無線局における送信電力の規制方法
――空中線電力を中心とした規制点と実定法上の構造
1. 「何Wまでか」では法令は読めない
無線機の送信電力について話すとき、私たちは数字から入りやすい。
10 mW、100 mW、1 W、100 W。
しかし、法令上の送信電力は、数字だけでは意味が決まらない。
同じ100 mWでも、機器が電源から受け取る電力なのか、送信機の最終RF段へ供給される電力なのか、送信機から空中線系へ送り出されるRF電力なのかによって、その意味は異なる。
さらに空中線の方向特性まで評価に取り込めば、Effective Radiated Power(実効輻射電力、ERP)やEquivalent Isotropically Radiated Power(等価等方輻射電力、EIRP)となる。もっと空間側へ進めば、一定距離における電界強度そのものを基準とする制度もある。
したがって、送信電力規制を読むときの最初の問いは、
「何Wまでか」ではなく、「何の電力が何Wなのか」
でなければならない。
送信設備におけるエネルギーの流れを単純化すれば、
電源入力
→ 最終RF段入力
→ RFへの変換
→ 空中線電力
→ 給電系
→ 空中線
→ ERP/EIRP
→ 空間伝搬
→ 電界強度
となる。
物理現象としては一続きである。しかし法令は、その途中のどこかに基準を置き、そこで得られる物理量に上限その他の条件を定める。
本稿では、この位置を説明するため、便宜上**「規制点」**と呼ぶことにする。「規制点」は本稿の分析上の言葉であり、電波法令上の定義語ではない。
規制点を上流に置くか、下流に置くかには、それぞれ特徴がある。
電源入力や終段入力のような上流の量は、装置内部で把握しやすく、測定・管理も比較的簡便である。その反面、その後に増幅器の変換効率、給電系の損失、空中線の方向特性などが介在するため、実際の輻射状態からは遠い。
一方、ERPやEIRP、さらに電界強度へ進むほど、実際に空間へどのような電波が送り出されたかという結果に近づく。その反面、評価に介在する技術的要因は増えていく。
つまり送信電力規制には、
上流ほど測定・管理しやすい。
下流ほど実際の輻射状態に近い。
という一つの軸がある。
日本法において、その中間に位置する重要な概念が空中線電力である。
2. 日本法の中心概念――「空中線電力」とは何か
電波法第54条は、無線局を運用する場合の空中線電力について規律を置いている。[1]
では、この「空中線電力」とは、送信設備のどこの電力なのだろうか。
電波法施行規則第2条第1項第68号は、空中線電力を、尖頭電力、平均電力、搬送波電力または規格電力の総称として定義している。
さらに尖頭電力、平均電力、搬送波電力の各定義では、基本となる位置として**「送信機から空中線系の給電線に供給される電力」**が示されている。[2] 現行e-Govでもこの文言を確認できる。
技術的な位置関係を理解するために言い換えれば、おおむね、
送信機のアンテナ端子側から空中線系へ送り出されるRF電力
と考えると分かりやすい。
ただし、これは法令の逐語的な定義ではない。空中線電力には「規格電力」も含まれるため、
空中線電力=アンテナ端子で直接実測したRF電力
と完全な等号を置くのは適切ではない。
また、「空中線電力」という名称から、空中線から空中へ実際に放射された電力を想像してはいけない。
空中線電力の先には給電系があり、そこには損失があり得る。その先には空中線があり、そこには方向特性がある。
したがって、
電源入力
最終RF段入力
空中線電力
空中線そのものへの入力電力
ERP/EIRP
は、それぞれ区別して考える必要がある。
さらに、「何を規制するか」と「その値をどう求めるか」も別の問題である。
無線設備規則第13条は、
「無線設備の空中線電力の測定及び算出方法は、告示する。」
と定めている。[3] 現行e-Govでも確認できる。
ここで「測定」だけでなく「算出」とされている点が重要である。
規制対象となる物理量が空中線電力であっても、その値を常にその位置で直接測定するとは限らない。別の電気量を測定し、所定の方法によって空中線電力を算出する場合もある。
つまり、
規制される物理量と、その値を認定するために測定する物理量とは一致するとは限らない。
空中線電力の測定・算出方法に関する告示として、昭和34年9月19日郵政省告示第683号がある。[4]
3. 空中線電力より上流――電源入力と終段入力
空中線電力より上流にも、複数の「電力」がある。
その違いを明瞭に示す例が、Federal Communications Commission(連邦通信委員会、FCC)のPart 15にある。
