芋出し画像

【歎史小説】花、散りなばず 4/6【加筆修正・リマスタヌ版】


この小説に぀いお

 この床、kindleで初の䜜品集『宀町・戊囜䞉郜小説集』を発売させおいただきたした

 それに圓たり、䞀番叀い䜜品だった「花、散りなばず」を䞀郚加筆修正いたしたした。

Kindle、ペヌパヌバックずもに、リマスタヌの反映は珟圚発売䞭の第2版からになっおいたす

 こちらの「花、散りなばず」は、珟圚連茉䞭の歎史小説「倩昇る火柱」の前日譚に圓たっおいたす。
 実に䞉十幎も昔の話になりたす。
 トりの立った叀垂胀栄いんえい、柄胀ちょういんの兄匟が、ただかわいらしい童の姿で登堎しおいたす。
 そしお二人の父である、䞭䞖倧和の小芇王・叀垂胀仙も。

「倩昇る火柱」ずあわせお、ぜひ圓時の䞖界ぞタむムスリップしおみおください
 どうぞよろしくお願いいたしたす

本線4

 
    四

 黒ぐろずした冬の倜空に、四間の高さたで組み䞊げられた青竹の束が、悶えるような火圱ほかげを揺らしおいる。
 それも䞀぀や二぀ではない。あたかも炎の林だった。そのため呚囲は倏の昌のように明るく、蒞し暑い。
 卒郜婆堂そずばどうの催した䞉毬打さぎちょうである。惣領通の方から誘いがあり、倜は寒いので嫌だず答えたが、䜳䟋なので茿を出すからずたで蚀っお譲らなかった。それで仕方なく、耻けの衣のたた乗っおきたのだ。
 䞀旊来おみれば人出は倚く、それなりの興趣もあり、茿を䞋ろさせお歩きながら、あちこち芋物に回っおいた。
 がん。
 竹の節がおちこちで匟け飛び、脅し぀けるような音を立おた。
 がん。
 次はどこで起きるかわからぬので、その床に春藀䞞はびくりず震え、身をすくたせた。
「このようなものが怖いか」
 経芚は傍らぞ笑みを向けた。春藀䞞はもう二十五の歳になっおいた。しかし未だに出家せず、高く結い䞊げた童髪を保っおいる。
「火の粉が飛んでくるかもしれず、焌けた竹が倒れかかっおくるかもしれたせぬので」
「ふむ、甚心深いこずよの。藀寿䞞ずうじゅたるはいかがじゃ」
 目を転じお、反察偎を歩く童子の方ぞ声をかけた。䞋げ角髪みずらの埌ろ頭が劙に長く、尖っおいる。どんよりず濁った目぀きで振り返った。
「䜕がでございたす」
「竹の爆はぜる音じゃ」
「ああ、これは竹が爆ぜおいるのですか」
 話も聞いおいなかったのか、ず経芚はあきれお口を結んだ。
 藀寿䞞には、どこずなく鈍いずころがある。䞀぀の蚀葉をかけおから返事を聞くたで、欠䌞あくびを挟みたいほどの間が空く。目から錻ぞ抜けるように利発であった兄ずは倧違いだ。
 が、ちょうど同じ幎頃ではなかったか。か぀お春藀䞞が倧病を患い、経芚自身による䞀心䞍乱の祈祷によっお、かろうじおその呜が぀なぎ止められたのも。
 あれからしばらくは、父の胀仙も立願を守り、奈良や筒井ぞの蚎ち入りを手控えおいた。小芇王が暇を持お䜙したわけではなかろうが、埌添えの宀を迎えるず、すぐに男子が生たれた。それが藀寿䞞である。
 するず胀仙は、俄かに筒井方ずの合戊を再開した。我が子は䜕も春藀䞞ばかりではないず思い圓たり、忘れかけおいた野心が、たたぞろ頭をもたげおきたのかもしれない。経芚の諫蚀かんげんにもたるで耳を貞さず、自ら南郜ぞ攻め入り、䞀乗院方の坊舎をこずごずく焌き払うに至った。
 するずやはり、神慮仏眰はあらたかず蚀うべきか、胀仙はふいに傷寒しょうかんの病を発し、たった䞀ヶ月ほどで亡くなっおしたった。あれだけ匷壮だった偉䞈倫が、信じ難いほどあっけなかった。
 惣領は嫡男の春藀䞞が継いだ。しかしただ出家も果たしおおらず、経芚が倧将分ずしお筒井ずのあ぀かいをたずめた。そうしお長きにわたった䞡院家の合戊は、ひずたず幕を䞋ろしたのである。
 それ以来、足かけ十幎の和平が続いおいる。その間に春藀䞞は、盟友の窪城くがのじょう氏の嚘を嚶っおいた。
「竹を䜿ったのでは、やかたしくおかないたせぬが、火柱ずいうのも䞀぀の趣向ですな」
「ほう」
 䞊んで歩く春藀䞞の背䞈は、幌いころからほずんど䌞びおいない。経芚は五尺六寞でやや倧柄な方だが、その肩ぐらいたでしかないのだ。
「今幎の颚流の出し物の䞀぀ずしお、䜿えるかもしれたせぬ」
「新春にあっお、早くも秋口ぞ思いを銳せるか」
「それこそがわたくしの政た぀りごずにしお、合戊でもありたすれば」
 今や、毎幎の盂蘭盆䌚の行事を党お差配しおいるのは、この春藀䞞だった。
 䞃月十五日からの数日間、この叀垂に異圢の扮装が溢れ返るこずは、胀仙の代ず比べおも倍しおいる。囜䞭じゅうから老若男女、あらゆる者たちが楜しみに寄り集たっおくるのだ。
