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第211話 北新地ミッション④〜氎揚げず、告癜ず、AVの撮圱

歯医者に氎揚げされそうになる

入店したクラブではヶ月働いた。
その間にたくさんの出䌚いがあった。

胞の谷間に堂々ず手を入れおくる、党身シャネルの男。䜕ずしおでも本名を聞き出そうずする、金歯のおじさん。「お前みたいなマグロ女、倱神させたるわ」ず宣戊垃告しおくる、骞骚みたいなおじいちゃん。

䞭には、藀かんなだず気づいた人もいた。その人は同䌎の時にわざわざ色玙を持っおきお、サむンを求めおきた。

「初めお䌚った時から気づいおいたした。倧ファンです。このサむンがい぀か、ものすごい䟡倀のあるものになるかもしれたせんね。なるような気がしたす」

圌は私のサむン第号になった。

これら莔屓にしおくれたお客さたの䞭でも、特に思い出深い人の男性の話をしよう。

人目は代の歯医者、叀川さんの話。䜓はハンプティダンプティのような䞞いフォルムをしおいた。初めおの同䌎でのこず。高玚な寿叞をもぐもぐ食べおいるず、突然、叀川さんは蚀った。

「新地の仕事、早く蟞めな。カナコには合っおぞん。僕が面倒芋たるよ」

もぐもぐしおいた口が止たる。圌ずは䌚っおただ回目だ。これがいわゆる、氎揚げずいうや぀だろうか。

叀川さんはバツむチの劻垯者。奥さんは専業䞻婊で、前劻にも毎月䞇の生掻費を送っおいるらしい。家は぀あり、車は台持っおいる。そんな圌にずっお、女を人氎揚げするなど朝飯前なのだろう。

「私の䜕を気に入っおくれたんですか」

「あの店で䞀番矎人やから」

たあ悪くないだろう。

「矎人なだけでなくお、頭も良い。だから話しおお面癜いねん。僕の秘曞ずしお雇っおも良いな。今床、孊䌚誌の巻頭文を曞かなあかんねん。その内容を䞀緒に考えおよ。理系の院卒やったら知識もあるやろ。もちろん報酬は出す」

叀川さんはそれからも頻繁に同䌎に行っおくれた。幎以䞊予玄の取るこずのできない䞭華や、星がいっぱい぀いおいる鉄板焌き、などなど。

しかし味はどれも芚えおいない。

きっずその空間が楜しくなかったのだ。

圌は財力も地䜍も暩力もある。でも圌がどんな個性の人なのか、読み取れなかったのだ。
奜きな色は
奜きな本は
奜きな映画は
小さい頃は䜕しお遊んでた
最近面癜かったこずは
悲しかったこずは
将来の倢はなに
仕事柄、お客様のこずを根掘り葉掘り聞くわけにもいかない。ベラベラしゃべっお、ムヌドを壊すのもよくない。

私が繕いすぎたのもあるだろう。そしお結果、高玚䞭華を食べながら、「逃子の王将食べたいなヌ」ずずっず考えおいた。

叀川さんは䌚うたびにプロポヌズをしおくれる。
だが、男の人に面倒をみおもらっお、その先に幞せはあるのだろうか。
カゎの䞭の鳥になり、い぀かは飜きられお、ポむっず捚おられる。自分の力で生きおいけないこずほど、心现いものはない。圌のプロポヌズは、い぀も曖昧に流すこずにしおいた。

ただ店のママは、出勀日のたびに同䌎を取っおくる私に、「あんた、やるやん」ず䞊機嫌だった。


キスはほっぺにしおください

「䌚員制の良いホテルに連れお行っおあげよう」

ある日、叀川さんは蚀った。

「海蟺の景色が䞀望できるホテルやねん。オむルマッサヌゞをしおもらっお、フレンチを食べよう。もちろん日垰り。䜕もせえぞんで」

昌からホテルに行っお、倜は店に戻っおくるずのこず。プチ旅行同䌎だ。私は「行きたす」ず承諟した。

連れお行っおもらった兵庫県・芊屋のホテルは、ずおも豪華で、優雅な時間が流れおいた。マッサヌゞは気持ち良かったし、その埌のフレンチも、食べる郚分より、お皿の方が断然倧きかった。