47 CFR §15.235(c)(2)は、49.82~49.90 MHzで動作する一定のhome-built intentional radiator(自作意図的放射機器)について、
機器への総入力電力を、電池端子または電源線端子で測定して100 mW以下
としている。[5]
ここで規制している100 mWはRF出力ではない。機器が電源から受け取る総電力である。現行eCFRも、測定位置をbattery or power line terminalsと明記している。
一方、47 CFR §15.219(a)は510~1705 kHzについて、
最終RF段への総入力電力を100 mW以下
としている。[5]
こちらは機器全体への電源入力ではない。また、フィラメントまたはヒーター電力は除外されている。
したがって、
機器全体への電源入力 100 mW
と、
最終RF段への入力 100 mW
は、数字こそ同じでも規制している位置が違う。
さらに、最終RF段へ100 mWが供給されたとしても、その100 mW全部がRF出力になるわけではない。増幅段には損失があり、RFへの変換効率は100 %とは限らないからである。
日本の電波法施行規則にも「終段陽極入力」という概念があり、無変調時に終段真空管へ供給される直流陽極電圧と直流陽極電流との積として定義されている。[2]
ここで重要なのは真空管という素子そのものではない。
終段入力は、RF出力になる前の上流側の量である。
上流の量には、測定・管理の簡便さがある。
電源端子なら電圧と電流を測ることができる。終段入力も装置内部の電気量として把握しやすい。
しかし、そこから実際の輻射までには、
RFへの変換効率
給電系損失
空中線特性
が残っている。
したがって上流の電力値は測定・管理には便利でも、その数字だけから実際の輻射能力を直接読み取ることはできない。
4. 空中線電力の先――空中線利得は増幅率ではない
空中線電力から下流へ進むと、空中線が現れる。
そして、ここで空中線利得という別の量が加わる。
電波法施行規則第2条は、空中線の利得を基準空中線との比較によって定義している。絶対利得は等方性空中線を基準とし、相対利得は半波無損失ダイポールを基準とする。[2]
技術上、絶対利得は一般にdBi、相対利得はdBdで表す。
ここで注意したい。
空中線利得は、増幅器の電力増幅率ではない。
たとえば、
絶対利得10 dBiの空中線へ20 Wを供給したからといって、空中線内部で200 Wの電力が作られるわけではない。
10 dBiは、等方性空中線を基準とした利得であり、電力比にすれば10倍に相当する。
したがって、給電損失を無視すれば、その空中線の最大放射方向については200 WのEIRPに相当する。
しかし、実際に空中線へ供給されている電力は20 Wである。
200 Wという値は、等方性空中線を使って同じ方向に同じ放射効果を得ようとすれば200 Wが必要になる、という相当電力を表している。
空中線が20 Wを200 Wへ増幅したわけではない。
この点は、前稿「究極のQRPp/QRSS/DX――ボイジャーとの通信」で扱った例にもつながる。[6]
前稿の第4節「22Wは宇宙を越えるか――アンテナ利得の力」では、ボイジャーの20 W級の送信電力と、Xバンドで約48 dBiという高利得アンテナを取り上げ、等方放射換算の相当電力を考えた。
今回の観点から分解すれば、
20 Wは電力である。
48 dBiは絶対利得である。
両者は同じ種類の量ではない。
前稿で「送信電力にアンテナ利得を加える」と表現した場合の「加える」は、対数表示上の計算を意味する。
空中線が電力を増幅しているわけではない。
では、空中線へ与えた電力と、その方向特性を組み合わせた結果を、電力としてどのように表すのか。
そこでERPとEIRPが登場する。
5. ERP・EIRP――実際の輻射能力に一歩近づく
電波法施行規則第2条第1項第78号は、実効輻射電力を、
空中線に供給される電力に、与えられた方向における空中線の相対利得を乗じたもの
と定義する。
第78号の2の等価等方輻射電力は、
空中線に供給される電力に、与えられた方向における空中線の絶対利得を乗じたもの
である。[2]
前者がERP、後者がEIRPである。
概念的には、
ERP = 空中線への入力電力 × 相対利得
EIRP = 空中線への入力電力 × 絶対利得
となる。
ここで「空中線への入力電力」としたことに注意したい。
日本法上の空中線電力は、送信機から空中線系の給電線へ供給される側の電力である。送信機と空中線との間に給電損失があれば、その損失を考慮しなければならない。
