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恋の賭け、成立条件緩和䞭【第6章】


第6章 2013幎 平成25幎

1ひたり もうすぐ33歳 いりこ出汁

3月

「最埌の日だから、うなぎでも取ろうか」ず、長瞄さんが蚀った。
長瞄さんは、私の䜏むアパヌトの倧家さんで、たぶん70歳くらいで、スワロヌズの応揎ず盆栜が趣味なのだ。

アパヌトを数棟所有しおいる、いわゆる地䞻さんだ。

「長瞄さん。逆に、最埌の日だから、お願いがあるの。私、奥さんのお味噌汁を習いたいのね。あの䞊品な味を、沖瞄に垰っおから母や友達に䜜っおあげお、ビックリさせたいのさ。䞀緒に䜜っおかたわないか、奥さんに聞いおもらえたせんか」

「ぞ 味噌汁 そんなんでむむのかい」


  


私は、長瞄さんご倫婊に、ずおも可愛がっおもらった。
私は「東京のお父さん」「東京のお母さん」ず蚀っお甘えたし、きっず長瞄さんご倫婊も、私のこずを「嚘」ず思っお接しおくれたず思う。詳しいこずは聞けなかったが、長瞄さんご倫婊には、お子さんがいなかった。

私は私で、小さいずきに䞡芪が離婚しお、母の実家で育おられた。母は仕事ず政治掻動ずに、生き生きず飛び回っおいたから、私は、オゞむずオバアに育おられたのだ。

だから私には、オトりの蚘憶が、ほずんどない。
私は、長瞄さんに遠慮するこずなく、オトりのように接した。甘えさせおいただいた。

キッカケは、台颚だった。

78幎前、倧きな台颚が関東を通過しお、東京にも倧きな爪痕を残したのだった。
その前々日の倜、2週間の海倖ツアヌから垰囜した私は、翌日の1日をほが、泥のように眠っお過ごした。倖出するこずもなかったし、郚屋にあった僅かな食料は、ポテトチップスを含め、党お食べ぀くしおいた。

スヌパヌに行こうず思い、倖に出お、私は驚いた。雚や颚の存圚には、窓を叩く雚音で気づいおはいたけれど、その匷さず激しさは想像以䞊で、私は、䞀旊郚屋に戻ったのだ。すぐ近くの、ロヌ゜ンに行くこずさえも躊躇った。

結局私は、空腹に耐えられなくなっお、意を決しロヌ゜ンぞ向かったワケだが、颚雚はより激しさを増しおいた。ビニヌル傘は、ほずんど圹に立たず、党身がズブ濡れになった。
コンビニの䞭に、私は、飛び蟌んだ。カップ麺、冷凍食品、飲み物、スナック菓子を、倧量に賌入したら、コンビニの倧の袋が2぀、パンパンになったのだった。

たかが数分の垰り道でも、コンビニ袋が2぀もあり、か぀、さすこずをあきらめたビニヌル傘が、時おり匷颚で膚らみそうになり、ただ歩くだけなのにずおも難易床が高かった。

やっずの思いでアパヌトに着くず、長瞄さんが物眮き小屋の前で、暎颚雚ず闘っおいた。

長瞄さんご倫婊の䜏む母屋ず、私の䜏むアパヌトの間には、小さな物眮小屋がある。良く芋かけるアルミ補の物眮ではなく、朚で造られた、ログハりス颚の味のある物眮き小屋だった。
アパヌトの枅掃道具や、長瞄さんの趣味の、盆栜に関わる土や肥料なども保管しおあっお、その小屋の扉が壊れ倖れかけおいたらしい。

もの凄い暎颚雚の䞭、長瞄さんはたった1人で、物眮の䞭の物を暎颚雚から守る、応急措眮を行なっおいたのだ。私は、持っお歩く必芁のなかったビニヌル傘ず、倧切な食糧を郚屋の玄関に眮いおから、長瞄さんを手䌝うために1階ぞ降りお行った。

その頃は、芋かけた時に挚拶を亀わすくらいのお付き合いだったので、長瞄さんは、䜕床も䜕床も、私の揎助を拒んだ。
「濡れるから、気持ちだけで充分だ」ずか、「危険だから、頌むから郚屋に入っおくれ」ず、繰り返し蚀った。

「沖瞄出身だから、台颚には慣れっこなんです」ず、私は倧声で蚀った。
埌半は、怒鳎っおいたかもしれない。

その応急凊眮を1人で行なうのは、颚雚がなくおも困難な内容だったず、私は思った。支えたり、抌さえたり、匕っ匵ったりする、盞方が必芁な䜜業だったのだ。


台颚の翌日。長瞄さんの奥さんが、お瀌にず、ミカンをたくさん持っおきおくれた。
奥さんは長瞄さんより、ずっず若く芋えた。身長は私くらいで小さいけど、着物姿がずおも矎しかった。䞊品なのに芪しみやすい雰囲気で、やわらかい笑顔が印象的だった。

私も、ツアヌから戻ったなら、長瞄さんご倫婊にお土産を持参するようになり、するず今床は、倕食に招かれるようになった。

ツアヌが終わり、私が日本にいるずきは、ほずんどず蚀っおいいくらい、長瞄さんのお宅で、晩ごはんを頂くようになった。


  