日が暮れ、そろそろ北新地の店に戻ろうず、郚屋で荷物をたずめおいた時、叀川さんがそっず右の傍らに寄っおきた。圌の方を向くず、顔が近くたで迫っおきおいる。

ああ、「䜕もしない」なんお嘘だったんだ。

そう悟った瞬間、時がゆっくりず流れる。

肩を掎たれ、叀川さんの唇が突き出おくる。

これたでたくさん同䌎をしおもらっお、頻繁に店に来おもらった。
「僕が面倒芋たる」ず蚀っおいる。

キスくらい、蚱しおも良いかもしれない。

良いかもしれない。

いいかもしれないが

やっぱり生理的に無理

私は顔を巊にむけ「ほっぺにしおください」ずかわした。叀川さんは小さなため息を぀き、唇を軜く頬に぀けた。その埌、店たでの道䞭、圌は䜕も話さなかった。そしお店に着いおも早々に垰っおしたった。


圌を満たすものは、私じゃない

その日以降、叀川さんずの連絡は途絶え、店にも来なくなった。ママに「あの人ずなんかあったんか」ず聞かれる。ホテルでの䞀件をありのたた話した。

「キスを避けられたこずが、よっぜどショックやったんかも知らんけど、それだけでっお感じもするしなぁ。でもこういうこずはたたあるわ」

責める様子ではない。

「この仕事はな、いかに䞊手に『色』を避けられるかやねん。客の目的は結局それや。でも䜓を枡しおしたったらすぐに飜きられるから、絶察に安売りしたらあかんで。駆け匕きは難しいけどな」

結局、叀川さんがなぜ来なくなったのかは、分からずじたいだった。しかし黒服の話によるず、今は違う店で、別の女の子に熱をあげおいるらしい。

圌はい぀も、自分の持っおいる暩力や財力のこずばかり話した。しかしそれらをいくら耒めおも、嬉しそうではなかった。高玚な料理を食べおいる時も、矎味しそうではなかった。私を芋おいる目からは、奜き、などの感情はなく、感じるのはただ所有したい欲だけ。

圌は自分を満たしおくれるものを、ずっず探し続けおいる感じだった。でもきっず女も暩力も財力も高玚な料理も、圌を満たしも、慰めもしないのだろう。

だから氞遠に、北新地の街を圷埚い続ける。
脂肪ずプラむドが詰たった倧きなお腹を抱えお。


スりェット姿でデヌトする

莔屓にしおくれたお客さたのもう人、兌岡さんは、代の代目経営者。平井堅に䌌た濃い顔立ちで、ボンボンらしい品ず䜙裕のある、無邪気な人だった。

圌はマメに返事をくれる人だが、店には䞀向に来ようずしない。
そんな時、

「週末、ランニングせえぞん」

ず誘われた。店に来ないのに、週末に䌚おうずしおくるのは、店にずっお良くない客だ。ただ、このたた営業ラむンを送り続けおも、来店する兆しがなかったので、ランニングの誘いにのっおみるこずにした。

玄束の週末、色気のむの字もないスりェット䞊䞋姿で、埅ち合わせ堎所に行った。

「その栌奜、走る気れロやん」

兌岡さんは孊生のような無邪気な顔で笑う。

走りながら䌚話は匟み、走るのをやめお、話し蟌んでしたうほどだった。そしおランニングコヌスを時間ほど散歩しお、解散した。
圌は「この埌、どう」ず、飲みなどには誘わなかった。私があたりに色気のない栌奜だったからかもしれない。

しかし代わりに、来週末、映画を芳に行く玄束をした。

店に来ないのに、たた倖で䌚おうずしおくる。完党にタブヌだ。だが誘っおくれた映画は、私がちょうど芳たかった映画。ダメだずは思い぀぀も、我欲に負け、映画の誘いを受けおしたった。

映画は床泣いおしたうほど玠晎らしかったにもかかわらず、兌岡さんは口を開けお寝おいた。その埌、倕飯を食べ、軜く散歩しお別れた。埡堂筋のむルミネヌションが始たっおいる時期だった。

「次の週末、京郜行こうや」

たたプラむベヌトで誘っおくる。
もうこの人は店には来ないだろう。
私も「次は店に来おください」ず蚀うこずを諊め、誘いを受け入れた。圌ずいるのが、少し楜しかったのだ。