対数表示なら、
ERP[dBm]
= 空中線電力[dBm]-給電系損失[dB]+相対利得[dBd]
EIRP[dBm]
= 空中線電力[dBm]-給電系損失[dB]+絶対利得[dBi]
と整理できる。
ERPやEIRPは、空中線電力よりも下流の情報を含んでいる。
空中線電力だけでは分からなかった空中線の方向特性まで評価に取り込むからである。
ただし、ERPやEIRPは「空中線からそのワット数の実電力が新たに生じた」という意味ではない。
ある方向について、基準空中線ならどれほどの入力電力を必要とするかを表した相当電力である。
ここで、空中線の絶対利得2.14 dBiとEIRPの違いも明確になる。
2.14 dBiは利得という比である。
EIRPは電力である。
したがって、
絶対利得2.14 dBiだけではEIRPは決まらない。
空中線へどれだけの電力が供給されるかが、もう一つ必要だからである。
6. 無線電話用特定小電力無線局――なぜ空中線電力を独立して規制するのか
日本法の具体例として、平成元年郵政省告示第42号の、
「八 無線電話用(ラジオマイクに使用するものを除く。)」
に着目したい。[7]
同告示第八第2項は、そこで定めるチャネル間隔・周波数条件のものについて、
「空中線電力 〇・〇一ワット以下」
と定めている。[7]
0.01 W、すなわち10 mWである。
重要なのは、「10 mW」という数字だけではない。
何が10 mWなのか。
答えは、空中線電力である。
機器全体への電源入力10 mWでもなければ、最終RF段への入力10 mWでもない。
一方、無線設備規則第49条の14には、適用対象となる特定小電力無線局の送信空中線について、絶対利得2.14デシベルを基準とする規定が置かれている。[8] 現行e-Govでも、第49条の14に73.6 MHz超1,260 MHz以下を対象とする技術条件と2.14デシベルの規定が存在することを確認できる。
法令本文では「2.14デシベル」と表記されるが、ここでいう絶対利得は等方性空中線を基準とする。本稿では、技術上の意味を明確にするため、
2.14 dBi
と表記する。
ここには、
空中線電力 10 mW以下
と、
送信空中線の絶対利得 2.14 dBiを基準とする条件
という、性質の異なる量が現れる。
10 mWは電力である。
2.14 dBiは利得である。
ここで、仮にEIRPだけを一つの上限値として規制する制度を考えてみよう。
EIRPは、
空中線への入力電力 × 絶対利得
によって決まる。
したがって、EIRPだけが上限なら、同じEIRPの範囲内で、
空中線利得を下げる代わりに、空中線へ供給する電力を上げる
という組合せも原理上可能になる。
低利得の空中線なら、その分だけ大きな送信電力を使う余地が生じるのである。
しかし、空中線電力そのものに10 mW以下という独立した上限が置かれていれば事情は違う。
低利得の空中線を使ったからといって、
「利得が低い分だけ空中線電力を10 mWより大きくしてよい」
とはならない。
ここに、EIRPだけを規制する方式と、空中線電力そのものを独立して規制する方式との差がある。
これは、「立法者がなぜこの方式を選んだか」という政策理由を推測する話ではない。
制度の構造から生じる違いである。
EIRPだけを上限とすれば、電力と空中線利得との組合せに一定の交換可能性が生じる。
空中線電力そのものにも上限を置けば、その交換可能性は制限される。
したがって法令は、最終的な輻射能力だけを見るとは限らない。
その輻射能力を作り出す途中の物理量を、独立した規制対象として選ぶこともできるのである。
7. さらに下流へ――ERP規制と電界強度規制
さらに下流を直接規制する制度もある。
European Conference of Postal and Telecommunications Administrations(欧州郵便電気通信主管庁会議、CEPT)のPrivate Mobile Radio 446(446 MHz帯携帯無線、PMR446)は、その比較例になる。
ECC Decision (15)05(ECC決定(15)05)は、PMR446について446.0~446.2 MHzを対象とし、e.r.p.を最大500 mWとしている。[9] CEPTの公式Decision資料にもこの条件が記載されている。
ここで500 mWなのは、送信機の空中線端子における電力ではない。
ERPそのものが500 mWなのである。
したがって、空中線へ供給する電力と空中線の相対利得との組合せによって規制値への適合が決まる。