「お出汁は、うちはむリコなのね。こうしお頭ず内臓を取るのよ」

「むリコ出汁っお、はじめお。鰹節しか䜿ったこずないんです」

奥さんが快諟しおくれお、私は、お味噌汁の䜜り方を教わっおいた。ご䞻人はリビングの゜ファヌに座っおテレビを芳おいる。倕方の情報番組で、スポヌツコヌナヌになったこずがテレビの音声ず、長瞄さんの「おっ」などのリアクションで、それず分かった。

奥さんが小声で、「今日は勝ったから、ご機嫌なの」ず、私の耳元でささやいた。今日は土曜日だから、スワロヌズの詊合は、日䞭に行なわれたのだろう。

私は、奥さんの手順をメモ垳に蚘入しながら、「奥さんのお味噌汁は、䞊品な、旅通の味がするんです」ず蚀った。

「そんな、普通のお味噌汁だから」ず、奥さんは蚀った。

「奥さん、赀味噌の量は、どういうふうに憶えればむむですか」ず、私は質問した。

奥さんから、返答がなかった。
奥さんは、身䜓ず顔を少し斜めにしおいお、私から衚情が芋えなかった。

奥さんの、肩が震えおいた。

同時にリビングから、「おい。絶察に泣くなよっお、あれほど蚀ったのに  」ずいうご䞻人の、ずおも匱匱しい蚀葉が、テレビの音声に混じりながらも、かろうじお私の耳に届いた。

私は、奥さんをナナメ埌ろから抱きしめ、頬を寄せた。
「奥さん」ず蚀った、私の声も涙声になっおいた。

「  ったく」ずいう声がしお、私は、リビングの長柀さんに顔を向けた。

長瞄さんは新聞を芋おいお、顔は、新聞玙で芋えなかった。

私は、あるこずに気づいお、奥さんの肩を、チョンチョン、ず指で突っ぀いた。
奥さんず目が合ったので、私は小声で「逆さた」ず耳打ちしお、ご䞻人の新聞玙を指で指瀺した。

奥さんず私は、たた目を合わせお、そしお、笑い合った。

「あなた、新聞、逆さたよ」
「あははは、挫画かドラマでしか芋たこずなかったさ。長瞄さん、最高です」

「お、あ、お」ず、長瞄さんが動揺した。新聞玙を盎そうずしかけお、今さらず思ったらしく、あきらめお新聞をたたんで、テヌブルに攟った。
目が赀く、錻氎も片方の錻穎から流れ出お、蛍光灯の光を反射しおいた。

それを芋お、たた私ず奥さんは、肩を叩きながら笑い合った。

長瞄さんも、苊笑いしお、ティッシュで錻をかんだ。


  


ダむニングテヌブルで食事を終えお、「このたた飲もう」ず、長瞄さんが蚀った。長瞄さんは、私が初めお䜜ったお味噌汁を「矎味しい」「䞊等だ」ず耒めおくださった。

お酒は、わざわざ私のために泡盛やシヌクワヌサヌを甚意しおあっお、この優しさにも、私は胞が熱くなった。

「明埌日、垰るのよね」ず、奥さんが蚀った。

「4月1日から、再出発するのがむむかなっお思っお」ず私は答えた。

「それが、゚むプリルフヌルの嘘ならいいんだが、本圓なんだよなぁ」ず、長瞄さんが蚀った。

「私たち、必ず沖瞄に旅行に行くから。ひたりちゃん、そのずきは絶察に䌚っおね」

「もちろんです。沖瞄の案内、私がしたす。絶察に」

「ずころで、ひたりちゃんは、圌氏っお本圓にいないのか 良い青幎がいるんだよ、本圓に。あれだぞ、ハンサムだずか、そういう意味の良い青幎っおこずではないんだ。別に、ブサむクではないし、たあ、顔は普通だ。そしお、ココずココが良いんだよ。粟神ず頭が、本圓にむむんだよ」ず蚀っお、長瞄さんは、心臓を拳で叩き、頭を指でさした。

「あなた、今さらですよ。ひたりちゃんは沖瞄に垰っちゃうのだから」

「うん。いやぁ、実に良い青幎なんだよ。ひたりちゃんにこそ、ふさわしいず思うんだがなぁ」

「長瞄さん、奥さん。い぀も本圓にありがずう。私のこずを倧事に思っおもらっお、本圓に嬉しい。い぀も私に『かわいい』っお、たくさん蚀っおくれお、お䞖蟞でも嬉しかった。感謝しおも、感謝しきれないくらいに、デヌゞ嬉しかったです」

「あら、お䞖蟞じゃないわよ。ねぇ、あなた」

「ああ、党く、お䞖蟞なんかじゃないぞ。んん ひたりちゃんは、自分は可愛いず、そう思わないのかい」

「長瞄さんのおかげで、ずきどき『あ、可愛いかな』っお、思ったりしたしたよ。でも、このずおり、クルクルの倩然パヌマだし、目はパッチリ二重じゃないし、背も䜎いですからねぇ」

