見出し画像

#47 “話さない”の言い方。ノーコメントを炎上させない技術(広報の知識)

取材で一番難しいのは、うまく話すことではない。
うまく“話さない”ことだ。

記者から、こう聞かれる。

「それって誰の判断なんですか?」
「金額はいくらですか?」
「トラブルがあったんですか?」
「SNSではこう言われていますが?」
「裏側を教えてください」

ここで広報が反射で言うと、だいたい詰む。

「ノーコメントで」
「答えられません」
「申し上げられません」

正しい場面もある。
でも、その言い方だと燃える。

結論から言う。

ノーコメントは“沈黙”ではない。
言い方を設計すれば、炎上を防げる。


ノーコメントが炎上する理由は「逃げた」に見えるから

ノーコメントは、受け手にこう翻訳される。

  • 隠している

  • 都合が悪い

  • 嘘をついている

  • 責任を取らない

  • 説明する気がない

実際は違う。

未確定だから言えない
契約上言えない
個人情報だから言えない
法務案件だから言えない
調査中だから断定できない

理由がある。

でも理由を言わないと、逃げに見える。
逃げに見えると、疑念が増える。
疑念が増えると、炎上する。

広報の仕事は、全部答えることではない。
疑念を増やさずに線を引くことだ。


ノーコメントには「良いノーコメント」と「悪いノーコメント」がある

悪いノーコメントは、ゼロ回答だ。

「ノーコメントです」
「答えられません」
「差し控えます」

これだと相手は、疑うしかない。

良いノーコメントは、“情報の代替”がある。

  • なぜ言えないか(理由)

  • どこまでなら言えるか(範囲)

  • いつなら言えるか(時期)

  • 何をしているか(対応)

つまり、こういうことだ。

言えないことは言わない。
ただし、言えることは言う。


“話さない”を成立させる4点セット

ノーコメントを炎上させない言い方は、型がある。
この4点セットで十分だ。

  1. 感謝(質問の正当性を認める)

  2. 理由(言えない根拠を短く)

  3. 言える範囲(ゼロにしない)

  4. 次の更新(可能なら時期を示す)

この順番で返すと、空気が変わる。


そのまま使える「ノーコメント置き換え例」10本

ここからが実務だ。
“話さない”は言い回しで決まる。

① 未確定(決まっていない)

NG:ノーコメントです
置き換え:
「ご質問ありがとうございます。現時点では確定していないため断定は避けますが、決まり次第ご案内します」

② 調査中(原因・責任)

NG:調査中なので答えられません
置き換え:
「現在事実確認を進めています。確定情報でない段階での推測は控えますが、◯日までに整理してお知らせします」

③ 契約・取引先情報

NG:申し上げられません
置き換え:
「契約上、個別の取引条件は開示できません。ただ、当社としては◯◯の方針で運用しています」

④ 個人情報

NG:お答えできません
置き換え:
「個人情報にあたるため詳細は控えます。事実として申し上げられるのは◯◯までです」

⑤ 金額(開示できない範囲)

NG:金額は非公表です
置き換え:
「金額の詳細は非公表ですが、規模感としては◯◯の範囲です(または“投資判断に影響するほどの大きさではありません”等、言える範囲で)」

⑥ 社内判断のプロセス

NG:社内のことなので
置き換え:
「意思決定は社内規程に沿って行っています。個別のやり取りは控えますが、判断の観点は◯◯です」

⑦ トラブルの有無(火種)

NG:その件は答えられません
置き換え:
「ご心配の点は承知しています。現時点で確認できている事実は◯◯で、追加があればお知らせします」

⑧ 記者の“推測”に乗せられた時

NG:違います/そうです
置き換え:
「推測に基づくコメントは控えます。事実として申し上げると◯◯です」

⑨ 将来計画(まだ言えない)

NG:今は言えません
置き換え:
「検討はしていますが、発表できる段階ではありません。発表可能になった時点で正式にお知らせします」

⑩ SNSで炎上している件

NG:SNSは見ていません/関係ありません
置き換え:
「ご指摘は把握しています。誤解が広がらないよう、事実関係の整理を優先して対応します」

ポイントは一つ。

“ノー”だけを言わない。
理由と代替情報を添える。


“話さない線”は、取材前に決めておく

ノーコメントが事故るのは、当日に迷うからだ。

  • どこまで言うか

  • 何は言わないか

  • どう言うか

  • 誰が言うか

これを事前に決める。

取材前のQ&Aに、
「言わない線」と「代替表現」を書いておく。

当日そのまま使える。
現場がブレない。


ノーコメントを言う時ほど「態度」が重要

言葉より態度で燃えることがある。

  • 苛立った顔

  • 失笑

  • 上から目線

  • 質問を遮る

  • 「その質問は…」と詰める

これをやると、記事のトーンが変わる。

広報は、相手を黙らせる仕事ではない。
疑念を減らす仕事だ。

だから態度は、淡々と丁寧に。


まとめ:ノーコメントは設計すれば燃えない

“話さない”は逃げではない。
守るための技術だ。

  • 感謝

  • 理由

  • 言える範囲

  • 次の更新

この型で返す。

ノーコメントを炎上させるのは、沈黙ではない。
ゼロ回答と態度である。

言えないことは言わない。
ただし、言えることは言う。

それが、強い広報の線引きである。

次回(#48)は、
「現場(店舗)取材の安全設計。施設申請と権利処理の型」
を書く予定です。

いいなと思ったら応援しよう!