AIで生成した絵が漫画に見えない。原因は演出ではなく、生成サイズだった
AIで生成した絵を並べても漫画に見えない、という壁にぶつかりました。演出が下手なんだと思って構図の勉強を始めたのですが、原因はもっと手前にありました。生成している画像サイズです。
1. なぜ「漫画に見えない」のか
AIが出す絵は、登場人物が常に画面の中央に大きく写ります。
理由は学習のされ方にあります。Illustrious系をはじめとするモデルは「1枚で完結するイラスト」で学習されていて、イラストは被写体が中央に大きく配置されるものです。
一方で漫画のコマは場面の断片です。人物が端に寄る、小さく写る、背景だけ、手や目だけ、余白そのものが演出になる。まったく別のものです。832×1216ばかりで生成していれば、当然すべて「真ん中に大きく」になります。
2. 順番を逆にして丸一日溶かした
最初にやったのは、1枚絵を生成してからコマの形に切り出す方法でした。
これは失敗でした。縦長で生成した画像を横帯のコマに流し込むと、頭が切れて胸から下だけになります。トリミングで直そうとすると今度は構図が壊れる。拡大すれば画質が落ちる。逃げ場がありませんでした。
3. 正しい順番は「コマ割りが先」
コマ割りを決める → 各コマの縦横比で生成する → 枠を付けて組む。
この順番にした瞬間に解決しました。コマの比率で生成すると、モデルが勝手に引きと寄りを選び分けてくれるからです。横長で生成すれば引きの絵になり、縦長なら寄りになる。切り貼りではないので画質も落ちません。
必要だったのは構図の勉強ではなく、生成前にコマの形を決めておくことでした。
4. 1ページは4〜7コマ
平均5〜6コマです。8コマ以上になると画面が窒息します。
コマ数は情報量ではなく時間感覚を決める道具でした。6〜7コマに増やすと体感時間が引き延ばされて緊張が高まり、3〜4コマに減らすとカタルシスが出ます。
ただし2〜3コマのページを連続させてはいけません。決定的な場面のために温存しておくものです。
5. 自作の検査スクリプトに掛けたら、テンプレート10種のうち7件が引っかかった
ネームの失敗は4種類に整理できて、しかもどれも機械的に検出できます。
コマ過密(8コマ以上)→ 4〜7コマへ強制削減。優先度の低い中間リアクションを削る
グリッドの罠(全コマ同じ大きさ)→ 最も心が動く1コマをページの1/3〜1/2まで拡大し、他を縮める
視線の迷子(上下段の縦枠線が揃って十字路になる)→ 隣り合う段の縦枠線を20mm以上ずらす
文字の壁 → 1フキダシ48字(12字×4行)以内にリライトする
原理を読んだだけでは、自分の設計の矛盾には気づけませんでした。10種類作って検査に掛けて、初めて7件見つかりました。
もうひとつ、ネームの段階で見落とすと写植の工程で詰むものがあります。顔アップの小コマにセリフは置けません。フキダシは顔にかぶせられないので、行き場がなくなります。小コマ × 顔アップ × フキダシ2個以上は不可で、隣のコマへ移すしかありません。
移し先にはコツがあって、独白はその人物の視点のコマへ移します。相手の顔アップに自分の内心を乗せる必然性はありません。やってみると、移動先のほうが絵と噛み合って良くなることのほうが多かったです。
6. コマの割られ方そのものが感情を決める
均等で整った四角は平穏を、縦長に細かく刻んだ連続コマは緊張を、余白を大きく取って人物を小さくすると孤独を生みます。
全ページを同じ型で作ると、内容がどれだけ良くても「単調な本」という読後感になります。ページ設計の段階でそのページの感情を先に決めて、それに対応する型を選ぶ。ここを機械的にやるようにしてから、明らかに読みやすくなりました。
7. 主導権を持つキャラクターは画面の右に置く
歌舞伎や映画に由来する、読者が無意識に持っている左右のバイアスがあります。画面右(上手/カミテ)は強者・上位・主導権・能動、画面左は弱者・下位・受動として読まれます。
主導権を持たせたいキャラクターを左に置くと、セリフや行動でいくら主導させても、視覚的にはそう伝わりません。
ここで詰まったのは、プロンプトでの左右制御が不安定なことでした。facing left などは効いたり効かなかったりします。解決策は単純で、生成後に左右反転するのが確実でした。セリフは後入れなので、文字が鏡像になる事故も起きません。
8. まとめ
AIの絵が漫画に見えないのは、演出ではなく生成サイズが原因
コマ割り → コマの比率で生成 → 枠を付ける、の順番にする
1ページ4〜7コマ、平均5〜6コマ。8コマ以上は窒息する
ネームの失敗4種は機械的に検出できる(自分のテンプレートは10種中7件が不合格だった)
顔アップの小コマにセリフは置けない。ネームの段階で判定する
主導権を持つキャラクターは画面の右。プロンプトではなく生成後の左右反転で調整する
コマの規格(段間8mm・コマ間4mm・枠線0.8mm)、読切のページ配分、感情とコマ割りの対応表、コマの縦横比と生成サイズの対応表は、サイトのほうに全部まとめています。
▶ AI生成が漫画に見えない理由:ネームとコマ割りの設計
https://perfectlocal.coolblog.jp/gpu/name-koma.html
▶ この前後の工程(環境構築からセリフ・効果線・出品まで9工程)
https://perfectlocal.coolblog.jp/gpu/make-doujin.html
なお、これだけのコマ数を生成するにはそれなりのGPU時間が要ります。手元にGPUが無い状態でいくらかかったかは、前回の記事に実測で書きました。月20時間で約2,900円、キャラLoRAの学習は1本40円でした。
https://note.com/majin_tools/n/nae012b60bf97
※ リンク先のサイトには、RunPodの紹介リンク(アフィリエイト)を掲載しているページがあります。この記事自体にはアフィリエイトリンクはありません。
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