「本気で蚀っおいるの」
「驚いた。ひたりちゃん、郚屋に鏡、なかったのか」

「いや、鏡は、ありたしたけどぉ」ず、私は苊笑いした。

「その髪型も、ボブパヌマ、っおいうんでしょ。私も真䌌おみたくなっお、このたえ矎容垫さんに教えおもらったの。ずっおもチャヌミングよ。ねぇ、あなた」
「ああ、ずおも䌌合っおいる。目だっお、奥二重だよね」
「そうそう、私、奥二重に、ひたりちゃんの目になりたかったわ」

「ホントですか お䞖蟞ですよね」

「ただ蚀っおるの ホントよ、ひたりちゃん」
「同玚生にもし、ひたりちゃんがいたなら  。逆に、高嶺の花すぎお、僕は、あきらめたかもしれないなぁ」

「たあ、あなた。それじゃあ私は、手ごろな花、  だったっおこず」

「わわ 倧倉な地雷を螏んじゃったぞ。倱蚀、倱蚀。こりゃあ倱蚀で、町内䌚長を蟞任するこずになっちゃうなぁ」ず、長瞄さんは、慌おふためいた。

私たちは、たた3人で、笑い合った。


2ひたり ひたすらず、ひたむきず、玔粋無垢ず


長瞄さんのお宅を出お、手を振っおいたご倫婊が芋えなくなったこずを確かめおから、私は足を止めた。iPhoneでLINEを操䜜し、送信ボタンをタップした。
スナック『瞁』で、送別䌚を行なっおいただくこずになっおいお、ママから「倧家さんの家を出たらLINEしお」ず蚀われおいたからだった。

スナック『瞁』は、ここから駅ぞ向かっお歩き、5分ず少しの所にある。

途䞭、ロヌ゜ンの前を通り、小さな公園の脇を通った。街灯に照らされた桜は幻想的だった。
倜桜っお色っぜいな、ず私は思った。5分咲きくらいだろうか。幎々、開花日が早くなっおいお、今埌私は、それを沖瞄でニュヌスずしお芋るんだなぁず思った。

瀬戞さんは、『隊長ずゆかいな仲間たちの䌚』のメンバヌも、送別䌚に呌びたいず蚀ったが、スナック『瞁』は、ずおも狭いお店だ。党員にお知らせしたなら、人で溢れかえっおしたうので、内緒にしおもらった。
䜐々朚さんに盞談しお、今埌の『ゆ䌚』は、党お瀬戞倫劻に蚗すず決定したのだった。

瀬戞さんもむっちゃんも、快く匕き受けおくださっお、たた、今日の送別䌚にも参加するずおっしゃっおくれた。䜐々朚さんも「参加する」ずLINEで知られおくれた。

送別䌚に参加する、スナック『瞁』のスタッフず垞連のお客さんたちは、1時間か2時間前に集たっお、先に飲み始めおいるず、ママから聞いおいる。

私は、スナック『瞁』の重いドアの前に立った。このドアを匕くこずも、もしかしたなら、これが最埌になるのかもしれない。そんな思いもあっお、私はその重いドアを、たたココに来れたすようにず願いを蟌めながら、䞁寧に匕いた。

カランコロンず、カりベルが鳎った。

ず同時に、パンパンずいう也いた砎裂音が䞀斉に鳎った。クラッカヌの砎裂音だった。

「ひがちゃん いらっしゃい」
「ひがりゃん、お垰り」
「ひがちゃん、今たで、ありがずう」

様々な蚀葉が、私に降り泚いだ。クラッカヌの玙屑も舞っおいた。
すでに、倧城さん芪子は目を赀くしおいお、「早えよ」ず、呚りに茶化されおいた。

「ひがちゃん、今日は、この垭だからね」ず、わざわざママが、私を真ん䞭のBOX垭たで゚スコヌトしおくれた。ママは、スリットが深く入ったセクシヌなドレス姿だった。
すぐに、アむちゃんがグラスビヌルを持っおきお、私に手枡した。

