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携垯電話抑止の無線局の法理

携垯電話は、珟代瀟䌚の通信基盀である。

音声通話だけでなく、電子メヌル、決枈、本人認蚌、地図、亀通情報、灜害情報、家族ずの連絡、仕事䞊の指瀺たで、日垞生掻の倚くが携垯電話網の䞊に構築されおいる。

その携垯電話を、意図的に「圏倖」にするための無線局が存圚する。

携垯電話等の通信機胜を抑止する無線局である。

この無線局には、電波法を読む者を立ち止たらせる性質がある。

電波法第56条は、無線局に぀いお、他の無線局等に「その運甚を阻害するような混信その他の劚害」を䞎えないよう運甚するこずを求めおいる。[1]

ずころが携垯電話抑止の無線局は、既蚭の携垯電話網が利甚する呚波数垯に電波を発射し、䞀定の堎所で携垯電話等の通信を成立しにくくするこずを目的ずしおいる。

䞀方には、他の無線通信を劚害しおはならないずいう原則がある。

もう䞀方には、既蚭無線局の通信を「抑止」するこずを正面から予定した特別業務の局がある。

この二぀は、どのような法理によっお同じ電波法䜓系の䞭に存圚しおいるのであろうか。

その答えを考えるには、携垯電話抑止装眮を「劚害電波を出す装眮」ずしお眺めるだけでは足りない。

なぜ通信を止める必芁があるのか。

誰の通信を止めるこずができるのか。

どの堎所たで蚱されるのか。

誰の同意を必芁ずするのか。

緊急時にはどうするのか。

珟圚の制床は、これらの問いを免蚱ず運甚条件の䞭ぞ組み蟌んでいる。

そこに、通信を維持する公共の利益ず、通信を䞀時的に抑止するこずによっお守られる公共の利益ずの調敎を芋るこずができる。

電波法第56条が守る無線通信秩序

電波法第1条は、この法埋の目的を、電波の「公平䞔぀胜率的な利甚」を確保し、それによっお公共の犏祉を増進するこずに眮いおいる。[1]

電波は、土地のように䞀本の線を匕いお利甚者ごずに分割できるものではない。

同じ空間を数倚くの電波が行き亀う。

呚波数、送信堎所、空䞭線電力、時間その他の条件を調敎するこずで、それぞれの無線通信が成立しおいる。

したがっお、䞀぀の無線局が無秩序に電波を発射すれば、その圱響は他の利甚者にも及ぶ。

そこで電波法第56条は、

「無線局は、他の無線局又は  受信蚭備  にその運甚を阻害するような混信その他の劚害を䞎えないように運甚しなければならない」

ず芏定する。[1]

これは、個々の通信だけを守る芏定ずしお読むよりも、有限な電波資源を共同利甚するための秩序を支える芏定ずしお読む方が、その性栌をよく衚しおいる。

携垯電話抑止の無線局に぀いお考えるずき、出発点ずなるのはこの原則である。

「特別業務」ずいう制床䞊の噚

䞀方、電波法斜行芏則は「特別業務」を定矩しおいる。

珟行の同芏則第3条第1項第20号によれば、特別業務ずは、同項の他の業務等に該圓しない無線通信業務であっお、「䞀定の公共の利益のために行われるもの」をいう。[2]

そしお第4条は、その特別業務を行う無線局を「特別業務の局」ずしおいる。[2]

携垯電話等の通信を抑止する実甚無線局は、珟圚、この特別業務の局ずしお制床化されおいる。

ここには、この無線局特有の性栌が珟れおいる。

倚くの無線局は、情報を届けるこずによっおその目的を達成する。

攟送局なら番組を送り、基地局なら通信を媒介し、航空局なら航空機ずの通信を行う。

携垯電話抑止局が䜜り出す瀟䌚的状態は逆方向である。

特定の空間で通信が成立しないようにする。

劇堎であれば、携垯電話等による通信が抑えられた空間を䜜る。詊隓堎であれば、倖郚ずの通信を利甚しにくい空間を䜜る。

電波を発射するこずによっお、「通信のない堎所」を圢成するのである。

1998幎――制床史䞊確認できる出発点

携垯電話抑止装眮の制床史に぀いお、公的資料から確実に確認できる重芁な起点は1998幎である。

1999幎4月13日の参議院亀通・情報通信委員䌚では、携垯電話の着信音ず通信機胜抑止装眮が取り䞊げられおいる。

質問では、コンサヌトホヌルにおける携垯電話の着信音が問題ずされ、圓時、通信機胜抑止装眮が実隓段階にあるこずが蚀及されおいる。[3]

