ライセンスフリー無線愛好家における呼出名称の用法と市民ラジオ呼出名称構成に関する整理
1.はじめに
本稿において「ライセンスフリー無線愛好家」とは、市民ラジオ、無線電話用特定小電力無線、デジタル小電力コミュニティ無線等の免許不要局に加え、愛好家コミュニティ上の実態に即して、デジタル簡易無線(登録局)を含めて便宜的に扱う概念である。もっとも、制度上は免許不要局と登録局が混在するため、法制度上の区分とは必ずしも一致しない[1]。
こうした愛好家の一部には、1982年以前に郵政省から指定を受けた市民ラジオの呼出名称を、1983年以降(市民ラジオに係る無線局免許制度廃止以降)においても継続して用いている者がいる。他方、それ以外の者については、CB無線が簡易無線であった当時の構成に準じて、いわゆる「地域名+英字(1~2字)+数字(1~4字)」の形式を自称して用いている例がみられる。
本稿の目的は、(1) ライセンスフリー無線愛好家における呼出名称の実務的用法を整理し、(2) 1982年以前に郵政省から指定された市民ラジオの呼出名称の構成について、確認可能な資料に基づき整理することにある。
2.用語の整理:制度上の「識別信号」と趣味運用上の「呼出名称」
法令・制度上、無線局を識別するための概念として「識別信号」があり、無線局運用規則等において無線通信の運用方法との関係で規律されている。たとえば、無線局運用規則には、識別信号の送信に関する規定(長時間継続送信時を含む)が置かれている[2]。
これに対し、ライセンスフリー無線の趣味運用(市民ラジオ、特定小電力無線等)では、制度として国が各局に一意に割り振る呼出符号を前提としない領域が多く、交信実務上は、運用者が自称する「呼出名称」が、相互識別のための便宜的名称(いわゆるハンドル/名札)として発達している。この点については、概説資料においても、ライセンスフリー無線では呼出符号が指定されないため、使用者が簡易無線局時代の形式を参照して自称している旨の説明がみられる(概説レベルの記述として参照)[3]。
3.ライセンスフリー無線愛好家における「呼出名称」の用法(実務・慣習)
趣味運用における呼出名称の使用目的としては、混信環境下で交信相手の識別を安定化させること、交信記録(ログ)作成、呼出し(CQ的運用)やピックアップ・運用地情報共有、イベント運用やロールコール(定時ラウンド)における点呼などが挙げられる。
実務上の慣用としては、「呼出名称(自称)+QTH(運用地)+モード/チャンネル」という形式が広く用いられ、初回のやり取りでは「名乗り→相手局による復唱→以後は適宜短縮」という進行が多い。また、自称呼出名称には法的な一意性保証がないため、近隣・同一エリア内での重複回避への配慮、重複時のQTHや運用者名(ハンドル)の付加、相手局呼出名称の復唱による取り違え防止といった運用上の工夫が行われている。これらは、制度的な一意割当ての代替として成立している慣習的・会話的な識別実務といえる。
4.デジタル簡易無線(登録局)における制度上の識別と趣味運用上の呼出名称
ライセンスフリー無線の愛好家コミュニティでは、デジタル簡易無線(登録局)を含めて一体的に語られることがあるが、制度上は同無線が登録を要する無線局である点に留意を要する。
他方、公的資料(自治体広報資料)において、デジタル簡易無線(登録局)では識別信号を無線機が自動送出し、アマチュア無線のように音声でコールサインを送出する必要はない旨の説明が確認できる[1]。したがって、趣味運用の現場では、制度上の識別(機器側の自動送出)とは別に、相互識別・交信円滑化のため、自称呼出名称を音声で併用する実務が合理的に成立していると整理できる。
5.資料上の制約(市民ラジオ呼出名称の歴史的構成に関する検討)
1982年以前に郵政省から指定された市民ラジオの呼出名称の構成については、公的原本(郵政公報、電波監理局達4-1・4-5の当時原文)を本稿作成時点で直接確認できていない。したがって、1982年以前の全期間を通じた構成を確定的に記述することはできず、この点は不明とせざるを得ない。
以下の記述は、郵政公報(電波関係号外)由来とされる転載資料、および市民ラジオ無線局免許状の実例写真に依拠する整理であり、一次資料原本(法令・達本文)を直接確認した結果ではない点に留意を要する[4]。
6.1974年12月27日以降の市民ラジオ呼出名称に関する転載資料上の記述
転載資料によれば、少なくとも昭和49年(1974年)12月27日以降の市民ラジオについては、呼出名称は「局達4-1第29条の規定により付する免許の番号と同一のもの」とされていた旨が示されている[4]。この記述に従うならば、市民ラジオの呼出名称の構成を把握するためには、同時に示される「免許の番号」の構成を参照する必要がある。
