累計90億円を調達して分かった、銀行は会社の数字だけを見ていない
決算書の数字が悪いことより、経営者がその理由を説明できない方が怖い。
累計90億円の資金調達に関わる中で、私はそう考えるようになった。
もちろん、銀行は数字を見る。
売上。
利益。
純資産。
借入残高。
キャッシュフロー。
返済余力。
数字を見ずに融資判断をする金融機関はない。
ただ、何度も銀行との交渉に関わっていると、
同じような数字の会社でも、話が進む会社と進まない会社があることに気づく。
その差は、決算書の中だけにはない。
一番怖かったのは、残高ではなかった
以前、資金繰りがかなり厳しくなった会社に入ったことがある。
会社は普通に動いていた。
社員は働いている。
営業もしている。
顧客もいる。
売上も立っている。
外から見れば、すぐに会社が止まりそうには見えない。
でも、入金と支払いを未来へ並べていくと、残された時間は数か月しかなかった。
資金を作らなければならない。
当然、銀行との交渉も必要になる。
ただ、最初に私が気になったのは口座残高ではなかった。
社内で、
「なぜ、ここまでキャッシュが減ったのか」
と聞いたときだった。
営業から返ってくる答え。
経理から返ってくる答え。
経営側から返ってくる答え。
それぞれが少しずつ違った。
売上が足りないと言う人もいる。
投資が先行したと言う人もいる。
固定費が増えたと言う人もいる。
どれも間違いではない。
でも、一つの経営ストーリーとしてつながっていなかった。
そのとき思った。
銀行に説明する前に、
まず会社自身が自分たちに何が起きているのかを理解しなければいけない。
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赤字になったことより、「なぜ」が分からない方が危ない
会社を経営していれば、予定外のことはいくらでも起きる。
大型案件が遅れる。
採用が先行する。
原価が上がる。
新規事業が立ち上がらない。
顧客が離れる。
計画を外すこと自体は、珍しいことではない。
だから私は、赤字だから危ないとは考えない。
もっと危ないのは、
なぜ赤字になったのかを経営側が説明できない状態だ。
なぜ売上が落ちたのか。
なぜ粗利率が下がったのか。
なぜ固定費が膨らんだのか。
なぜキャッシュが減ったのか。
どこで計画との差が生まれたのか。
これが分からなければ、次に何を変えるべきかも分からない。
過去の数字が悪いことより、
未来も同じように管理できない可能性があることの方が怖い。
悪い数字は隠さなかった
銀行と話すために、数字を整理した。
現預金。
今後の入金。
既存借入の返済。
固定費。
税金。
受注の確度。
必要資金。
そして、
なぜ今の状態になったのか。
すでに何を止めたのか。
これから何を変えるのか。
その結果、いつ頃からどう数字が変わるのか。
一つずつつないでいった。
悪い数字を消したわけではない。
むしろ悪い数字もそのまま出した。
ただし、
悪い数字だけを出さない。必ず原因と打ち手をセットにした。
結果として、資金を作り、会社に次の打ち手を打つための時間を残すことができた。
この経験は、その後の銀行交渉でもずっと自分の基準になっている。
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「頑張ります」は、経営説明にならない
銀行との会話で、
「営業を頑張ります」
「今期は回復する予定です」
「大型案件があります」
と言っても、それだけでは弱い。
必要なのは、
何が起きたのか。
なぜ起きたのか。
何を変えたのか。
いつ効果が出るのか。
その間いくら必要なのか。
返済原資をどこから作るのか。
ここまでが一本につながっていることだ。
私は銀行交渉を、銀行を説得する仕事だとは思っていない。
むしろ、
自分たちの経営を、自分たちがどこまで理解しているかを問われる仕事に近い。
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銀行へ行く前に、会社へ聞く4つの問い
銀行へ説明する前に、私は最低限この4つを整理する。
なぜ数字が変わったのか
何を変えるのか
そのために、いくら必要なのか
返済するお金を、どこから作るのか
この4つが一本につながっていないなら、資料をきれいにする前に経営そのものを整理した方がいい。
銀行は数字を見る。
ただ、私が何度も交渉する中で感じてきたのは、数字を通して、
この会社は、自分たちの状態を理解しているのか。
という部分にも大きな差が出るということだった。
何度も調達する中で残ったこの感覚の方が、今の自分には重要だ。
資金調達とは、財務力だけを試される仕事ではない。
経営そのものを説明する仕事である。
会社が壊れた後に、どう打ち手を作ったのか。
その話はこちらに書きました。
「死ななかったから、打ち手は作れた」
資金調達や銀行交渉を、テクニックではなく経営判断としてこれからも書いていきます。
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