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#131 【連載】「ヒューマンファクター」超入門 vol.8 ~事故調査は「犯人捜し」ではない。真犯人は「仕組み」の中にいる~

おはようございます。

ワラビー社会保険労務士事務所代表の渡辺 忍です。

本日は12月8日、月曜日。

新しい1週間の始まりです。

ここ三重県明和町も冬の寒さが厳しくなってきましたが、寒風に負けず、今週も元気にスタートしましょう。

さて、好評連載中の『元陸上自衛隊パイロットが教える「ヒューマンファクター」超入門』。

第8回目の本日は、不幸にも事故が起きてしまった後の対処法、「事故調査」についてお話しします。

私は陸上自衛隊において、死亡事故を含む複数の航空事故調査に従事してきました。

その経験から、経営者の皆様に最も強くお伝えしたいことがあります。

それは、「事故調査を『犯人捜し』にしてはいけない」ということです。

「誰がやった?」と聞いた瞬間、真実は闇に消える

現場で機械が壊れたり、怪我人が出たりした時、経営者の第一声は何でしょうか?

「誰がやったんだ?」

「どこの部署の責任だ?」

もし、こう聞いてしまっているなら、その組織での事故はなくなりません。

なぜなら、「誰(Who)」を問うた瞬間、従業員は防御態勢に入り、「怒られないための言い訳」や「隠蔽」を始めるからです。

そして、調査結果は「作業員Aの不注意」という、何の意味もない結論で幕を閉じます。

Aさんを処分して一件落着……に見えますが、事故の原因となった「落とし穴」はそのまま残っているので、次はBさんが同じ穴に落ちます。

狙うべきは「Why(なぜ)」の深掘り

ヒューマンファクターに基づく正しい事故調査(RCA:根本原因分析)では、「誰が(Who)」ではなく、「なぜ(Why)」を徹底的に掘り下げます。
これを「なぜなぜ分析」と言います。

例えば、「作業員が油で滑って転倒した」という事故を例に考えてみましょう。

●1回目のWhy: なぜ転んだ?

 ○(ダメな調査)「不注意だったから」→ 終了(再発する)

 ○(良い調査)「床に油が漏れていたから」

●2回目のWhy: なぜ油が漏れていた?

 ○「配管のパッキンが劣化していたから」

●3回目のWhy: なぜ劣化に気づかなかった?

 ○「定期点検の項目に入っていなかったから」

●4回目のWhy: なぜ項目に入っていなかった?

 ○「設備導入時にマニュアルを作成したが、更新されていなかったから」


ここまで掘り下げて初めて、「設備管理ルールの不備」という「真犯人(根本原因)」が見えてきます。

作業員個人の不注意に見えた事故も、実は組織の管理体制(SHELLモデルのSやH)に欠陥があったことが分かるのです。

航空事故調査は「刑事捜査」とは違う

自衛隊や航空業界には、非常に重要な原則があります。

それは、「安全のための事故調査」と「責任追及のための刑事捜査」を明確に分離することです。

事故調査委員会の目的は、あくまで「再発防止」であり、パイロットを罰することではありません。

だからこそ、当事者は処罰を恐れずに、「実はあの時、眠気を感じていました」「手順を飛ばしました」と、自分に不利な真実を語ることができるのです。

企業においても同様です。

「正直に話してくれ。目的は君を責めることではなく、二度と同じ事故を起こさないためなんだ」

経営者がこの姿勢(コミットメント)を示せるかどうかが、再発防止の鍵を握ります。

今週の「処方箋」

もし今週、現場でミスやトラブルが起きたら、深呼吸をして、こう問いかけてみてください。

×「誰のミスだ?」

「なぜ、そのミスが起きる状況になっていたんだ?」

そして、報告書には「本人の反省文」を書かせるのではなく、「仕組みをどう変えるか(ルールの変更、設備の改修)」を書かせてください。

人間を責めても事故は減りませんが、仕組みを変えれば事故は確実に減ります。

次回、第9回は、ではミスをした人を全くのお咎めなしにして良いのか? という疑問に答える「Just Culture(公正な文化)」について解説します。

「処罰」と「学習」のバランスをどう取るか、組織運営の核心に迫ります。

それでは、今週も「Why(なぜ)」を追求する姿勢で、ご安全に!

今日のまとめ

ワラビー社会保険労務士事務所代表 渡辺 忍

#ヒューマンファクター #事故調査 #RCA #根本原因分析 #なぜなぜ分析 #再発防止 #リスク管理 #リーダーシップ #自衛隊式マネジメント #労働安全衛生 #三重県 #社労士 #連載企画


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