CEPTでは現在、ECC Decision (15)05を改定してPMR446で1 W e.r.p.を可能とする作業項目が進行中である。このため、本稿では改定案の1 Wを現行規制値として扱わない。
さらに下流へ進むと、電力ではなく電界強度を基準とする規制がある。
日本のいわゆる微弱無線局である。
電波法第4条第1号を受ける電波法施行規則第6条第1項第1号は、一般的な類型について、無線設備から3 mの距離における電界強度を基準としている。[10] 現行e-Govには、322 MHz以下について500 µV/m、322 MHzを超え10 GHz以下について35 µV/mなどの基準が置かれている。
ここでは、送信機の空中線電力が何mWであるかを直接の上限としていない。
設備から放射された結果として、
3 m先の空間にどの程度の電界が形成されたか
を見るのである。
さらに同条第1項第2号には、無線設備から500 mの距離における電界強度が200 µV/m以下であり、用途並びに電波の型式および周波数を総務大臣が告示する類型がある。[10] この条文内容は法務省の日本法令外国語訳データベースでも日本語本文とともに確認できる。
この用途、電波の型式および周波数を定めるのが、昭和32年8月3日郵政省告示第708号、
「電波法施行規則第6条第1項第2号の規定による免許を要しない無線局の用途並びに電波の型式及び周波数」
である。[11]
本稿では、提示された総務省「電波利用ホームページ」の原典画面により、告示番号、表題、根拠条項ならびに「ラジコン用発振器用及びラジオマイク用」等の本文を確認した。
この類型も、空中線電力そのものを直接規制する方式ではない。
設備から500 m離れた地点における電界強度
という、さらに空間側の量を基準としている。
ここまでを並べれば、規制点の位置関係が見えてくる。
電源入力
↓
最終RF段入力
↓
空中線電力
↓
ERP/EIRP
↓
電界強度
上流の電源入力や終段入力は装置内部の量なので、比較的把握しやすい。
しかし、その後にRF変換効率、給電損失、空中線特性が残る。
空中線電力まで下れば、RFとして送信機から空中線系へ送り出される量を捉えられる。
ERPやEIRPまで下れば、空中線の方向特性も評価へ入る。
電界強度まで下れば、設備から放射された結果を空間側で評価することになる。
したがって、
規制点を下流へ移すほど、実際の輻射状態をより直接に評価できる。
その一方で、
規制値の確定に介在する技術的要因も増える傾向がある。
電界強度であれば、測定距離、方向、偏波、測定用空中線、地面や建物からの反射なども測定結果に関係し得る。
だから、
上流=粗雑、下流=正確
と単純化するのも適切ではない。
上流には測定・管理の簡便さがあり、下流には実際の輻射状態への近さがある。
法制度は、その目的に応じて、どこに規制点を置くかを選択している。
8. dBm・dBW・dBiを混同しない
ここまでの議論を整理するうえで、単位の表現も区別しておきたい。
まず、
空中線電力
ERP
EIRP
は、何を評価しているかを示す物理量の名称である。
これに対して、
W、mW、dBm、dBW
は電力値の表現形式である。
dBmは1 mWを基準とする。
0 dBm=1 mW
dBWは1 Wを基準とする。
0 dBW=1 W
したがって、
dBm=dBW+30
という関係になる。
たとえば100 Wは、
50 dBm=20 dBW
である。
しかし、
20 dBWの空中線電力
20 dBW ERP
20 dBW EIRP
は、数値としてはいずれも100 Wであっても、評価している物理量は違う。
一方、
dBi、dBd
は電力値そのものではなく、空中線利得を表すために用いる。
したがって、この問題には三つの層がある。
何を規制するのか。
空中線電力、PEP、ERP、EIRPなど。
その電力値をどう表すのか。
W、mW、dBm、dBWなど。
空中線利得を何を基準として表すのか。
dBi、dBdなど。
とくに、
10 mW
と、
2.14 dBi
を同じ種類の数字として扱ってはならない。
前者は電力であり、後者は利得である。
そして、その二つを組み合わせて初めてEIRPという別の電力概念が現れる。
9. 法はどこに線を引くのか
送信機へ電力が供給される。
その一部が最終RF段へ入り、RFへ変換される。
RF電力が送信機から空中線系へ送り出される。
給電系を通って空中線へ達する。
空中線によって方向性を与えられ、電波として空間へ放射される。
そして、その電波はある地点の電界として現れる。
物理現象としては一続きである。
しかし法は、そのどこかに線を引かなければならない。
電池端子や電源線端子における機器全体への入力電力を見ることができる。[5]