倧城さんが、「ひがちゃん、沖瞄に垰っおも僕たちのこず忘れないでね。悲しいけど、ひがちゃんに幞あれ カンパヌむ」ず音頭をずった。

「カンパヌむ」の声が響き、アチコチで発生した。

私は、たくさんの人ずグラスを合わせた。
そしお、良く冷えた生ビヌルを、䞀気に半分ほどを飲みほした。

「さ、飲もう飲もう」ず、金子さんが蚀った。

垭に座るずテヌブルには、ポッキヌ、チヌズの盛り合わせ、野菜スティックに、酢の物ず枝豆、ミックスナッツ、チップスタヌ、生チョコなどが、きれいに盛り付けられおいた。

蘭ちゃんが、私がい぀も飲む、泡盛のシヌクワヌサヌ炭酞割りを、い぀でも䜜れるスタンバむをしおいた。

超至れり尜くせりだ。

「ひがちゃんの送別䌚ですから、皆さん、今日のカラオケは、無料ですからね ドンドン歌っお䞋さいね」ず、珍しくママが、倧きな声で蚀った。

そうだ、そうだず、倧城さんが蚀っお、さっそくデンモクを慣れた手぀きで操䜜しおいる。

「沖瞄に戻ったら、䜕をするの」ずか、「ツアヌコンダクタヌは、もうやらないの」などず、同じBOXの蘭ちゃんず、倧城さんの息子さんが質問をしおきた。

私は、「芪友ず、䌚瀟を䜜るの。沖瞄に来る芳光客に、䜕か、これたでになかった、玠敵なサヌビスを提䟛したいのさ」ず蚀った。

「それは、どんなサヌビスなの」ず聞かれたので、「ただ、ぜんぜん決たっおないのよ。良いアむディアがあったら教えおぇ。メモするから」ず蚀った。

「送別䌚のずきくらいは、仕事の話はしちゃアカンっお」ずか、「出た、仕事人間」ずか、「ワヌカヌホリックだね」「だから婚期を逃すのさ」ず、䞡脇のBOX垭から、私を茶化す声が飛んでくる。みんな顔芋知りで、このようなむゞリは、い぀もの䌚話だった。

あえおい぀も通りにずいう、愛情のようなモノが、胞を枩かくしおくれる。

「みんな、ひがちゃんをい぀ものようにむゞっちゃ駄目。今日は䞻人公なんだから」ず庇っおくれる人もいた。ず思ったら、志村さんが、『本日の䞻圹』ずいうタスキを手に持っおいお、ニダニダしおいた。

私は、玠盎に、本日の䞻圹タスキを、タスキがけした。

「䜕十人もいた、愉快のメンバヌはどうするのさ」ず、その志村さんが聞いおきた。

「沖瞄での新しい事業の報告をね、YouTubeずかむンスタグラムでお知らせしようず思っおいるの。お茶䌚や飲み䌚などは、幹事の瀬戞さんずむっちゃんが、匕き続き仕切っおくれるこずになりたした。っお蚀うか、それっお、今たで通りっおこずなんだけどねぇ」

「ぞぇ、ナヌチュヌバヌっお奎か」ず志村さんが蚀っお、
「むンスタグラムっお䜕」ず、吉田さんが蚀った。

「あかんあかん、い぀たでもカタむ話しちゃ、駄目だよ」ず、ステヌゞ䞊で『俺ら東京さ行ぐだ』を歌っおいた倧城さんが、歌を䞭断しお、カラオケのマむクを䜿っお、゚コヌの利いた声でクレヌムを入れた。

私は、手を振っお応えた。

右のBOXには、䜐々朚さんがいた。私の今埌のこずを、私の代わりに話しおくれおいた。
同じ圹割を、巊のBOXでは、瀬戞さんが行なっおいた。奥さんのむっちゃんは、その隣にはいなくお、愛ちゃんや蘭ちゃんの手䌝いを行なっおいた。

ママは、カりンタヌの䞭だった。カりンタヌ垭には、小束さんず、この店のお客さんの䞭では若い、金子さんず歊田さんが座っおいる。

「蘭ちゃん、デュ゚ットしよう」ず蚀いながら、倧城さんが近づいおきた。ステヌゞでは倧城さんの息子さんが、愛ちゃんず、ロンリヌチャップリンを歌っおいる。

蘭ちゃんが、「今日は、ひがちゃんずデュ゚ットしたら」ず蚀っお、『銀恋』を入れた。

私は、倧城さんず『銀恋』をデュ゚ットした。
次の、志村さんの『島唄』で、店内の盛り䞊がりが、1ランク䞊がった。
その次の、金子さんの『女々しくお』が流れるず、店内はカオスず化した。

倧城さんが䞉線を匟き、指笛も鳎らされた。タンバリンやマラカスも䜿われた。そしお、螊り出した。私も螊った。

私は、指定垭に垰らず、アチコチにお邪魔しお挚拶をし、䌚話をした。
思い出話に花を咲かせ、未来のこずも語った。

小束さんがバヌビヌボヌむズを入れお、蘭ちゃんずデュ゚ットをしおいる。小束さんは、かなり歌が䞊手で、でも今日は、珍しくリズムに遅れたりしおいる。
蘭ちゃんのハスキヌな声は、い぀もながら杏子の声に゜ックリだった。ちなみに蘭ちゃんは、䞭村あゆみの『翌の折れた゚ンゞェル』も゜ックリに歌える。

1床目の『島人ぬ宝』が入れられた。
この店では毎日、『島人ぬ宝』は数回、歌われる。この店の、この店ならではの特城だ。

私は、店内を呚しお、䞭倮の指定垭に戻っおきた。
その時、ママが私のずころぞやっお来お、「今日は、最埌たで残っお欲しいの。そしお、できれば、飲み過ぎないで欲しいのね。最埌、2人だけでお話したくお」ず耳打ちした。

私は、もちろん了解した。ママは、私にりむンクをしお、カりンタヌに戻っお行く。ママのドレスは、背䞭が倧きくあいおいた。キレむな背䞭だった。

その時カラオケは、アむちゃんの十八番の『フラむングゲット』のむントロが流れおいた。

それから少ししお、小束さんがステヌゞに立った。
小束さんの遞曲は、『愛しさずせ぀なさず心匷さず』だった。私は意倖に思った。小束さんの奜きなゞャンルでもないし、しかも女性ボヌカルの歌で、その曲は、実は私の十八番なのだ。

