【植物×アート】#12 ルソーが描いた20世紀最高のフェイク・ジャングル
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渦巻く熱帯植物、隠れた野生動物、光と影の劇的な対比を描いたジャングルの絵で、世界中の人々を魅了したフランスの画家「アンリ・ルソー(Henri Rousseau, 1844–1910)」。
興味深いことに、ルソー自身は生前、若き日にメキシコへ従軍し、そこで熱帯のジャングルを体験したと周囲に語っていました。しかし、後の調査によって、彼の従軍記録には海外派遣のデータが存在しないことが判明します。ルソーの言葉は嘘だったのです。
実のところ、ルソーは生涯、一度もフランスから出国することなく、ジャングルの絵を描き続けていました。自身の虚栄心や神秘的なイメージを保つためについた嘘。その嘘の背景にありながら、彼が実際に足を運んだのは、パリの街中にあるガラス温室だけだったのです。
見たことのない世界を、どうやって「見たかのように」描いたのか。その秘密は、ルソーの自然観察と想像力の間で生まれた「解体と再構成」にあります。
本記事では、ルソーのジャングルシリーズの代表作《突風に驚く虎(熱帯嵐のなかの虎)》《蛇使いの女》《夢》の三点を通じて、「温室という限定された空間」から、20世紀最高のフェイク・ジャングルがいかに誕生したのかを詳しく解説していきます。

【時代背景】19世紀末のパリ万博と、植物園という名の「世界の縮図」

ベル・エポックのパリ:大衆の「異国趣味(エキゾチズム)」の熱狂
アンリ・ルソーが本格的にジャングル・シリーズを手がけ始める19世紀末から20世紀初頭にかけてのパリは、「ベル・エポック(良き時代)」と呼ばれる華やかな文化の絶頂期にありました。
同時に、この時代はフランスが植民地を急速に拡大していた時期でもあり、1878年、1889年、1900年と度重なるパリ万国博覧会の開催によって、市民の間で「未開の地」や「南国」への熱狂的な異国趣味(エキゾチズム)が醸成されていました。
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