最終RF段への入力電力を見ることもできる。[5]
日本法のように、空中線電力を規制対象とすることもできる。[1][2]
さらに空中線利得に別の条件を置くこともできる。[8]
ERPやEIRPとして、電力と方向特性を組み合わせた値を見ることもできる。[2][9]
そして、空間に形成された電界強度を見ることもできる。[10][11]
規制点を上流へ置けば、一般に測定・管理は簡便になる。
しかし実際の輻射結果との間に、まだ多くの要素が残る。
下流へ置けば、実際の輻射状態をより直接に評価できる。
しかし、評価に関与する条件も増える。
さらに、どの物理量を独立して規制するかによって、設備設計に許される自由度まで変わる。
その典型が、空中線電力とEIRPの違いである。
EIRPだけを上限とするなら、一定のEIRPの範囲で電力と空中線利得との組合せを変える余地がある。
これに対して、空中線電力そのものに上限を置けば、低利得空中線を使用することを理由として、その上限を越える空中線電力を使用することはできない。
だから送信電力規制について、
「何Wまで使えるのか」
とだけ問うのでは足りない。
その前に、
何の電力なのか。
送信設備のどの位置を評価しているのか。
空中線利得は別に規制されているのか。
ERPやEIRPとして組み合わせて評価するのか。
それとも、空間に生じた電界そのものを見るのか。
を確認する必要がある。
前稿でボイジャーの20 W級送信機と約48 dBiの高利得アンテナを眺めたとき、関心は「この程度の送信電力で、なぜ数百億kmを越えて通信できるのか」にあった。[6]
今回、法規の側から同じ問題を見ると、問いは少し変わる。
その20 Wは、どこの電力なのか。
48 dBiは、何を表しているのか。
それらを組み合わせたEIRPは、20 Wとどう違うのか。
同じ問いは、無線電話用特定小電力無線局の10 mWにも当てはまる。
何の10 mWなのか。
平成元年郵政省告示第42号の例では、その答えは明確である。
空中線電力の10 mWなのである。[7]
法が規制しているのは、「W」という単位そのものではない。
電源から電波が空間へ放射されるまでの連続した過程の、どこに法的な境界を置き、どの物理量を独立した規制対象として選ぶかなのである。
注釈
[1] 電波法第54条
無線局を運用する場合の空中線電力について規律する。
URL:
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000131
[2] 電波法施行規則第2条
空中線電力、尖頭電力、平均電力、搬送波電力、規格電力、終段陽極入力、空中線の利得、絶対利得、相対利得、実効輻射電力、等価等方輻射電力等を定義する。現行e-Govで、平均電力等について「送信機から空中線系の給電線に供給される電力」という定義を確認した。
URL:
https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50080000014
[3] 無線設備規則第13条
「無線設備の空中線電力の測定及び算出方法は、告示する。」と定める。
URL:
https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50080000018
[4] 昭和34年9月19日郵政省告示第683号
無線設備規則第13条に係る空中線電力の測定および算出方法に関する告示。
URL:
https://www.tele.soumu.go.jp/horei/law_honbun/72104000.html
確認上の留保: 上記総務省URLは提示・確認されているが、本稿作成環境ではページ本文を直接取得できなかった。このため、個別項号、具体的な能率値、算式等を推測して記載していない。
[5] Federal Communications Commission(連邦通信委員会、FCC), 47 CFR §§15.235, 15.219
§15.235(c)(2)は、一定の自作意図的放射機器について、電池端子または電源線端子で測定した機器への総入力電力を100 mW以下とする。
§15.219(a)は、510~1705 kHzについて最終RF段への総入力電力を100 mW以下とする。
[6] LoPRA Lab「究極のQRPp/QRSS/DX――ボイジャーとの通信」
2026年5月28日掲載。第4節「22Wは宇宙を越えるか――アンテナ利得の力」で、20 W級の送信電力と約48 dBiの高利得アンテナによる等方放射換算を扱った。
URL:
https://note.com/lopra_lab/n/n7ed0ee6287c2
