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[GL物語] That's my life 1-4〜人生なんてこんなものだろうと諦めていた〜

「ゾーイ、おはようございます!」

「おはよう、サラ」

 近所で映画の撮影をしているサラ。
毎朝「ジャスト」で会うようになった。

「こっちがゾーイの」

「ありがとう!」

「こっちがサラの」

「ありがとうございます!」

「ふたりともお仕事頑張ってきてねぇー!」

 元気いっぱいに言うジェシー。

「はーい」

 笑顔で答えるサラ。

「行ってきます」

 私も自然と笑顔になる。

 店を出ると、

「ゾーイ、お仕事頑張ってください。怪我しないでくださいね」
 
 毎朝言ってくれる。

「うん! ありがとう! サラも気をつけてねぇ!」

「はい!! いってきます!」

 歩き出すサラ。

 今日も振り返ってくれるかなぁ……

 サラの後ろ姿を見続けていると、角を曲がる直前に振り返り手を振ってくれる。
微笑むサラの姿に笑みがこぼれる。
毎朝のルーティン。

 事務仕事をしていても、ヘレンの会社に資料を取りに行っても、頭の中はサラの笑顔が浮かんでくる。
 サラの事はまだよく知らない。
 連絡先も交換していない。
 朝「ジャスト」で会うだけ。
 けどサラと一緒にいるといつも感じる怒りや孤独を忘れることができる。

       ☆  ☆  ☆

 現場の資料を探すヘレン。
パソコンから目を離し、

「最近顔色いいね。何かいいことあった?」

 頭を傾け言う。

「特には。普通」

「ふーん…… あっ、ほら、ゾーイがよく行くお店……」

「ジャスト?」

「そうそう! そこ!」

「……」

「……」

「…… で? 何? 名前が知りたかっただけ?」

「そう!今度会社の飲み会あるけど、たまには違う店もいいなかぁーって思って」

「…… 週末は混んでいるよ」

 来てほしくない。
 私のプライベートな場所。
 私の好きな店。

「そうだよねぇー! 今も毎朝寄るの?」

「うん……」

「へー! はい、明日の資料」

「ありがとう……」

 なぜ、急に「ジャスト」の話? 
私が行きそうな店はずっと避けていたくせに。

「体調良くてもあまり無理しないでよ!」

「あ…… うん」

 ヘレンの笑顔が妙に怖い。
それになぜか…… 落ち着かない。

       ☆  ☆  ☆

「よっ!」

「よっ! おはよう!」

 いつものようにドナがいる資材置場に顔を出す。

「何か持っていく?」

「うん。電気のコード、30mのやつ」

「ちょっと待っててねぇー」

 やっぱり…… ヘレンのあの笑顔が気になる!
 何かあるのか? 
 いや…… 考えすぎか??

「何そんな難しい顔して! どうした?」

 ドナが戻ってきた。

「いや、何か…… いつもしてこない質問をヘレンがしてきて…… 話している顔が気になって…… 何か…… いいことでもあったのかな? ヘレン」

「何もないと思うよ! ゾーイが元気そうで嬉しかったんじゃない?」

「あぁー 確かにさっき『最近顔色いいね!何かいいことあったの?』って言われた」

「ほらねぇ! で、何かあったの?」

「うーん…… あった」

「なになに? 何があった? 彼女できた?」

「できてないよ。ただ、出会いはあった」

「本当に!? ついに!」

 笑顔のドナ。

「全然だよ! たまたま店で一緒になったから飲んで、最近はコーヒーを買いにいく時間が同じだから、毎朝会う感じ」

「いいじゃん! …… あぁー」

 私の後ろで別の業者さんが待機していることに気づいたドナが残念そうな声を出した。

「ゾーイ、また話聞かせてねぇ」

「うん! またねぇー!」

 電気のコードをトラックの荷台に載せ、急いでその場を離れた。

 サラのこともう少しドナに話したかったなぁ……
 仕事だからしょうがないか……
 …… サラに連絡先聞いてみようかなぁ……

 色々な考えがいつも頭の中でぐるぐると回っている。

 ダメだ! ダメだ! 集中! 怪我する!!