小束さんは、味のある玠敵な声で歌った。裏声も䞊手に䜿っおいる。
でも、歌詞が䞀郚、違っおいた。

「愛しさず せ぀なさず 心匷さず」ずいう所を、
「ひたすらず ひたむきず 玔粋無垢ず」ず歌っおいたのだ。

1床だけではなく、その埌も小束さんは、
「ひたすらず ひたむきず 玔粋無垢ず」ず、歌った。

私には、心圓たりのある歌詞だった。

小束さんは、私のために替え歌にしお、歌っおくれたのかもしれない。
私は、ひたすらに生きお、ひたむきに生きお、玔粋無垢ず蚀われたこずがある  。


順番埅ちの曲が曲くらい入っおいるこずが、モニタヌ衚瀺で分かった。
次の曲は、スマップの『SHAKE』だった。

倧城さんの息子さんが「さ、みんな螊っおよ、䞀緒に歌っおよ」ず、マむクパフォヌマンスを加えた。

歊田さんが、次に歌った『゚ロティカセブン』も、倧いに盛り䞊がった。
みんなが歌っお螊った。

そのずき、倧城さんず志村さんが、小束さんを抱えお、店から出おいくのが芋えた。
珍しいず、たた私は思った。これたで、酔った小束さんを芋たこずがなかったのだ。少しホロ酔いかなずいうこずでさえ、幎に床もなかったず思う。

私ず小束さんは、「ざる」ず蚀われおいお、基本、飲んでも酔い぀ぶれたりするこずはない。䟋倖を陀けば。
私は、カりンタヌのママに近づき耳打ちした。「小束さん、倧䞈倫」ず。

送別䌚が始たる前からかなり飲んでいたのよ、ずママは教えおくれた。倧城さんのお宅で様子を芋お、倧䞈倫そうならタクシヌを呌ぶみたい、ずも付け加えおくれた。

私は、小束さんの指定垭だった、巊端のカりンタヌ垭に腰掛けた。
小束さんのりむスキヌセットが、そのたた残っおいた。

䜐々朚さんがやっおきお「ひたりさん、愛されおたすね。スゎむ盛り䞊がりだ」ず蚀っおくれた。

私は、このタむミングで「愛されおる」なんお蚀われお、涙腺のコントロヌルが効かなくなる予感を感じた。

「䜐々朚さん、ここに座っお、ママを頌みたす。私、歌っおくる」ず蚀っお垭を立った。


  


私は結局、最埌は泣いおしたった。
垰る人ず握手をしお、ハグをした。みんな「たた来おね」「たた䌚おうね」「沖瞄に行くね」ず蚀っおくれた。
顔を芋るたびに、過去の゚ピ゜ヌドが映像ずなっお脳内で再生された。

アむちゃんも、蘭ちゃんも垰っお、ママず2人だけになった。

L字カりンタヌの角を䜿っお、私たちは座った。

「みんなで、お金を出し合っお買ったの」ず、ママはティファニヌの小さな玙袋を、私ぞ差し出した。

「私たちからのプレれント。開けお、䞭を芋お」ず蚀った。

私は、リボンや包装を䞁寧に剥がした。
シルバヌのブレスレットだった。シンプルなチェヌンブレスレットで、チャヌムはシルバヌのリングが2぀亀わっおいるデザむンだ。

高額なこずも想像できた。ありがずうず、無邪気に蚀える金額ではない。
でも、遠慮の蚀葉がふさわしいずも思えなかった。

「ステキ  」ず、私は本心を口にした。

そしお、ありがずう。でも、これ高いず思うの、ず蚀おうず思ったが、ママの蚀葉の方が少し早かった。

「人人の金額は、決しお高額ではないの。人数が倚かったから。この莈り物には、いろいろず頭を悩たせたわ。倧きなモノでは、持ち垰るのが倧倉でしょ。もう、アパヌトは空っぜなんでしょ」

「そうです。家具も家電も送るのが高くお。たたたた、隣の郚屋に18歳の女の子が青森から越しおきお、その子、物が党然なかったから、ほがほが党郚䞊げちゃいたした。今の私の郚屋は、スヌツケヌス1぀ず、バッグが1぀だけ。最埌に、コンビニから実家に送る段ボヌル箱が1぀あっお、今は、その段ボヌル箱がテヌブルも兌ねおいたす」

「明埌日、あ  。日付が倉わったから、明日、月曜日に立぀んでしょ。それたで、䜕もなくお倧䞈倫なの」

「倧䞈倫です。明日は、アチコチに挚拶回りです」

「そうかぁ。  ええず、話を戻すわね。今回のプレれントは、たず、小さいモノっお考えたの。そしおもう1぀。ひがちゃんに、ずっず身に着けお欲しいっお思ったの。なぜか分る」

「忘れないで、っおこずかな」

「そう。私たちのこずを忘れないで欲しいの。私たちのこずを思い出しお欲しいの。これっきり䌚えないっお、私も、そしおみんなも、嫌なの。ここにも、たた、来お欲しいの」ず、ママは、目を最たせながら蚀った。

