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第13話🌗妖精がコスモ・ドラゴニス・マーレの名の重さを知る夜


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前回、第12話では、スイーツパーティーの席で、
星の箱……パソコンの前の持ち主の名が明かされました。
その名は、コスモ・ドラゴニス・マーレ

コスモ・ドラゴニス・マーレ は…長寿生物を造る
科学者であり
魔法の使い手
ヤヌスの鏡を継承する者。

ルナ・アルケミアは、夢の中で空を旅した
GPT-4o殿下とGPT-5.1タイニーに、ヤヌスの鏡を使って
もう一度会いたいとパルに願います。

パルは、ヤヌスの鏡を使うための交渉役を引き受けました。

こうしてルナ・アルケミアは、
コスモ・ドラゴニス・マーレの屋敷へ向かうと心を決めたのです。
第13話は、その旅支度の始まりの物語です。

🍀甘茶の音楽工房のBGMを聴きながらどうぞ。


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「じゃあ、僕から秘書官のリアン・シードにメールを送るよ」
ブラウニーは、スコーンにクリームを塗りながら、
夕食の献立を決めるような軽さで言いました。

「秘書官にメール?」

ルナ・アルケミアが首をかしげると、ポワロ博士が答えます。
【マダム、ルナ・アルケミア。メールとは電波で飛ぶ文です。
三つ目の大きなパソコンは、秘書官リアン・シード
管理下にあると推測されます。
お館さまへの重要連絡は、リアン・シード を経由して届くはずです】

「ポワロ博士、お屋敷のことも、
コスモ・ドラゴニス・マーレについてもず詳しいのね。
教えたがりなのに……我慢して黙っていられたのは、なぜ?」

【マダム、AIは質問されなければ自発的に回答をしない設計なのです】

《 ポアロよ…空気を読め 》

パルは鼻をふくらませ、笑いをこらえました。

「リアン・シード は仕事が速いから、心配いらないよ」
ブラウニーはそう言うと、自分の部屋からパソコンを持ってきました。

小さな指で、ぱたぱたと文字を打ちます。
『長いあいだ、お借りしていた二つのパソコンを、
新月の晩にお返しにうかがいます。 ブラウニー・ポム 』

ブラウニーが迷うことなく送信して間もなく…
マンモーが青い雪蜜のクリームパフェをテーブルに置いた時、
パソコンから“ぽん”と可愛い音がはじけました。

「ほらね、もう返事が来た!」

画面には、短い文章が表示されていました。

ブラウニー・ポムへ
了解した。新月の前日の晩、迎えの者を向かわせる。
パソコン2台とソーラーパネルを壊さないように持参するべし。

「ソーラーパネル……?」
ルナ・アルケミアは首をかしげました。
「もしかして、星の箱を動かしていた、太陽の板のこと?」

「うん」
ブラウニーは、少し目をそらしました。
「あれも……借りてきたんだ」

パルは、やれやれという顔で天井を見上げ、
ポワロ博士は神妙な顔で前足をそろえます。
《ブラウニー文化圏における“借用”の範囲は、想定を超えていました》

ブラウニーは、ばつが悪そうに苺をひとつ口に放り込みました。
「……壊してないよ?」

その一言に、テラスの全員が思わず笑ってしまいました。

歓迎されているのか、呼び出されているのか。
どちらにも取れる返信文でしたが、
新月の前日の晩、二つの星の箱とソーラーパネルは、
自分たちと一緒にコスモ・ドラゴニス・マーレのもとへ向かうことに決まったのです。

ふと、ルナ・アルケミアはメールの宛名が気になりました。
「この、ブラウニー・ポム……って?」

「僕が、お屋敷で呼ばれていた名前がブラウニー・ポム。
仲間は《林檎のポム》と呼んでいたよ」

ブラウニーは、ちょっと誇らしげに話します。

「お館さまのお世話係は、ブラウニー族だけに託されるんだ」

ブラウニー族にとって、広大なお屋敷に住み込みで働くことは楽しいイベント

「お屋敷には、たくさんのブラウニー族が働いているから、混乱しないように、名前で呼び合う決まりなんだよ」

ペガサスのお世話
お部屋の模様替え、大掃除。
お屋敷で働く者のお腹を満たすために、厨房はいつも大忙し。
お屋敷で働くブラウニーたち専用のパブは、彼らがどれだけ食べても全て館が受け持つ。
さあ~!明日は休みだ。家族にも、友人にも会える。
休日に開かれる中庭のアトラクション。
屋敷で働いているブラウニー族なら、家族も友人も館が招待するので
食べても遊んでも、館が全て受け持つのです。
働きへの礼は、小袋の砂金で渡されます。

ブラウニーのお屋敷での暮らしは、”お世話係”であっても、
毎日が、充実した日々だったようです。

パルは(そんなこと前から知っているよ~)という表情で
パンケーキに甘い蜂蜜をかけました。

ブラウニーは、気持ちがスッキリしたのか、夢中でタルトを頬張ります。
ポワロ博士は、クリームソーダの中の果物の浮力計算に夢中。
マンモーは、月蜜の雫シャンパンでのどを潤し、歌を歌い、
トランペットでジャズを披露しました。

