詩「パフォーマンス」
公演が終わった
ぼくは 2階客席から
円状の舞台を見下ろし
充実した感動にひたっていた
すると
向うの客席が騒ぎだした
大勢の客が立ち上がり 声をあげながら
白い扇子を投げ飛ばし始めた
ばらばらに投げられ すぐに落ちてゆく扇子
あらら と思いながら見ていると
だんだんと 扇子が生きもののように連なり落ちてゆく
次々と客席から下に扇子がひとつの大きな滝のような流れをつくる
それが終わると
客席には 大きな波が立ち
左に右にと 揺れてゆく
客たちは声をあげながら
手振り身振りで 客席全体をスクリーンにし
きらきらとした画を描いてゆく
光り輝く その映像に目を見張るうち
花火大会の最後のように 大きな音が消え パフォーマンスは終わった
暗くなった場内を出たぼくは 帰路を急ぐ…
ここからは遠い道筋をとおり 家に帰るのだ
人波に飲まれながら ぼくは駐車場に向かう
この前買ったばかりのトヨタカローラクロスに乗った
大学の先輩・関さんが一緒にいたが 彼は反対方向へ
ひとりぼくは車に乗り 遠いとおい家路につく
だが その道は時に曲がりくねり 狭いところもあり
気づくと ずいぶんと高低差のあるところを下りてゆかねばならない
そこで 車は止まった 前をゆく車は一台ずつ下りてゆくのだが
ぼくは 車を反対向きにし その前部にロープをかけ
ロープを持ちながら 急な坂を車を後退させてゆく
車の重さに引っ張られてはもろともに落ちてゆくところだが
なんとか車を支えながら 下に着くことができた
家までの道はまだ遠い
だが まだぼくの中には
さっきまで見ていたパフォーマンスの感動
そして 無事に車を下ろすことができた達成感
それらに包まれながら この先を 家までの道を帰る
