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【機動隊】パワハラの温床/一週間で2名の自殺者を出す機動隊の非日常な日常/【93】【2026】

1. 「小さな町の駐在さん」という、最も崇高な夢

大地巡査が憧れていた「地域の住民に寄り添う駐在さん」という夢。これは、警察組織において最も純粋で、最も尊い志です。都会の華々しい捜査一課や、凶悪犯を制圧する特殊部隊だけが警察ではありません。むしろ、地域の方々と顔を合わせ、声をかけ合い、日々の平穏を守る駐在所勤務こそが、警察の原点であり理想郷です。

しかし、その夢を抱いて入庁した若者が最初に叩き込まれるのが、皮肉にも「機動隊(マルキ)」という、個を消し去り、絶対服従を強いる最も苛烈な組織でした。

機動隊は、治安維持や災害救助の最前線に立つため、厳格な規律と強固な団結が求められます。それは間違いありません。しかし、その「規律」の意味を履き違え、後輩を精神的に追い詰める道具として使っていたのだとしたら、それはもはや部隊訓練ではなく、ただの「組織的な暴力」です。

同じ寮でわずか1週間の間に2人の若者が自殺するという異常事態。現場の空気は、外部から想像する以上に異常な緊張感と絶望に満ちていたはずです。「誰かがおかしい」と気づいていた人間は必ずいた。それなのに、誰もその声を上げられなかった。これこそが、私たちが認めなければならない最初の敗北です。

2. 「人間の命より規則が重いのか」という問いの重さ

父親の和仁さんが突きつけられた「黒塗りの報告書」。120人以上に聞き取りをして、わずか4枚、しかも大半が真っ黒。

「警察じゃなくて、ヤクザかなと思った」

この言葉は、組織を守るために身内を切り捨て、真実を隠蔽しようとする警察の最悪な体質を的確に言い当てています。警察官として、これほど恥ずかしい言葉はありません。本来、悪を暴き、市民の味方であるべき警察が、その刃を身内の遺族に向けていたのです。

「人間の命より規則が重いのか」という和仁さんの叫びは、現場にいる私たちにも重く突き刺さります。 警察は「組織の論理」で動く巨大な官僚機構です。上意下達は絶対であり、前例や規則は時に法律以上に重んじられます。なぜなら、そうしなければ何万人もの警察官を統率できないという「建前」があるからです。

しかし、そのシステムを守るために、一人の若き警察官の命の尊厳を蹂躙し、遺族の心を二度殺すような真似が許されていいはずがありません。組織を防衛するために真実を黒く塗りつぶす行為は、私たちが日々守ろうとしている「正義」への裏切りそのものです。

3. 「ボケ木戸」という付箋と、加害者の「忘却」という卑怯

裁判で明らかになったA隊員の言動は、指導という言葉にはほど遠い、陰湿ないじめです。 書類に「ボケ木戸」と殴り書きした付箋を貼る。ミスを責め立て、「運転員を辞めろ」と執拗に追い詰める。これらは業務上の指導ではなく、ただの感情の排泄であり、立場を利用したハラスメントです。

大地巡査が遺した遺書の一節、

「あなたの思い描いた通りになって良かったですね」

この言葉に込められた絶望と、せめてもの抵抗を思うと、言葉が出ません。文字が震えていたということは、彼がどれほどの恐怖と無力感の中でペンを握っていたかを示しています。

それに対して、法廷に立ったA隊員の「覚えていない」「分からない」という答弁。 これが、警察官という「事実に実直であるべき人間」の姿でしょうか。自分が追い詰めた人間の命の重さから、記憶を消し去ることで逃げようとする。この不誠実さこそ、パワハラ加害者に共通する最も卑怯な特徴であり、同時に「組織が彼を守ろうとした(あるいは、そうさせてしまった)」ことの証左でもあります。

4. 8年半、700万円、そして健康の喪失という「不条理」

国家や巨大組織を相手に民事訴訟を起こすことが、どれほど過酷なことか。和仁さんが広島から関西へ50回近く通い、700万円もの私財を投じ、精神を病んでうつ病になるまで闘わなければならなかったという事実そのものが、この社会の「不条理」を物語っています。

