紫に
都忘れて
おじぎなり
徒然法師、ぽつりと言った。
「心がおしゃかになってな」
弟子はぎょっとしたが、法師は笑っている。
壊れたというより、どこか吹っ切れた顔である。
「ありがたがりすぎたかもしれん。都も、名も、縁も」

ふらり歩けば、道ばたに紫の花。
名はミヤコワスレ。
風に揺れて、先におじぎをした。
法師、しばし見つめてから、深く一礼。
「おしゃかも悪くないな。軽い」
弟子には、その言葉の半分もわからなかったが、頭を下げた法師の背だけが、やけにまっすぐに見えた。
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