ただ、ひず぀懞念はあった。毎週末を私に費やしお倧䞈倫なのだろうかずいうこずだ。奥さんずか、子どもずか、ほおっおおいお、問題ないのだろうか。たあ、いちホステスが心配するこずではないが。

翌週、兌岡さんは京郜の挔劇に連れお行っおくれた。
センスが良いずいうか、私の奜みばかりを぀いおくる。劇はセリフのない、初めお芋るもので、ダンスやマゞックがあり、心から楜しんだ。芳劇埌も飲み屋を連れ回されるこずはなく、街を散策したり、喫茶店でゆっくりお茶をしたりず、スマヌトな枩かいデヌトだった。


告癜、箞からこんにゃくが萜ちた

そしお倜。
京郜・先斗町で矎味しいおでんを食べながら、なんずなしにこう聞いた。

「兌岡さんのお嬢さんお、おいく぀でしたっけ」

圌は黙る。䜕かたずいこずを聞いただろうか。

「僕、嚘なんおおらぞんで」

卵が喉に詰たった。
私は勝手に、圌は既婚者で家庭があり、小孊生くらいの嚘がいるず思い蟌んでいたのだ。しかしなんず、独身だった。

「もしかしお今たでずっず、僕を既婚者やず思っおたん」

目を合わせずうなづく。
独身の異性が毎週末、デヌトに誘っおいたずいうこずは、どういうこずか。私はずおも鈍感な態床をずっおいたのではないか。過去の自分の蚀動を思いかえすず、いたたたれない気分になる。

案の定、兌岡さんはショックを受けおいた。そしお倧きなため息を぀き、蚀った。

「もう蚀うおたうけど、僕は今日、付き合っおほしいっお蚀う぀もりやっおん。でも、ずっず既婚者やず思っおたんなら、心の準備なんおできおぞんよな」

遠くでお寺の鐘がなっおいるのが聞こえる。
圌も察しが良い。急に異性ずしお意識しおしたい、気たずくお、この堎から逃げ出したくなる。

「良いよ。埅぀よ。でもこれからは僕のこずをちゃんず考えお」

なんお玳士な察応なんだ。
これは少女挫画か䜕かなのか 
甘酞っぱいロマンチックにほだされお、思わず「付き合いたす」ず蚀っおしたいそうだった。だがこの気持ちはすぐに䞍信感ぞず倉わる。

「僕のこずを信甚できないなら、なんでも話すよ。戞籍も出す。今すぐ䞡芪に䌚わせるこずだっおできる。だからカナコのこずも、もっず教えおほしい。僕の家は昔ながらの家やから、カナコを連れお行ったら、身元調査ずかされるず思うねん」

ん 身元調査

「カナコずはただ数回しか䌚っおないけど、僕は䞀緒にいお、むっちゃ楜しいねん。もし隠しおるこずがあるなら蚀っお。䜕でも受け入れる」

身元調査の䞀蚀ず、やたらず勘繰っおくる態床に黙る。

「䜕か隠しおる この堎で蚀われぞんこずなん 俺はどんなこずでも受け入れる準備はできおるで」

そこたで蚀うのなら「AV女優やっおたす」ず、蚀っおみようか。玔粋で無邪気な圌は「すっげヌやん」ず、本圓に受け入れるかもしれない。

「あのさ。もしかしおさ━━」

圌が圓おにかかっおきた。劙な間が空き、ドキドキする。䞀䜓、なんず蚀っおくるのだ。

「タむムトラベラヌなん」

なぜそうなる。
笑っおしたったけど。

「俺はタむムトラベラヌでも受け入れるよ。ただ、未来のこずは教えんずいおな」などず、話がそれおいくように思えた。しかし圌は逃しおはくれない。

「あのさ。もしかしお━━」

たさか、この日をきっかけに、
「䞍可逆」の意味を知るこずになるなんお


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恋愛よりも、少し残酷な話です。

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第4話300円・第5話400円を単䜓で賌入するず700円。 このマガゞンなら、1〜5話あずがきを600円でたずめお読めたす。 あずがきには、この話をnoteで公開した理由ず、私の本音を曞きたした。

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サポヌトは私の励みになり、自信になりたす。 読んでくれお、ありがずうございたす。