なぜ、被害者の遺族が、そこまで身を削らなければ事実を認めてもらえないのでしょうか。 証拠はすべて警察の内部にある。組織はそれを隠すことができる。原告側には立証責任がある。この圧倒的な構造の非対称性の中で、和仁さんはまさに命を削って「大地の名誉」のために闘ったのです。老後の蓄えを切り崩してまで闘わざるを得なかった父親の執念には敬服するほかありませんが、同時に、そこまで追い詰めた兵庫県警の姿勢には、同じ警察官として激しい怒りを感じます。

5. 「相談10倍」の欺瞞と、現場に残る「沈黙の壁」

事件後、パワハラ相談件数が10倍に増え、弁護士による講習が行われるようになったといいます。しかし、現場の人間として断言しますが、「数字が増えたこと」と「組織が健全になったこと」はイコールではありません。

相談件数が増えたのは、単に「パワハラ」という言葉が定着し、窓口が形だけ整備されたからに過ぎない可能性があります。 弁護士を呼んで綺麗事の講習を聞かせたところで、現場の「言いたくても言えない雰囲気」や、「上司の機嫌一つで評価が決まる」という人事権を握られた恐怖が変わらなければ、意味がありません。

警察組織には、いまだに「お上の言うことは絶対」「苦労して一人前」「弱音を吐く奴は適性がない」という昭和の精神論が根強く残っています。風通しの良さを阻んでいるのは、制度の有無ではなく、階級社会という絶対的な壁と、それに盲従する「空気」なのです。

6. 因果関係の回避という「不完全な決着」

2023年の大阪高裁での和解。解決金や謝罪、パワハラの認定を勝ち取ったことは、和仁さんの執念の成果です。 しかし、裁判所が「パワハラと自殺の因果関係」への言及を避けたことには、司法の限界と、組織への「配慮」を感じざるを得ません。ここを認めさせてこそ、本当の意味での完全な勝利だったはずです。

それでも、和仁さんが和解に応じた理由が「家族を守るため」であったという事実に、また胸が痛みます。これ以上闘えば、父親の命まで失われてしまう。息子のために闘った父親が、残された家族のためにペンを置く。その無念の決断を、兵庫県警の幹部たちはどう受け止めているのでしょうか。「金で解決した」「これで幕引きだ」などと安堵している幹部が一人でもいるなら、その者は警察官のバッジを外すべきです。

結び:制服を着る私たちが、これからなすべきこと

和仁さんの手元に残された大地巡査の釣り竿。 「父さん母さんのような親になって、楽しい家庭を作りたい」という、ささやかで、誰もが当然のように持っていいはずの未来の希望。それを叩き潰したのは、間違いなく「兵庫県警」という組織の歪みでした。

「兵庫県警には絶対に変わってもらわないと困る。でないと、大地の死が無駄になってしまう」

この言葉を、私たちは遺言として受け止めなければなりません。 組織の論理と個人の尊厳。警察官は、法律を執行し、社会のルールを守らせる立場ですが、それ以前に「一人の人間」です。部下を駒としてしか見ない上司、不祥事を隠蔽しようとする幹部、それを見て見ぬふりをする同僚。それらすべてが、大地巡査を死に追いやった「加害者」の同類です。

私たちは、市民の安全を守る前に、まず目の前にいる仲間の尊厳を守れる組織にならなければなりません。 大地巡査が夢見た「小さな町の駐在さん」が、笑顔で地域の人々と接することができるような、そんな当たり前の優しさと誇りを持てる警察を取り戻すこと。

それだけが、8年半の孤独な闘いを繰り広げたご遺族に対する、私たちの唯一の償いであり、二度とこのような悲劇を繰り返さないための誓いです。私たちは、大地巡査の死を、絶対に忘れてはなりません。

【本編フル動画】

【本編ショート動画】
https://youtube.com/shorts/phQCZ4q3jEshttps://youtube.com/shorts/cgXhMmrrDsI

【本編ショート動画スライド解説版】
https://youtube.com/shorts/n5ag-P_pSHghttps://youtube.com/shorts/TCTfnClPW2Q

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