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koji_doi
第5回 みえない力に守られて生きてきた「38歳の誕生日の、翌朝のことだった。」
誕生日の翌朝
2018年7月7日、午前6時頃のことだった。
「メキメキッ——バキッ、バキッ」
その音で飛び起きた。家中に響く、聞いたことのない轟音だった。体より先に足が動いていた。気がつけば、外に出ていた。
裏山が、崩れていた。
* * *
2018年7月豪雨——後にそう呼ばれることになるその災害は、梅雨前線と台風7号が重なり、西日本を記録的な大雨が覆った。死者・行方不明者は200名を超え、「平成最悪」と称された風水害だ。広島、岡山、愛媛では河川の氾濫と大規模な土石流が同時多発的に発生した。私が住む兵庫県でも、前日から昼夜問わず雨が続いていた。
まず母屋へ走り、父と母の安否を確認した。無事だった。続いて自宅周辺の被害を確認した。土砂は、自宅の1メートル手前まで迫っていた。斜面の木々は横倒しになっていたが、家屋には一本も当たっていなかった。どこにも被害は出ていなかった。
* * *
落ち着いてから、気がついた。
崩れた山の中腹に、先祖代々の墓がある。いつも我が家を見下ろすように鎮座している、その場所だ。土砂が崩れたのは、そのお墓のすぐ下だった。岩肌が露出するほどの崩落だった。それでも、お墓は無事だった。家も、無事だった。
その事実を確認した瞬間、言葉が口をついて出た。「ありがとう。助かった。ご先祖様——」
38年間、信心深い人間ではなかった。それでもその言葉は、考える前に、自然に出た。
* * *
7月6日は、私の誕生日だった。38歳になった、その翌朝のことだった。
先祖の墓がある山が崩れ、家は守られた。土砂は1メートル手前で止まった。木は一本も家に当たらなかった。そして私の誕生日の翌朝に、それは起きた。
これを偶然と呼ぶことは、どうしてもできなかった。