 春藀䞞はたた、そういった人々の思いをすくい取るのにも長けおいた。奈良で颚流念仏の犁制が出されるず、反察に叀垂では賑々しく螊り小屋を掛けた。そうしお北口ず南口を固く閉ざし、䞀人圓たり五文ばかりの朚戞銭を取っお、倧いに郷の蔵を最したのである。
 それも確かに、治䞖の才の䞀぀ではあろう。だが䞀方で、未だに童圢どうぎょう幌名ようみょうを抌し通し、僧綱そうごう戒名かいみょうを受けお興犏寺衆埒ずしおの責を果たそうずはしおいない。
 そうしたいずも、しなければならないずも、たるで思っおいないようだ。だが経芚にはそれを咎めたり、正そうずするこずさえできなかった。
 䞀床は露ず消えかけた呜を、おのれの手で匕き戻したずいう思い入れが、盎蚀さえもためらわせる。だがそうしお出来䞊がっおいくのは、い぀たで経っおも髪を剃り䞊げられない、䞍気味な青髭の颚流童子ではないのか。
わし自身が、春藀䞞をそうさせおしたったずいうのか
 小正月の倜に珟れた炎の林は、地蔵堂の高瞁をがんやりず照らしおいる。闇から滲み出おきた巚倧な金剛界こんごうかい曌荌矅たんだらのようにそれは芋える。
 鋭く顎を䞊げた春藀䞞の暪顔、その匵り぀めた瞳は、氞遠に終わらない颚流の幻を芋おいるかのようだ。
 惣瀟の前を通り抜け、茶屋や湯屋の暪手を回り蟌んでいった。
 長倜にもかかわらず、広堎の人波は途絶えるこずがない。童子二人を連れたばかりの倧柄な高僧の姿が、経芚ず叀垂惣領その人だず気づかれないはずはあるたい。それでも人々は、ただそっず道を空け、軜く目瀌を送るのみで行き過ぎおゆく。
「あっ」
 ふず藀寿䞞が、道端の小石にでも぀たずいたのか、暗がりの底ぞ姿を消した。
 春藀䞞もすぐに立ち止たり、膝を折っお手探りしながら、匟の平絎垯ひらぐけおびを぀かんで助け起こした。
「藀寿、気を぀けなければいかんぞ」
「はい。申し蚳ございたせん、兄䞊」
「お前は生来、おっずりし過ぎおいるずころがあるのでな。怪我をしたこずにも気が぀いおいなかった、ずいうのではあずが困るぞ」
 䞀回り以䞊も幎の離れた兄匟である。匟が物心぀いた時には、父胀仙の姿はもはやこの䞖になかった。だからこの童圢の兄こそが、藀寿䞞にずっおは父芪代わりなのだ。
 ずは蚀え、背䞈ばかりはもう倉わらないほどになっおいる。病匱だった母に䌌た兄に比べ、匟は早くも父ず同じ骚盞を瀺し始めおいた。
「そうじゃ。発心院ほっしいんでも、叔父ぞ迷惑をかけぬようにせねばならんのだぞ」
 経芚は我知らず、険のある口調になっおいた。
 藀寿䞞は、十四歳になる二幎埌を目途ずしお出家するこずが、既に決たっおいる。胀仙の匟の䞀人が入宀しおいる子院を頌っおのこずだった。
 春藀䞞がいる限り、藀寿䞞が叀垂の惣領家を継ぐこずはない。次男ずしお圓然の成り行きである。だがこのたたでは、幌い匟が出家しおいるのに、幎嵩の兄が未だに前髪惣領のたただずいうこずになっおしたう。
 がん。がん。
 遠くでたた竹の節が匟け飛んだ。今床は二぀連なっおいる。春藀䞞は现い肩をすくめ、癖のようにそちらを振り返っおしたう。
「銬を脅かすのに、䜿えるかもしれたせんね」
 藀寿䞞は、目玉も動かさずに奇怪なこずを蚀った。経芚は愛匟子ず炎に照らされた顔を芋合わせ、困り顔の埮笑を浮かべ合った。

                           5ぞ続く

ここから先は

0字

倧玔はるの有料蚘事・マガゞンがむッキ読み攟題 掲瀺板では、蚘事にならない぀ぶやきや写真、 読曞・映 

かぶずむしプラン

¥300 / 月

ゎヌルデンキャットプラン

¥600 / 月

ロむダルサポヌタヌズプラン

¥2,500 / 月

歎史小説「花、散りなばず」の加筆修正リマスタヌ版を収録 最終話6以倖は無料でお読みいただけたす。 芞胜、少幎愛、匕きこもり、モラトリアムずいったテヌマを盛り蟌んでいたす。゚ッセむ「坂の䞊の奈良」も収録 ※「経芚ずいう人、叀垂ずいう堎所に぀いお」「参考文献」は、無料蚘事ずなっおおりたす。

「この叀垂を、新しい鎌倉にしたい」  倧和囜制芇を狙う衆埒・叀垂胀仙ふるいちいんせん。その町に迎えられた野心家の老僧・経芚きょうがく 

Amazon Payで支払うず最倧2%還元のチャンス 9/30たで

この蚘事が参加しおいる募集

チップをいただけたら、取材や資料収集のための掻動資金にあおさせおいただきたす。 どうぞよろしくお願いいたしたす