ずっと夢のままでいたかった
明け方、すごく楽しい夢を見た。
実家の近くに、とっても大きなショッピングモールができて。
ある日は小学校から高校まで一緒に通っていた、ちいちゃんを連れて。
そしてある日は板橋ママ友達とみんなで。
みんなとの飲み会用の魚をあれは高いとかこれはいいねとか言って、わいわい買っていた。
珍しい海老も売っていた。どんな風に調理できるのか、楽しみだった。
子どもたちには、見たことのないジュースを買った。
夢の途中で突然朝が来て、「あぁ、ずっと夢のままでいたかった」と思った。
こちらは本当の話なのだが、夜中に急に暑くなって目が覚めた。
扇風機の風向きが悪いのか。
調整をして、ふとソファーに横たわったら足元が冷たい。
エアコンから水漏れしていた。

こんな風にエアコンの真下にはソファーがある。
おまけにそのソファーの上には、今犬が乗っているラグや犬の階段2個、落下防止用のマット2個が積み上げられていた。
ダンナが毎朝そこの前で、なかやまきんに君の筋トレをするためだ。
エアコンの真下やカーテンはびっちょびちょで、タオルだのおしっこシートだの新聞紙だの、あらゆるものを総動員して、寝ぼけながらも応急処置をした。
乾かすために、サーキュレーターも回した。
朝起きたダンナが、何もなかったようにすべて元通りにしようとするので、「おらぁっ!」となった。
おしっこシートはものすごい吸水していたし、我ながら応急処置は良かったと思う。
全てのカバーを外して、洗濯をし、ソファーも壁から移動し、乾燥させている。
このソファーは、30年程前買った、狭いマンションには不釣り合いな大きい家具だった。
毎日毎日インテリア雑誌をうっとりと眺め、やっと手に入れた物だった。
当時はIKEAもなかった。
大塚家具に行って、貯金をはたいて買った大切な物だ。
作業している間に、豪雨で浸水被害にあった人のことを思った。
泥にまみれて使われなくなった家具や家電、トラックに投げ入れられていく様子をニュースで何度となく見ている。
でもそのひとつひとつに、家族の思い出がある。
無念だろう。
私も実家の倒産で、全てを無くした経験があるから、少しだけわかる。
当時の私には、あまりにも衝撃すぎて、記憶から消えている事も多い。
そして、さっきまで見ていた夢の中では、私はみんなと一緒に、魚や海老を選んでいた。
あの夢の中には、失うものなんて何もなかった。
ただ、これから料理するものと、 これから飲むものと、 これから一緒に過ごす時間があった。
だから私は、もう一度だけ思う。
「あぁ、ずっと夢のままでいたかった」
