青森のマドレーヌ
大好物の一つに、青森の「昭和のマドレーヌ」がある。
卵のやさしい香りに、バターの香ばしさ。ほんのり効いた塩気が後を引く。
派手な甘さではない。でも飽きることがなく、気づけば二つ、三つと手が伸びている。
初めて食べたのは、青森出身の義妹が帰省のお土産に持ってきてくれた時だった。
「お気に入りなんです。がっぷり食べてください!」
そう笑って手渡してくれたオレンジ色の包みには、大きくこう書かれていた。
昭和のマドレーヌ。
なんとも潔ましい名前だ。
派手な包装ではないのに、不思議と目を引く。その静かな存在感は、一度見たら忘れられなかった。
美味しいお土産を選んできてくれる義妹には感謝しかない。そして、そのたびに思う。
青森は、なんて食べ物が豊かな土地なのだろう、と。
マドレーヌだけではない。
ホタテも、瓶入りのウニも、りんごも、りんごジュースも、日本酒も、チョコ入り南部せんべいも、フライボールも。
名前は思い出せないけれど、お餅のような保存食まで、どれも「また食べたい」と思わせる味だった。
一緒に帰省した弟が、
「とにかく、ずっと食べてた。」
と話していた。
きっと大げさではないのだろう。
お土産だけで、これほど人を夢中にさせる土地なのだから。
私の胃袋はすっかり掴まれてしまった。
いつか見せてもらった雪景色の写真も、心から離れない。
津軽びいどろの鮮やかな色彩。
ねぶた祭の圧倒的な熱気。
恐山の静けさ。
雪に包まれた街並み。
どれも私にはまだ知らない世界だ。
今夏の一人旅がうまくいったら、来年は青森へ。
そう決めるわけでもなく、昭和のマドレーヌを頬張りながら、静かにそんな未来を思い描いている。