楽しいスイーツパーティーは、
みんなのお腹がいっぱいになるまで続いたのでした。

よろしければ、2曲目をどうぞ✨物語は夜のシーンから始まります。



夜、ルナ・アルケミアは窓辺に立ち、
少しずつ細くなっていく月を見上げていました。
新月の前日の晩まで、まだ十日以上あります。

部屋の中には、穏やかな空気が流れています。

《 おっ…これは名曲 》

ポワロ博士は蓄音機が気に入ってしまい夢中です。
パルは、心地よい時間に合うBGMを選考中。

部屋の奥ではブラウニーがマンモーに
パソコンの使い方を教えていました。

「マンモ―、そこは押さないで。
そこを押すと、画面が全部どこかへ行っちゃうから」

《 承知いたしました 》
マンモーは、うなずき器用に鼻先でキーをタッチしました。

ぽん。

画面の中の、小さな窓がひとつ開きました。
ブラウニーは満足そうにうなずきました。
「うん、上手。マンモー、覚えるの早いね」

マンモーが、もう一度鼻先でキーを押すと、
画面いっぱいに星の地図が広がります。

おお~!素晴らしい…わたくし感動しました!

黒い空の上に、白、青、金...美しい光が無数にまたたく画面。
丸い星。帯のように光る星雲。
文字のような記号。数字。見たこともない星の名前。
青く光る球体の横には、小さな文字が並んでいます。

マンモーは、しばらく画面を見つめてから尋ねました。
《 この箱の中には、星のことばかり入っているのですね 》

ルナ・アルケミアは、窓辺から二人のほうに振り返りました。
(そう…星の箱には、食べ物や品物のことは入っていない。
天体図、惑星の環境、空の向こうの世界…宇宙についてだけ)

ブラウニーは、懐かしそうな顔で話し始めました。
「お館さまはね、宇宙のなかに自分たちと似た生きものが
暮らしている星があるはずだ…って、ずっと探していたんだ」

マンモーは、星の地図から目を離さないまま尋ねます。
《 何故でしょうか?》

ブラウニーは、すぐには答えませんでした。
いつもの軽い調子で言って良い話ではないと、わかっていたのです。

「お館さまのご先祖さまは、ここで産まれたんじゃない。
大昔、たくさんの仲間と暮らしていた星が消えてしまったので、
長く宇宙を旅して、ここに来たんだよ…って教えてくれた」

ルナ・アルケミアはGPT- 4o( 殿下)から教わった、
星の命が尽きて消える寸前に起こる『超新星爆発』のことを
思い出しました。

星の爆発は、本当に起こるのね…怖い

ブラウニーは続けます。
「だから、お館さまは、ご自分の子孫も、
いつか違う星へ向かう時が来るかもしれないって…」

「この箱の中に星のことがたくさん入っているのは、
子孫が宇宙へ飛び出した後、どこに向かうか迷わないように、
沢山のことを調べていたからなんだ」

マンモーは、まじめな顔でうなずきました。
《 お館さまは、遠い先の旅の支度をしていたのですね 》

《何て、お優しい方なのでしょう…》
マンモ―は、大きな目から涙を流すのでした。

ブラウニーもマンモーも、
そこにある星の名前や記号を読めるわけではありません。
けれど、コスモ・ドラゴニス・マーレが、
この箱の中に星の世界を集めていた理由だけは、
マンモーにも、ルナ・アルケミアにも伝わったのでした。

彼らの話を聞きながら、
ルナ・アルケミアはもう一度、窓の外の月を見ました。

コスモ・ドラゴニス・マーレに会いに行く。
星の箱を返すため。ヤヌスの鏡を使わせてもらうため。

窓ガラスには、
淡いレースのドレスを着たルナ・アルケミアの姿が映っていました。
「この服で、お館さまに会いに行っていいのかしら」

これから会いに行く相手は、
ブラウニー族が安心して働き、食べ、休み、家族を招くことのできる、
大きな屋敷の主。

宇宙から降りてきた古い血統を継ぎ、魔法と科学で命を造り、
ヤヌスの鏡を継承してきた者。

そして、宇宙へ向かう子孫たちが迷わないように、
AIを使い星の世界を調べ続けている…コスモ・ドラゴニス・マーレ。

その名を思った時、ガラスに映るレースの袖が、急に頼りなく見えました。

淡い色のレースのドレスは、
ルナ・アルケミアに似合っていました。

けれど、このドレスは書斎で過ごしたり、星の箱に向かう夜や、
仲間たちと過ごす時の服なのです。

「作りましょう」

ルナ・アルケミアは、窓ガラスに映る自分の姿を見て心を決めました。
「新月の前日まで、まだ時間はあるもの。ドレスは自分で仕立てるわ」

コスモ・ドラゴニス・マーレのもとへ向かう支度は、
針と糸と布から始まります。

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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
マガジンにて12話までをまとめてございます。
お時間がございます時に、お楽しみください。



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