 気を引き締め仕事を終わらせ、次の日の朝を迎えた。

「ジャスト」に向かう。

 サラに会える!
 足取りが軽くなる。

いつもと同じ時間。

けど、サラは来なかった。

次の日も、そのまた次の日も……

 …… 遅かった。
 もっと早くに連絡先を聞いておけばよかった……

後悔するが、これが私。

 ただ聞けばいいだけなのに、躊躇してしまう。
言葉が出なくなってしまう。

 情けない…… 後悔ばかりの人生……

       ☆  ☆  ☆

 朝晩は寒さが残るが、昼間は暑くなってきた5月の終わり。

 仕事が立て込み休みは取れず、残業の日々。

疲れ切って家に帰り、食事もろくに取らず眠る生活を続け痩せ始めた私を心配するジェシー。

「遅くなってもいいから、帰る前に店寄って。夕飯作っておくから!」

「ありがとう。そうする」

 仕事が終わると毎日「ジャスト」に寄り夕飯を受け取って帰る生活が2週間続いた。

 この2週間、サラに会うことはなかった。

 忙しさの中、薄れていくサラの笑顔……

 会いたい……

       ☆  ☆  ☆

「わかった…… 終わったら連絡するよ」

 今日も残業決定だ。

 ニッキーの現場が早く終われば、手伝いに来てもらおうと電話をしたが無理だった。

うなだれる私を見たジョーイがその場に倒れ込む。

「もぉー!! 疲れた!!」

 床を叩き駄々をこね始めるジョーイ。
その姿は可愛く、現場の画廊に私の笑い声が響いた。

「もう…… やめちゃう?」

うつ伏せで寝転ぶジョーイの背中に自分の背中を重ねた。

「やめよう! もう十分働いた!」

「本当にね…… 疲れた」

 冗談を言い笑顔を絶やさず仕事をしているが、足の小指にできたマメは歩くたびに痛み、
荷物を持ち上げるたび背中に鈍痛が走る。
こめかみを強く圧迫された頭痛は続き、
体力の限界が近づいていた。

「あと何が残ってる?」

 ジョーイが言う。

「わかんない……」

 何も考えたくない……

 力を抜き、全体重をジョーイに預ける。

「わかんないじゃない!! あと何?」

 やる気をなくした私を奮い立たせるようにふざけながらも強い口調で言うジョーイ。

「あそこの照明とぉ……」

 指さす方を見るジョーイ。

「あとはこの真上にも照明をつけて、あっちにもつけて…… あっちにもつける!」

 四方八方に腕を動かす私。

「あと少しだね」

 ジョーイは背中に私を乗せたまま動き始めた。

「そーだね……」

 動かない私を軽々と持ち上げ四つん這いになると、

「やるよ!!」

 ジョーイは画廊に響き渡るように大きな声を出した。

「わかったよ!」

 滑り台のようにジョーイの背中から降りる。

 これは面白い!

「もう一回!」

 叫びジョーイの背中にもう一度乗ろうとするが、怒られる。

「もう終わり!! また9時まで残業になっちゃうよ!!」

「もぉー! ケチ!! やればいいんでしょ! やりますよ!!」

 渋々作業を再開した。

 本当に…… ガキだなぁ!

自分で呆れてしまう。

 一番年上の私がしっかりしないといけないのはわかっている。
しかし、何年も苦楽を共にしてきた仲間の前では大人な自分を演じることなく「素」が出てしまう。
精神年齢が小学校低学年の私。

「煙草吸いたい! お腹空いた!!」

 愚痴を言い続けながらも仕事を終わらせた。

「終わった! そっちは大丈夫? どんな感じ?」

 ニッキーにメールを送る。

「お疲れ様! こっちは大丈夫! お風呂から出てスッキリしている感じ!」

 親友エリ・コリンズから返信。

 ?? なぜエリ??…… 
 やってしまった!!
 