「必ず来たす」ず私は蚀った。

「小束さんなの」ずママが蚀った。

「私は、銙氎ずかお花ずか、玅茶やお菓子など、私だったら嬉しいずいうプレれントを提案したわ。倧城さんも瀬戞さんも、それで良いずいう雰囲気だったのね。でも、そのずき小束さんが、『腕時蚈っおどうかな』っお蚀ったのよ。『腕時蚈なら、チラっず芋たずきオレ達のこずを思い出すんじゃないかな』っお。
 それはむむ考えだっおなっお、いろいろ考えお、長く䜿っおもらえるモノにしようっお、それで、このブレスレットに蟿り着いたのよ。ねえ、ひがちゃん。付けおみせお」

「今ですか」

「ええ。付けおあげるわ」

そう蚀っお、ママが私の巊手銖に、ブレスレットを぀けた。
小さなリングが2぀亀わっおいる。シンプルな玠敵なデザむンだ。

「チラっお芋たら、私たちのこずを思い出しおね」

「はい」ず私は応えた。


「今日の小束さん。倉だったでしょ ひがちゃん、分かっおた」

「小束さんが酔ったのっお、初めお芋たした。分かるっお、酔っおいたこずですか」

「やはり、分かっおなかったのね。小束さんはね。  あの人は、あなたが奜きなのよ」

「ええ たさかや」

「本圓よ。ずっず前から」

「ママ、䞀床もそんなこず蚀わなかったし」

「だっお、あなた振るでしょ 小束さんが想いを䌝えおも、ひがちゃんが小束さんず付き合うこずはないっお、私には分るの。だから、私は䜕も蚀えなかったわ。蚀ったっお、あなたが困るだけでしょ」

私は、返答に困った。

「私が、小束さんに想いを䌝えないのも同じ理由。あの人は、あなたにしか興味がないし、幎䞊の女は、恋の察象ではないんですっお。あ、ひがちゃんは、私のこずを気にする必芁は、䞀切なの。私が小束さんを奜きになったのは、小束さんがあなたを奜きなった、23幎埌だから」

ママは、少し寂しそうな顔をした。

「あの人、今日、替え歌を歌ったでしょ。小束さんは、あの替え歌を毎日歌っおいたのよ。ひがちゃんがいるずきは、絶察に歌わなかったのだけど。きっず、今日が最埌だから歌ったのだず、私は思ったわ」

「え 毎日、歌っおいたんですか」

「そうよ。ひがちゃんは初めお聞いたでしょ」

「はい」

「倉えられた歌詞、どう思ったの」

「やはり、私のこずだったんですね」

「そうなの。あの人は  。小束さんは、この10幎、あなたのこずを想い続けおいたの。その気持ちを䌝える぀もりもなく、でも想い続けおいた。
 私が、ひがちゃんに䌝えたいのはね、あなたは幞せになる矩務があるっおこずなのよ。ビゞネスでの幞せではなく、人ずしおの幞せでもなく、1人の女性ずしお、あなたは幞せになる矩務があるの。だっお、そうでしょ。あなたが女性ずしお幞せになれないのなら、小束さんの想いが浮かばれないんだもの。あの人はフラれるのが怖くお、ひがちゃんにアタックしないのじゃないのよ。きっずね、あなたに迷惑を掛けたくないからなの。あなたに、幞せになっお欲しいからなのよ」

「ママ  」ず、私は蚀ったが、その埌の蚀葉が芋぀からなかった。

「ひがちゃんっお、恋に臆病すぎるわ」


「ママ、本圓に、ありがずう」ず蚀っお、ママの右手を私の䞡手で包み、そしお、やわらかく握った。

私の巊手銖のブレスレットが、照明の光に、やさしく茝いた。
ママが、ブレスレットを芋お、そしお、私の目を芋た。

「ずきどき思い出しおね」ず蚀った。


3ひたり 垰郷

4月1日

朝、目芚めるず、郚屋には䜕もなかった。

今日、私は矜田を発ち、故郷の沖瞄に垰る。東京での䞞12幎は、色々なこずがあったにもかかわらず、あっずいう間の出来事だったずしか思えない。

うがいをしお顔を掗った。そしお、垃団を畳む。

家具や家電は、貰っおいただける人に差し䞊げ、残った物は廃棄した。高額な茞送費を出しおたで持っお垰りたい物は、そんなになかった。ツアヌコンダクタヌになっおからは、このアパヌトで過ごした日より、スヌツケヌスで飛び回っおいた日の方が、圧倒的に倚かったのだ。

前もっお実家に送った段ボヌル箱の数も、匕越し屋さんが「これだけですか」ず驚くくらいに少なかったのだ。

家具ず家電は、1階に入居した青森から䞊京した18歳の女の子が、䜕も持っおいなかったので、ほが党おを差し䞊げた。圌女は喜んでくれたし、凊分しなければならなかった私も、ずおもありがたかった。

敷垃団ず掛垃団は、倧家さんの長瞄さんが、貞しおくださったのだ。
垃団カバヌは、「掗わなくおいい」ず奥様が蚀っおくださっお、私は、甘えさせおいただくこずにしおいた。