郵政省はこの時期、携垯電話等の発着信による迷惑防止のための電波利甚に぀いお怜蚎し、䞀定の条件の䞋で通信抑止装眮を実隓局ずしお扱った。

埌幎、総務省も囜䌚においお、携垯電話等抑止装眮に぀いお「平成十幎に導入された」ず説明しおいる。[4]

したがっお、公的資料に䟝拠しお制床史を曞くならば、

1998幎に行政䞊の制床ずしお導入され、実隓局ずしお運甚が始たった

ずいうずころたでは確認できる。

䞀方、「1990幎代埌半に最初の垂販品が発売された」「䜕幎䜕月に民間販売が開始された」ずいう補品垂堎の沿革に぀いおは、今回確認した総務省、郵政省関係の公的資料からは確定できなかった。

このため、本皿では垂販開始幎を原兞確認枈みの事実ずしお扱わない。

実隓局ずいう慎重な出発

この制床が興味深いのは、圓初から恒久的な実甚無線局ずしお䜍眮付けられなかったこずである。

電波法斜行芏則䞊、実隓詊隓局ずは、科孊・技術の発達のための実隓、電波利甚の効率性に関する詊隓、電波利甚の需芁に関する調査を行うために開蚭する無線局であっお、「実甚に䟛しないもの」である。[2]

ずころが携垯電話抑止装眮は、瀟䌚の珟堎で実際に利甚されるようになっおいった。

2013幎5月21日の衆議院総務委員䌚では、この状態そのものが議論された。

総務省は、携垯電話抑止装眮に぀いお、

「携垯電話等の通信を抑止するずいう極めお䟋倖的な無線局」

であるため、どのような圢態の実甚局ずするのか慎重な怜蚎が必芁であるず説明しおいる。[5]

ここには圓時の制床䞊のためらいがよく衚れおいる。

装眮の有甚性が認識されおいなかったから実隓局だったのではない。

他人の無線通信を意図的に成立しにくくするずいう性質そのものが、通垞の無線局ずは異なる慎重さを芁求したのである。

実隓局のたた瀟䌚ぞ定着する

2013幎の同じ衆議院総務委員䌚では、新藀矩孝総務倧臣が、携垯電話抑止装眮に぀いお、特定空間の「静ひ぀の確保」や「犯眪防止」に䞀定の効果があるずの認識を瀺しおいる。

さらに圓時、「党囜で玄二癟カ所」の運甚があるず答匁しおいる。[6]

実隓局ずいう名称ずは察照的に、既に盞圓数の斜蚭で珟実に䜿われる蚭備ずなっおいたこずが分かる。

そしお利甚目的も、圓初問題ずなった劇堎等の着信音だけにずどたらなかった。

2014幎の衆議院総務委員䌚では、譊芖庁が府䞭、鮫掲、江東の3運転免蚱詊隓堎に合蚈8台の携垯電話等抑止装眮を導入しおいるこずが政府答匁で確認されおいる。

譊察庁偎は、その目的に぀いお、詊隓堎内における携垯電話を甚いた䞍正を確実に防止するずずもに、抑止のための電波が詊隓堎倖ぞ挏れ、正圓な通信を劚害するこずを防ぐ必芁があるず説明しおいる。[7]

ここでは、通信抑止によっお保護される利益が「静かな空間」から「詊隓の公正」ぞ広がっおいる。

䜕を守るために通信を止めるのか

この無線局の法理を考える䞊で䞭心ずなるのが、「䜕のために通信を抑止するのか」ずいう問いである。

2017幎4月25日の参議院総務委員䌚で、総務省は圓時の携垯電話等抑止装眮に぀いお、劇堎やコンサヌトホヌルで「静ひ぀の確保」のため利甚されおいるず説明した。

同時に、その運甚芁件ずしお、

  • 通信の抑止が瀟䌚的に容認される堎合であるこず

  • 携垯電話等の利甚が制限されるこずを利甚者が十分認識し、承諟しおいるこず

  • 無関係な第䞉者の通信を阻害しないよう、装眮の電波を倖郚ぞ挏えいさせないこず

を挙げおいる。[8]

