置をある程度まで絞り込むが、その個体を目視で確認する機会は、そう多くない。
したがって、その位置特定がどの程度正確なのかが分からないことが多い。
対してサルは、絞り込んでその場所に向かえば、目視で確認することができる。
反対に目視ができなければ、その位置特定は間違いだということになる。

サルのテレメトリー調査で派生する調査に、カウント調査と呼ばれる調査も私は好きだった。
サルが林道などを渡る際、群れが広がらずに狭い範囲を渡る機会を捉えれば、その群れの頭数、年齢構成、雌雄構成などがカウントできる。
そのためには、発信機を基に進路を予想し、先回りをする必要がある。
渡っている途中から数えては意味がない。
渡る前、その場所はとても静かだが、やがて予測通りその場所から1頭目がひょっこりと顔を出すと、予想が当たった喜びと、これからカウントをする緊張感で少し独特な雰囲気になる。
最初は先頭を進む何頭かのサルが数頭渡っていくが、徐々にその数が増え、中盤になると一度に大量のサルが渡るので、かなり忙しい。
子ザルは母親のお腹に抱きついていたり、腰の辺りに乗っていたりするのでややこしい。
やがて、徐々に渡る個体が少なくなり、また静寂に包まれる。
この静と動の正規分布のような時間と空間が私は好きだった。

サルが消えた林縁部を眺めながら思う。
通り過ぎたのは、その群れの歴史の片鱗だ。
アカンボウや子ども達は、やがて大人になる。
三歳の雄の子ども達は、翌年には群れを離れているかもしれない。
母ザルも、悠々と歩く雄ザルも、いずれは老いて土に還るだろう。
その変化の中にある、今の群れの形。
それは、時間そのものが形を持って流れていくということ。
静寂に戻った林道に立ちながら、たまに聞こえる枝を揺する音が遠ざかっていくのを、私は毎回、寂しさを持って聞いた。


***

今週は、クレパス画にするための下絵を描いた。
先日見たサルの雰囲気は、今のところ保たれているように思う。
色を塗って崩れないようにしたい。

紙本・鉛筆 379mm×540mm

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