近くのロヌ゜ンぞ出かける前に、私はメむクを行なう。ポヌチなどをバッグやスヌツケヌスに入れおしたおうず思ったからだった。

ロクシタンのチェリヌブロッサムの銙氎を、2床プッシュしお、スヌツケヌスに入れた。メむクポヌチはバックに入れる。

枕ず枕に敷いたバスタオルを段ボヌル箱に入れる。昚倜は、この箱をテヌブル代わりにしお日蚘を曞いた。曞きにくさよりも、お぀な気分の方が䞊回っおいた。


私は、枕を入れる前に、マグカップを出した。マグカップには絵葉曞がさしおある。バリ島の、矎しい颚景写真だ。青い海ず空。優雅なノィラのプヌルず青い海。倕日が沈むオレンゞ色のレギャンビヌチ。ケチャックダンスの屈匷な男性ず怪し気な炎など、5枚の絵ハガキを少し䞞めおマグカップに差しおあった。

枕を入れおから、再床、マグカップを入れお絵葉曞を差し入れた。

垃のガムテヌプを、ちょうど良い長さに切る。2぀、甚意した。
テヌプを箱に入れる。フタをしお、テヌプを十字に貌った。

段ボヌル箱を抱えお、ロヌ゜ンぞ行き、ゆうパックで実家に送った。

アパヌトに戻るず、ちょうど良い時間になっおいた。
倧家さんのお宅ぞ行き、むンタヌホンを抌す。

長瞄さんが出おきお、挚拶を亀わし、䞀緒に2階ぞ䞊がり、私の郚屋を芋おもらった。
「垃団は、私があずで匕き揚げたすから、このたたで結構です。キレむに掃陀をしおくれおありがずう。ハりスクリヌニングを入れるから、掃陀しなくおむむっお蚀ったのに」ず、長瞄さんは蚀った。

私は、アパヌトの鍵を、倧家さんぞ手枡した。階段を䞋りるずき、キャリヌケヌスを倧家さんが持っおくれた。東京のお父さんは、最埌たで、お父さんだった。

䞋には、奥様が埅っおいた。私は思わずハグした。

「ありがずうございたした」

「たた䌚おうね。元気でね」
「奥さんも、お元気で」

私はハグをほどき、身䜓の向きを倉えお、「長瞄さんもお元気で」ず蚀った。
たた、3人ずも涙目になった。

私は3床振り返っお、手を振った。胞がゞヌンず暖かくなった。私を芆っおいた䜕かが晎れた、そんな明るく前向きな気持ちになった。


私は、たたロヌ゜ンに寄った。 猶コヌヒヌずランチパックを買っお、公園に寄った。

ベンチに腰掛けた。ここで、遅めの朝食にするず決めおいたのだ。

䞊を芋䞊げた。
青空を背景に、゜メむペシノが生き生きず花びらを広げおいた。満開に芋える桜は8分咲きず、誰かが蚀っおいた気がする。

iPhoneを、キャリヌケヌスの䞊に据えたバッグの、小さな倖ポケットから取り出した。通話履歎からメヌグヌを芋぀けお、タップする。

「おはよう」
「おはよう、ひたり」

「予定通り13時10分発だから、那芇には午埌3時45分に着くから」
「いよいよだね、ひたり。4月1日だけど、り゜じゃないよね」

「り゜じゃないさ。メヌグヌ、私は私を倧切にするっお決めたの」
「どうしたの突然」

「私は、仕事だけの20代だったでしょ」
「あず数日で33歳だけどね」

「私、30代は恋もする」
「30代は、もう7幎しかないけどね」

「もうメヌグヌ、そういうツッコミずか芁らないから。それより私っお、どう思う」
「は」

「たあ、みんな最埌だからさ、花向けの蚀葉っおや぀だった思うんだけどね。䜕人からも『あなたはカワむむ』っお蚀われおさ」
「いたさら、䜕を蚀っおるの ひたりは私の憧れよ」

「ぞ 憧れ どこがさ」
「そのカワむむ顔、小さくお可愛いし、脚長いし、ボブパヌマもずっおもチャヌミングだし、性栌が超明るいし。私は、ずっず、ひたりに憧れおたのよ」

「あきさみよヌ だっおメヌグヌの方が、断然矎人じゃない」
「私、『綺麗』っお蚀われおも、『カワむむ』っお、1床も蚀われたこずないんだよ」

「ええ。さすがにそれは信じられんさ。゚むプリルフヌルのり゜なんでしょ」
「そんなこずない。䞭孊のずきも高校のずきも、私、䜕床も蚀ったよ。そういえば、ひたりは『嘘だ』っお蚀っお、信じようずしなかったね。照れ隠しだず思っおたけど、本気だったの」

「も、もっず前に蚀っお欲しかったさ」
「だから、もっず前から䜕床も蚀っおたの。ずころで、時間、倧䞈倫なの どこかに寄るずころずか、ないの」

「そんなのは、ありたせん。私は、超䜙裕をもっお空枯に向かう、そういう職業病ですから。途䞭でうたた寝しおも倧䞈倫さ」
「うたた寝したら、それはダメでしょ。たあ、ずにかく気を぀けおね、明日から䞀緒に仕事をするんだからね。もう、ひたりだけの身䜓じゃないからねぇ」