 親友ふたりとのグループチャットに送信していた。

「間違えた!! ごめん!!」

「そうだと思った! 気を付けて帰ってよぉー!」

「ありがとう!」

 エリに返信すると、すぐさまニッキーにもメールを送る。

 それにしても、この前エリともうひとりの親友アナ・トンプソンに会ったのは1ヶ月以上前。
この1ヶ月ニッキーと仕事の連絡しかしていない。

 何をやっているのか……

 足取りは重く夜空を見上げる力も、
「お疲れ様。こっちも終わったから帰るよ」とニッキーからのメールに返信をする力も残っていない。

       ☆  ☆  ☆

「おかえりー」

 元気なジェシーの声が店内に響く。
平日の「ジャスト」には常連さんの数人がカウンターの定位置に座り飲んでいた。

「ただいま……」

「こんな時間まで仕事をしていたのか?」

 年配の常連さんが話しかけてくれた。

「そう…… もう疲れた」

「若いからって無理するなよ」

「うん…… ありかとう」

 やっぱり…… サラ…… いないよなぁ……

「1杯飲んでいく?」

「うーん…… やめておく。 一気に酔いが回っちゃいそうだから」

 ジェシーから夕飯を受け取り家に帰った。

 座ってしまったら動けなくなってしまう。
 バスルームに直行しシャワーを浴びる。
まだ座れない。
寝落ちしてしまっても困らないよう明日の支度をし、
夜10時。
ようやく夕ご飯。
 夕ご飯の時、毎晩欠かさず観るテレビドラマ「フレンズ」。
何十年も繰り返し観ているのに、コメディーの場面で自分でも驚くほど爆笑し、感動の場面ではすぐに泣く。
 疲れからホルモンバランスが乱れ、情緒不安定な状態。
こういう時は眠いのに眠れない。
寝酒のビールを取りに行こうと立ち上がった時、メールが届く。

「誰? マジでもうヤダよ……」

 恐る恐る確認する。

「お疲れ様!」

 グループチャットに送ってしまった返事がアナから届いた。

「ありがとう!」

 間違えだとわかっていても返事をくれるアナ。

 こういうところ好き!

       ☆  ☆  ☆

 親友のエリとアナ。
ふたりとは高校の時に仲良くなった。
私はボーイッシュ系、エリは可愛い系、アナは綺麗系とタイプの違う3人だが話が合う。
 ふたりとは毎日連絡を取り合うわけではなくあっさりとした関係。
10代、20代と人生が大きく動き出した時期、ふたりはいつも私のそばにいてくれた。
そして、私が出した人生の決断にふたりは反対することなく見守っていてくれ、失敗に終わった時は肩を抱き一緒に涙を流してくれた。
 色々なことを経験しお互いを支え合いながら私たちは大人になった。

 親友というより家族のような存在。

       ☆  ☆  ☆

「最近また忙しいの? 大丈夫?」

 グループチャット内、アナとのやり取りが続く。

「なんとか大丈夫! ありがとう!」

「働きすぎ注意だよ! 心配。 気晴らしに飲む? 今週は休み?」

「休み!! 飲みたい!!」

「エリは今週どう?」

「大丈夫!」

 エリからすぐに返事が来る。

「やったぁー!!」

 嬉しさのあまりすぐに返事する。

「ゾーイの家に7時でいい?」

 いつも私の家で飲むことが多いから場所の確認はあまりしない。
 珍しいアナからの質問に、

「ジャストで飲む?」

 私は返事した。

「たまには店で飲むのもいいね」

 とエリ。

「そうだね!」

 とアナ。

「予約は私がしておくよ」

 そう返事したがこのあとの記憶がない。
丸型のクッションに体を埋め、寝落ちしていた。

 翌朝

「ありがとう! お願いします!」

 ふたりからの返事。

 嬉しすぎる!! 早く会いたい!!


続く……


お読みいただきありがとうございます!
書きたいのになかなか書けない日が続き焦ってしまいます!
焦ってはいけないと自分を落ち着かせ1-5も書き進めます!
1-5もお読みいただけたら幸いです!




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