7.「免許の番号」の構成(転載資料ベース)と実例資料
同じ転載資料(昭和50年〔1975年〕8月12日掲載分とされるもの)によれば、市民ラジオの「免許の番号」は、概ね、常置場所の地域別の文字、アルファベット1~2文字、数字(1~100)から構成されるものとして示されている[4]。
常置場所の地域別の文字について、転載資料中の掲載部分では、例として「よこはま」「かわさき」「なごや」のほか、「ひがし」「ひがしよどがわ」「おおさか」「さかい」「ひがしおおさか」「とよなか」「きんき」「こうべ」等が確認できる。また、北海道については支庁の名称、その他の地域については都府県の名称とされる旨の記載がある[4]。なお、転載資料の同箇所には、常置場所の地域別区分として「東京都の区制施行地」が掲げられている[4]。さらに、二次資料上の制度解説では、東京都区部(東京23区)について区名を用いる運用であったとする記述があるが、一次資料原本は未確認である[5]。
アルファベット部分については、転載資料にA–Y、AA–YZ、異動時ZA–ZZ等の区分が示されている[4]。数字部分については1~100を付す旨の記載が確認できる[4]。以上を踏まえると、転載資料ベースでは、少なくとも1974年12月27日以降の市民ラジオの呼出名称は、実質的に「地域別文字+英字(1~2字)+数字(1~100)」の構成に従っていた可能性が高いと解される。
加えて、昭和56年(1981年)1月5日付の市民ラジオ無線局免許状の実例写真(写真4)において、欄見出し「免許の番号・呼出名称」および記載例「トウキョウAA909」が確認できる(画像提供資料)[6]。この実例は、少なくとも個別免許状の運用実務において、呼出名称(免許番号)が「地域名+英字(2字)+数字(3桁)」の形式で記載され得たことを示す資料的根拠となる。あわせて、同免許状上には、無線局の種別「簡易無線局」、通信の相手方「簡易無線局(市民ラジオ)」、電波の型式「A3」、周波数(27MHz帯各チャネル)、空中線電力0.5W、発給者「関東電波監理局長」等の記載が確認でき、市民ラジオが当時、簡易無線局として免許対象であったことを示す実物資料として位置づけられる(写真4参照)[6]。ただし、当該写真資料は個別事例であり、呼出名称構成の一般規則そのものを定める法令・達の原文ではないため、制度全体への一般化にはなお慎重を要する。

8.結論
本稿で確認できた範囲では、1982年以前に郵政省から指定された市民ラジオの呼出名称の構成について、公的原本に基づく全期間の確定的記述はできず、不明である。
他方、郵政公報由来とされる転載資料に基づく限り、少なくとも1974年12月27日以降については、呼出名称は「免許の番号」と同一とされ、その実質的構成は「地域別文字+英字(1~2字)+数字(1~100)」であった可能性が高い[4]。さらに、昭和56年(1981年)の個別免許状実例(「トウキョウAA909」)は、この種の構成が実務上用いられていたことを示す補強資料となる(写真4参照)[6]。ただし、1982年以前の全期間に同一構成が適用されていたか否か、ならびに1982年時点における変更の有無については、いずれも一次資料原本未確認のため不明である[4]。
また、ライセンスフリー無線愛好家における呼出名称は、制度上の識別信号とは別に、交信実務上の相互識別・運用円滑化のための便宜的名称として機能していると整理できる。デジタル簡易無線(登録局)のように制度上の識別送出が機器側で実装される無線種別においても、趣味運用の現場では、音声による自称呼出名称の併用が実務的機能を有している[1]。
脚注
[1] 大阪府「デジタル簡易無線(登録局)の利用が便利です。」(デジタル簡易無線〔登録局〕の制度説明、および識別信号の自動送出に関する説明)。
[2] e-Gov法令検索「無線局運用規則」(識別信号送信に関する規定参照。例:第30条)。
[3] Wikipedia「ライセンスフリーラジオ」および関連項目(概説レベルの参照)。
[4] CIC(Seesaaブログ)「市民ラジオの免許の番号」(昭和49年12月27日付郵政公報〔電波関係号外第20号〕および昭和50年8月12日付掲載分とされる転載資料を含む)。※一次資料原本未確認。
[5] Citizens Radio Web「市民ラジオの呼出名称」(制度史・世代区分の整理に関する参考資料)。※東京都区部の区名運用に関する記述は二次資料上の説明として参照。
[6] 市民ラジオ無線局免許状実例写真(昭和56年1月5日付、画像提供資料)。欄見出し「免許の番号・呼出名称」および記載例「トウキョウAA909」を確認(写真4)。