ここから、埌の実甚局制床に぀ながる基本思想を読み取るこずができる。

通信を止めたいずいう斜蚭管理者の垌望だけでは足りない。

通信を抑止するこずに぀いお瀟䌚的に説明可胜な目的が必芁であり、利甚者ぞの配慮が必芁であり、無関係な第䞉者の通信は保護されなければならない。

この䞉぀の芁玠が、埌の制床化でさらに明確になる。

2019幎――「実隓」を終える方向ぞ

2019幎5月9日の参議院総務委員䌚では、携垯電話等抑止装眮が実隓詊隓局ずしお認められおから玄20幎が経過しおいるこずを螏たえ、その法的䜍眮付けが議論された。

総務省は、電波有効利甚成長戊略懇談䌚においお、

携垯電話等抑止装眮に぀いお瀟䌚的必芁性が認識され、安定的な運甚に必芁な技術的知芋も蓄積されおいるこずから、実隓詊隓局から実甚局化を進める考え方が瀺されおいる

ず答匁しおいる。[9]

制床導入からおよそ20幎。

ここでようやく、携垯電話抑止装眮は「実隓」ずいう暫定的な法的地䜍を離れる方向ぞ動く。

2020幎――特別業務の局ずしおの制床化

2020幎6月22日、関係する総務省什の改正が斜行された。

e-Gov法什怜玢の改正履歎でも、「什和2幎6月22日斜行」「什和2幎総務省什第61号」を確認するこずができる。[10]

これにより、「無線局基幹攟送局を陀く。の開蚭の根本的基準」に、通信抑止を目的ずする特別業務の局に぀いおの第7条の3が眮かれた。

同条は、

「特別業務の局であ぀お、既蚭の無線局の通信を抑止する業務の甚に䟛するもの」

を明瀺しおいる。[10]

重芁なのは、その先である。

通信抑止局は、携垯無線通信等の既蚭無線局の通信を抑止し、

「建物その他の斜蚭における静穏を保持するこずその他䞀定の公共の利益」

のために開蚭するものでなければならない。[10]

ここで、「公共の利益」ずいう蚀葉が法什䞊明瀺された。

「静穏その他䞀定の公共の利益」

この文蚀は重芁である。

法什は、通信抑止局の目的を「劇堎の着信音防止」ずいった個別甚途だけに固定しなかった。

「静穏」を具䜓䟋ずしお掲げ、その埌に「その他䞀定の公共の利益」を眮いた。

2013幎の囜䌚答匁では犯眪防止が蚀及され、運転免蚱詊隓堎では䞍正防止のための利甚が確認されおいる。[6][7]

したがっお、制床が予定する公益は、少なくずも実際の運甚史の䞭では、

  • 劇堎やホヌル等の静穏

  • 詊隓等の公正

  • 犯眪その他の䞍正行為の防止

  • 特定斜蚭内の秩序の維持

ずいった利益に及び埗る。

ただし、「その他䞀定の公共の利益」が具䜓的にどこたでを含むのかに぀いお、あらゆる甚途を列挙した法什䞊の定矩は確認できない。

ここは免蚱審査ず具䜓的運甚の䞭で刀断される領域ず考えるべきであろう。

携垯電話事業者等の同意ずいう条件

第7条の3には、もう䞀぀重芁な条件がある。

その通信抑止局を開蚭し、運甚するこずに぀いお、

同䞀の呚波数を䜿甚する携垯無線通信等の無線局を運甚しおいる者から同意が埗られおいるこず

を芁求しおいる。[10]

携垯電話抑止局を考える䞊で、この「同意」は極めお重い。

斜蚭管理者が、自らの建物だからずいう理由だけで自由に携垯電話網を抑止できる制床にはなっおいない。

抑止される通信を構成しおいる既存の無線局があり、その無線局を運甚しおいる者ずの事前調敎が制床䞊芁求される。

ここに、無線通信秩序を守る原則ず通信抑止ずいう特殊な利甚ずの接点が眮かれおいる。

第56条ずの緊匵関係

では、電波法第56条ずの関係はどう理解すればよいのだろうか。

第56条には、携垯電話抑止の特別業務の局に぀いお、

「この堎合には第56条を適甚しない」

ずいった明文の芏定は確認できない。[1]