[7] 平成元年郵政省告示第42号
「電波法施行規則第六条第四項第二号の規定に基づく特定小電力無線局の用途、電波の型式及び周波数並びに空中線電力」。
本稿で使用した原典部分は、
「八 無線電話用(ラジオマイクに使用するものを除く。)」
の第2項であり、確認された本文には、
「空中線電力 〇・〇一ワット以下」
とある。
URL:
https://www.tele.soumu.go.jp/horei/law_honbun/72008500.html
確認上の留保: 本稿作成環境では上記総務省ページを直接取得できなかった。本稿では提示・確認された当該原典部分を使用し、確認できていない項・文言を推測して補っていない。
[8] 無線設備規則第49条の14
特定小電力無線局の無線設備について技術条件を定める。現行e-Govで、73.6 MHzを超え1,260 MHz以下の所定の特定小電力無線局に関する規定と、送信空中線の絶対利得2.14デシベルを基準とする条件が存在することを確認した。
本稿では、法令上の「絶対利得2.14デシベル」について、等方性空中線を基準とする絶対利得であることを技術的に明確にする場合に2.14 dBiと表記した。
URL:
https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50080000018
[9] European Conference of Postal and Telecommunications Administrations(欧州郵便電気通信主管庁会議、CEPT), ECC Decision (15)05
PMR446について446.0~446.2 MHzを対象とし、e.r.p.を最大500 mWとする。
URL:
https://docdb.cept.org/download/1491
2026年8月現在、ECC Decision (15)05を改定し、1 W e.r.p.を可能とする作業項目FM62_03はIn Progressとされている。
参考:
https://eccwp.cept.org/default.aspx?groupid=73
[10] 電波法第4条第1号・電波法施行規則第6条第1項
第1号は一般的な類型について無線設備から3 mの距離における電界強度を基準とする。現行e-Govで322 MHz以下500 µV/m、322 MHz超10 GHz以下35 µV/m等の基準を確認した。
第2号は、無線設備から500 mの距離における電界強度が200 µV/m以下であり、用途並びに電波の型式および周波数を総務大臣が告示する類型を定める。法務省「日本法令外国語訳データベース」の日本語本文でも確認した。
電波法:
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000131
電波法施行規則:
https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50080000014
参考(法務省):
https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4912
[11] 昭和32年8月3日郵政省告示第708号
「電波法施行規則第6条第1項第2号の規定による免許を要しない無線局の用途並びに電波の型式及び周波数」
本稿では、提示された総務省「電波利用ホームページ」の原典画面により、告示番号、表題、根拠条項および本文を確認した。掲載本文には「ラジコン用発振器用及びラジオマイク用」等の用途ならびに電波の型式・周波数が掲げられている。
総務省HTML:
https://www.tele.soumu.go.jp/horei/law_honbun/72004000.html
総務省掲載PDF:
https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/material/dwn/kouzi1.pdf
参考:一般財団法人日本ラジコン電波安全協会「ラジコン用電波」
URL:
https://rck.or.jp/safety/sa_rcradiowaves.html
確認上の留保: 日本ラジコン電波安全協会の上記ページは参考資料として提示されたURLであるが、本稿作成環境では本文を直接取得できなかった。このため、同ページの記述を原典として引用していない。
ほかの記事も用意しています。よろしければ、
http://www.lowpowerradiolab.org/ にもアクセスしてください。
