必死に追い越していく人が、最後まで見えなかった夜
事故のあと、町田へ戻る道だった。
246から町田街道へ。
一本道。逃げ場はないけれど、無理をする必要もない道だ。
私は、適度な速度で走っていた。
速くもなく、遅くもない。ただ「今の自分が怖くならない速度」で。
すると後ろから、例のようにバイクが追いついてきた。
車間が詰まる。
気配が変わる。
ああ、急いでいるなと思った。
私はそのまま走り続けることもできた。
でも、余裕をもって停まり、先に行かせた。
相手は勢いよく抜いていった。
その背中を見て、私はふと思った。
そこまでして、何を叶えたいのだろう。
配達員かどうかはわからない。
ただ、必死だった。
でも私は、その必死さの先にある“何か”が、どうしても見えなかった。
事故を二度経験した今、
私にはもう、そこまで急いで手に入れたいものがない。
抜かれても困らない。
競わなくても減らない。
何も起きなかった。
でも、心は少しだけ動いていた。
――なぜ、あそこまで必死になれるのだろう。
ここから先は
613字
¥ 800
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