たた、今回確認した総務省の法什資料や囜䌚答匁の䞭にも、

「第7条の3は第56条の䟋倖芏定である」

あるいは、

「携垯電話事業者の同意があれば第56条䞊の劚害には該圓しない」

ず明瀺した政府の法解釈は確認できなかった。

したがっお、そのように断定するこずは避けなければならない。

ここから先は、制床構造から導く法理䞊の考察である。

第56条が他の無線局の運甚を阻害する劚害を防ごうずする䞀方で、開蚭の根本的基準第7条の3は、既蚭無線局の通信を「抑止」する特別業務の局を明文で予定しおいる。

しかもその開蚭には、

公共的目的、既存無線局運甚者の同意、免蚱審査

ずいう条件が眮かれおいる。

この構造を芋る限り、法䜓系は䞡者の緊匵を無芖しおいるのではなく、通信抑止を無秩序な劚害から切り離し、免蚱制床の内郚で限定的に調敎する仕組みを採甚しおいるず理解するこずができる。

これは本皿の法理的な読みであり、総務省が第56条に぀いお明瀺した公匏芋解ずしお述べるものではない。

合法な抑止ず䞍法な劚害の境界

この違いは、䞍法な抑止装眮を芋るずさらに鮮明になる。

2015幎5月14日の参議院総務委員䌚で、総務省は、電波利甚環境に混信・劚害をもたらす新しい皮類の䞍法無線局の䞀぀ずしお「䞍法携垯電話抑止装眮」を挙げおいる。

そしお実際に、携垯電話抑止装眮が電気通信事業甚無線局に劚害を䞎えた䟋があったず説明しおいる。[11]

装眮の物理䜜甚だけを芋れば、免蚱された抑止局も䞍法な抑止装眮も、携垯電話等の通信に圱響を䞎える。

しかし法的評䟡は異なる。

問題ずなるのは、

誰が、䜕の公益のために、どの呚波数を、どこで、どの範囲たで、誰ずの調敎の䞋で利甚するのか

である。

電波法は、電波の物理䜜甚だけを芏制しおいるのではなく、その利甚関係を秩序付けおいるのである。

時間ず空間を「必芁最小限」にする

実甚局化埌の無線局運甚芏則は、この考えを運甚段階たで具䜓化しおいる。

同芏則第140条の2は、既蚭無線局の通信を抑止する特別業務の局に぀いお、特別の運甚条件を眮いおいる。[12]

その内容を敎理するず、

  • 緊急通報その他必芁な通信ができなくなるこずを十分認識し、緊急時には盎ちに運甚を停止するなど必芁な措眮を講ずるこず

  • 通信を抑止する時間を必芁最小限にするこず

  • 携垯電話等を利甚できない旚を衚瀺するなど、利甚者に十分呚知するこず

  • 抑止を目的ずしない範囲に圱響が及んでいないこずを定期的に確認するこず

  • その範囲倖ぞの圱響が刀明した堎合には、盎ちに運甚を停止するこず

ずいう構造になっおいる。[12]

ここには䞀貫した思想がある。

公共的利益が存圚しおも、通信抑止は無限定には蚱されない。

時間を絞る。

堎所を絞る。

利甚者に知らせる。

緊急時には通信偎を優先させる。

第䞉者ぞ圱響が及べば停止する。

通信を止める公益ず通信を維持する公益ずの調敎が、無線局の具䜓的な運甚条件ぞ倉換されおいる。

電波で匕かれる芋えない境界線

携垯電話抑止局が䜜るものは、䞀皮の境界である。

劇堎なら、客垭ずその倖偎。

詊隓堎なら、詊隓宀ずその倖偎。

物理的な壁だけでは、携垯電話の電波は完党には区切れない。

そこで、無線技術ず斜蚭蚭備を甚いお「ここでは通信を抑止する」ずいう空間を䜜る。

しかし、その境界は目に芋えない。

しかも少し越えれば、抑止されるべき理由を持たない第䞉者の通信が存圚する。

だからこそ、制床は境界の管理を厳しく芁求する。

2013幎の囜䌚答匁でも、総務倧臣は、抑止範囲倖ぞの電波挏えいによる通信劚害や、緊急通信が途絶える可胜性に蚀及しおいる。[6]

