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なぜスペイン代表は「無敵艦隊」と呼ばれるのか:その由来と、敗れた本物の艦隊の物語

2026年のサッカー最高峰の舞台において、スペイン代表が力強い戦いを見せています。
グループステージを1位で通過し、決勝トーナメントに進みました。

このサッカーのスペイン代表を称する際、日本では「無敵艦隊」という呼称がよく用いられますが、そもそもなぜ彼らはそう呼ばれるのでしょうか。今回は「無敵艦隊」の由来と歴史から、現代のサッカースペイン代表の軌跡までを辿ってみましょう。

サッカーのスペイン代表が「無敵艦隊」と呼ばれるようになった背景には、日本のサッカーメディアの影響があります。長く無敗を続けていた1998年の欧州予選などの時期に、日本の雑誌や関連本がこの大艦隊の威容を表す比喩として用い始めたことが定着のきっかけでした。

もともと「無敵艦隊(アルマダ)」とは、16世紀のスペイン全盛期に無類の強さを誇った海軍艦隊を指す言葉です。
しかし、歴史上の無敵艦隊は手痛い敗北を喫しているため、本国スペインでは縁起の悪い呼び名とされ、代表チームの公式な愛称にはチームカラーに由来する「ラ・ロハ(赤)」が使われています。

歴史上の「無敵艦隊」とはどのようなものだったのでしょうか。
1588年、カトリックのスペイン王フェリペ2世は、プロテスタントのイングランド女王エリザベス1世を打倒し、新世界からの輸送船に対する海賊行為の報復や、オランダ反乱への介入を阻止するため、約130隻からなる大艦隊(無敵艦隊)を派遣してイングランド侵攻を企てました。
しかし、機動性に優れたイングランド軍の長射程砲や、火薬を積んだ火船を用いた奇襲攻撃によって陣形を崩され、スペイン艦隊は甚大な被害を受けて後退を余儀なくされます。
この激戦の中、イングランド側に一つのドラマチックな名場面が生まれました。それが、女王エリザベス1世の「ティルベリー演説」です。スペイン軍上陸の恐怖が未だ消え去らない中、女王は自ら前線のティルベリーへと赴き、兵士たちに向けてこう力強く語りかけました。

「私はか弱く脆い肉体の女だ。だが、私は国王の心臓と胃(勇気)を持っている。それはイングランド王のものだ」

Damrosh, David, et al. The Longman Anthology of British Literature, Volume 1B: The Early Modern Period. Third ed. New York: Pearson Longman, 2006

このティルベリー演説が歴史的な名演説として語り継がれる理由は、その巧みな「修辞(レトリック)」にあります。
「か弱き女の体」と「王の心臓」という鮮やかな対比は、16世紀当時の女性に対するステレオタイプを逆手に取ったものです。
女王自らが身体的な脆弱さを認めることで、強大なスペイン軍を前に恐怖を抱く兵士たちの共感を呼び起こし、その直後に内面的な比類なき勇気(王の心臓)を誇示することで、肉体の限界を超越した絶対的な指導者としての威厳を示しました。
この「自己否定から強烈な自己肯定への劇的なギャップ」と逆説的な論理構造が、死を覚悟して戦う兵士たちの心を激しく揺さぶり、「この女王のために戦おう」と彼らを奮い立たせたのです。

一方、作戦を断念し敗走した無敵艦隊は、帰還の途中でスコットランドからアイルランド沖の過酷な航路で悪天候(嵐)に巻き込まれ、海戦自体よりもはるかに多い犠牲者を出すという悲劇的な結末を迎えました。

現代の「無敵艦隊」であるサッカースペイン代表の歴史にも、数多くの栄光と挫折のドラマがありました。
スペインは長年、国内に世界最高峰のリーグ(ラ・リーガ)を持ちながら、世界的な大舞台ではベスト8の壁を越えられず、「永遠の優勝候補」や「勝てない強豪」と揶揄される時期が続きました。
前評判が高くても最後は不運や勝負弱さで敗れ去るその姿が、かつての悲劇の艦隊と重なる部分もあったのかもしれません。

しかし、彼らはそこから歴史的な飛躍を遂げます。細かくパスをつなぎ圧倒的なボールキープ力でゲームを支配する「ティキ・タカ」と呼ばれる戦術を確立すると、UEFA EURO 2008で44年ぶりの主要国際大会優勝を飾りました。
続く2010年の南アフリカ大会では初戦で敗れながらも見事に立て直し、延長戦の末に悲願の初優勝を達成します。
さらにUEFA EURO 2012でも圧倒的な強さで大会を制し、史上初となる主要国際大会での「前人未到の3連覇」という偉業を成し遂げました。
こうして彼らは「勝てない強豪」という汚名を完全に返上し、サッカー史上最高のチームの一つとして歴史に名を刻んだのです。

2026年の大会で、ルイス・デ・ラ・フエンテ監督が率いるスペイン代表は、EURO 2024を制した勢いそのままに、ラミン・ヤマルなどの若きスター選手と、それを支えるミケル・オヤルサバルやダニ・オルモら特定の役割を全うする実力者たちが完璧に融合した組織力を武器に躍動しています。
歴史上の無敵艦隊が果たせなかった「覇権の確立」を現代のサッカー界で見事に体現している彼らが、今大会で2度目の制覇を成し遂げることができるのか。新たな黄金時代の到来を予感させる、現代の「無敵艦隊(ラ・ロハ)」のこれからの活躍を、引き続き熱く見守っていきましょう。

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