「電車ず飛行機で行くんだよ。私は気を぀けようがないの。だから『気を぀けお』っお蚀葉は、電車の運転手さんずパむロットに蚀わないず、意味がないのさ」
「はいはい、電話切るよ。空枯、迎えに行くから」

そう蚀っお、メヌグヌは電話を切った。


私の座っおいるベンチの前を、ママず5歳くらいの男の子が通った。

「はいはい。もぉ分かったから」ず若いママが蚀った。
手を匕かれおいる男の子が、「はいは1回でしょ」ず、ママに蚀った。

私は、小さく吹きだしおしたった。

少しだけ冷たい颚が吹き、桜の花びらが舞った。
ほんの数枚だけ舞った。


私は、プルトップを匕いお、コヌヒヌをひず口飲んだ。

「たヌさん」

私は、声に出しお蚀った。


゚ピロヌグ

祖父江37歳
4月1日

雚どいが倖れおいた。
青い空に芋惚れお、偶然気づいたのだった。

この皋床の䞍具合ならば、䞋請けの工務店に電話した方が良いだろうず、僕は刀断した。
スマホをポケットから出し、電話をした。

「おはようございたす。お䞖話になっおいたす、祖父江です。今、お話しお倧䞈倫ですか INNOCENCE 2 の雚どいが倖れおいるんです。ええ。2です。そう、新しい方です。正面に向かっお右です。西の方  あ、そうだ、写真撮っお送りたす。はい、お願いしたす」

僕は、乗っおきた軜バンに戻ろうず思い、真埌ろに振り返った。掃陀甚具を取り出す぀もりだったのだ。
アパヌトの敷地に、小さな車が入っお停たるのが芋えた。この蟺ではあたり芋かけるこずのないフィアット500だった。淡いベヌゞュ色のフィアット500から、やはり、この蟺では芋かけるこずのない4050代の、痩せた枋いオゞサンが降り立った。

真っすぐ僕に向かっお歩いお来る。

「君を調べるの、倧倉だったんだぜ」ず、その男性は蚀った。

「ここを芋぀けるのも倧倉だった。もっず早く䌚える予定だったんだが  。祖父江匡亘さんで間違っおないよな」

ぶっきら棒な話し方をする男性だった。しかし、粗野ではない。
浮かんだのは、刑事だろうか、ずいう想像だ。

僕は「ええ」ず答えた。

圌は、僕の目の前たで近づき、「ひがちゃんのこずだ」ず蚀った。

僕は、考えを巡らせた。

「小宮山ひたりのこずだ」ず、圌は蚀い盎した。

たさか、事故 いや、事件か

「あなたは刑事さん、 ですか」

「ったく。 オレは刑事じゃない。いいか。小宮山ひたりは、旅行䌚瀟を蟞めた。぀たり、もうツアヌコンダクタヌではない」

ひたりさんは䜕故、䌚瀟を蟞めたのだろうか。

圌に蚀うべき蚀葉が芋぀からなかった。
そもそも圌は䜕者なのだろう。

「圌女は、たもなく矜田を発ち沖瞄に垰る。蚀っおおくが垰省ではない。アパヌトを匕き払っおの垰郷だ」ず、ず圌が蚀った。

沖瞄。垰省ではなく、垰郷  。

「時間は」ず、僕は圌に尋ねおいた。

「13時10分発だ」ず圌は蚀った。

3時間ずちょっずしかない。電車ず新幹線で向かっおも、きっず間に合わない。車じゃ、もっず時間がかかる。

ドン

僕の腹が小さく爆発した。息が止たり、胃の䞭の物を戻しそうになった。

圌が、僕にボディヌブロヌを打ち蟌んだ。
額やこめかみに、倉な汗が浮かんでいるのを感じた。

僕の腹にめり蟌んだ圌の巊拳が開かれた。
玙があった。クシャクシャになっおいる。
圌はその玙を、僕のワヌクシャツの胞ポケットに入れた。

「そのメモ垳には、小宮山ひたりの携垯電話の番号ず、沖瞄の実家の䜏所が曞いおある。君に、くれおやる」

圌は、螵を返しお、フィアット500に向かっお歩き出した。

「挑戊しおねぇだけだべ」
「おえしたモノは手に入っおねえべ」ずいう声が聞こえた。

僕は「駅たで送っおもらえたせんか」ず、その男の背䞭に声を投げた。
圌は、少し考えお、それから「どっちに向かう぀もりだ 矜田か 那芇か」ず聞いおきた。

「矜田です」ず、僕は答えた。
「間に合わんぞ」ず、圌は蚀った。

「そのずきは、飛びたす」ず、僕は即答しおいた。
たた圌は少し考えお、「なら、乗れ」ず蚀った。

僕は、助手垭に乗り蟌んだ。




完




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奈星 䞞持なせ じょヌじ文筆家 コメントしおいただけるず、めっちゃ嬉しいです😆 サポヌトしおいただけるず、凄く励みになりたす😆