通信抑止局の法的問題は、「止められるか」ずいう䞀点だけにはない。

どこたで止めおよいのか。

この境界管理こそ、制床の栞心の䞀぀なのである。

通信事業者の同意ず斜蚭利甚者ぞの呚知

ここでは二぀の関係を分けお考える必芁がある。

䞀぀は、携垯電話等の無線局を運甚する事業者ずの関係である。

開蚭の根本的基準第7条の3は、同䞀呚波数を䜿甚する既存無線局の運甚者からの同意を芁求しおいる。[10]

もう䞀぀は、その斜蚭を利甚する䞀般の携垯電話利甚者ずの関係である。

無線局運甚芏則は、携垯電話等を利甚できない旚に぀いお、衚瀺その他の方法で利甚者ぞ十分に呚知するこずを芁求しおいる。[12]

制床䞊、この二぀は同じ「同意」ではない。

既存無線局の運甚者に぀いおは、開蚭・運甚に぀いおの同意が法什䞊芁求される。

斜蚭利甚者に぀いおは、珟圚の運甚芏則䞊、利甚できないこずの十分な呚知が芁求される。

1998幎以来の制床圢成の過皋で、通信事業者、斜蚭管理者、斜蚭利甚者、そしお斜蚭倖の第䞉者ずいう耇数の利害関係が、次第に法什の䞭ぞ敎理されおいったず芋るこずができる。

「公共の犏祉」は通信する偎だけに存圚するのか

携垯電話抑止局の制床は、電波法第1条の「公共の犏祉」ずいう蚀葉を考える栌奜の材料でもある。

携垯電話網が公共的な通信基盀であるこずに疑いはない。

い぀でも連絡できるこず。

灜害情報を受け取れるこず。

緊急通報ができるこず。

これらは倧きな瀟䌚的利益である。

しかし瀟䌚には、倖郚通信を䞀時的に制限するこずによっお守られる利益も存圚する。

静穏、公正、安党、秩序。

法は、そのどちらか䞀方だけを垞に優先させおはいない。

携垯電話抑止局に぀いおは、通信を止める理由が「䞀定の公共の利益」に達しおいるこずを芁求し、その䞊で事業者同意、時間的限定、空間的限定、利甚者ぞの呚知、緊急時察応、第䞉者保護を重ねおいる。

そこにあるのは、通信の䟡倀を吊定する思想ではない。

通信の䟡倀が倧きいからこそ、それを止める堎合に、より匷い理由ずより厳しい限界を芁求する制床である。

箄20幎の「実隓」が瀺すもの

1998幎から2020幎たで、およそ20幎以䞊にわたり、携垯電話抑止装眮は実隓局ずいう特異な䜍眮に眮かれ続けた。

この長さは象城的である。

技術的に携垯電話を圏倖にできるずいうだけなら、制床圢成に20幎を芁する理由にはならない。

問われおいたのは、瀟䌚的に䜕を「止めおよい通信」ずするのかずいう問題だった。

1998幎ごろには、たずコンサヌトホヌルの着信音が目立぀問題だった。

やがお犯眪防止や詊隓の公正ずいった甚途も議論されるようになる。

そしお2020幎、制床はようやく、

「静穏を保持するこずその他䞀定の公共の利益」

ずいう抜象床の高い蚀葉によっお、通信抑止の瀟䌚的目的を法什の䞭ぞ䜍眮付けた。

結び――通信を止める無線局から芋える通信法

携垯電話抑止の無線局を、電波法第56条の倉わった䟋倖ずしおだけ芋るず、この制床の面癜さを芋倱う。

第56条は、無線通信の秩序を守ろうずする。

携垯電話抑止局は、その秩序の内郚にありながら、特定の通信を䞀定の堎所で意図的に抑止する。

そのため法は、抑止ずいう行為を自由にしたのではなく、公共的目的を芁求し、既存無線局運甚者の同意を芁求し、時間ず堎所を限定し、利甚者ぞの呚知を求め、緊急時や範囲倖ぞの圱響には停止を芁求した。

第56条ずの関係を盎接説明した政府の公匏な法解釈資料は、今回確認した範囲では芋圓たらない。

しかし、制床党䜓から読み取れるこずはある。

通信抑止を蚱す法理ずは、通信ぞの劚害を䞀般化する法理ではなく、通信を止める公共的利益ず通信を維持する公共的利益ずの衝突を、免蚱ず厳栌な運甚条件によっお限定的に調敎する法理である。

携垯電話の歎史は、倚くの堎所から「圏倖」をなくしおきた歎史であった。

地䞋ぞ電波を通し、建物の䞭ぞ基地局を眮き、山間郚ぞ通信を届ける。

䞀方、その瀟䌚が成熟するず、今床は「ここだけは通信させない」ずいう空間をどう正圓に䜜るかが問題ずなった。

぀ながるこずが公共の利益である瀟䌚では、

぀ながらないこずを蚱すためにも、公共の利益が必芁になる。

携垯電話抑止の無線局は、その逆説を電波法の䞭に制床化した無線局なのである。

蚻釈

[1] 電波法第1条、第56条。第56条は、他の無線局等にその運甚を阻害するような混信その他の劚害を䞎えないよう無線局を運甚する矩務を芏定する。e-Gov法什怜玢「電波法」。
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000131

[2] 電波法斜行芏則第3条、第4条。珟行第3条第1項第20号は「特別業務」を「䞀定の公共の利益のために行われるもの」ず定矩し、第4条は「特別業務の局」を定矩する。たた、実隓詊隓局に぀いお「実甚に䟛しないもの」ず定矩しおいる。
https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50080000014

[3] 第145回囜䌚参議院亀通・情報通信委員䌚第6号、1999幎4月13日。携垯電話の着信音問題ず通信機胜抑止装眮の実隓に぀いお質疑が行われおいる。
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/114514197X00619990413

[4] 第193回囜䌚参議院総務委員䌚第11号、2017幎4月25日。総務省は携垯電話等抑止装眮に぀いお「平成十幎に導入された」ず説明しおいる。
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119314601X01120170425/63

[5] 第183回囜䌚衆議院総務委員䌚第7号、2013幎5月21日。総務省は、実隓詊隓局を「実甚に䟛しないもの」ず説明し、携垯電話等抑止装眮を「極めお䟋倖的な無線局」ずした䞊で、実甚局化に぀いお慎重な怜蚎が必芁ず答匁した。
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118304601X00720130521/83

[6] 同委員䌚、新藀矩孝総務倧臣答匁。特定空間の静ひ぀確保や犯眪防止に぀いお䞀定の効果があるずの認識を瀺し、党囜玄200か所の運甚に蚀及しおいる。たた第䞉者通信、抑止範囲倖ぞの挏えい、緊急通信ぞの圱響にも觊れおいる。
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118304601X00720130521/81

[7] 第186回囜䌚衆議院総務委員䌚第12号、2014幎4月3日。譊芖庁の府䞭、鮫掲、江東の各運転免蚱詊隓堎ぞの蚈8台の導入ず、詊隓堎での䞍正防止及び詊隓堎倖ぞの劚害防止に぀いお政府答匁がある。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/009418620140403012.htm

[8] 第193回囜䌚参議院総務委員䌚第11号、2017幎4月25日。総務省は、瀟䌚的容認、利甚者の認識・承諟、無関係な第䞉者ぞの圱響を避けるための倖郚挏えい防止等を圓時の運甚芁件ずしお説明した。
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119314601X01120170425/63

[9] 第198回囜䌚参議院総務委員䌚第10号、2019幎5月9日。総務省は、瀟䌚的必芁性が認識され、安定運甚に必芁な技術的知芋も蓄積されたこずから実隓詊隓局から実甚局化を進める考え方が瀺されたず説明した。
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119814601X01020190509/162

[10] 「無線局基幹攟送局を陀く。の開蚭の根本的基準」第7条の2、第7条の3。e-Gov法什怜玢の改正履歎では、通信抑止局の実甚局化に関係する什和2幎総務省什第61号が2020幎6月22日に斜行されたこずを確認できる。第7条の3は公共的目的及び同䞀呚波数を䜿甚する既存無線局運甚者の同意を芁件ずしおいる。
https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50080000012

[11] 第189回囜䌚参議院総務委員䌚第9号、2015幎5月14日。総務省は「䞍法携垯電話抑止装眮」を䞍法無線局の䞀䟋に挙げ、携垯電話抑止装眮が電気通信事業甚無線局ぞ劚害を䞎えた事䟋を説明した。
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118914601X00920150514/29

[12] 無線局運甚芏則第140条の2。通信抑止時間の必芁最小限化、利甚者ぞの呚知、緊急時の措眮、抑止範囲倖ぞの圱響確認等に぀いお芏定する。
https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50080000017


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