切り抜きどうだ?
甘野充さんのアマノ文筆クラブ企画に参加させていただきます。
いつもに比べると割とひねりのないストレートなエッセイになってしまいました。
スマホの写真フォルダをなんとなく眺めていた。
美味しそうな食事に舌鼓を打ち。
きれいな景色を家族と共有する。
バースデイケーキにはしゃぐ子どもたち。
顔はめパネルがあればやらずにいられない私。
こう見ると私の人生はずいぶんと楽しげだ。
実にハッピーで順風満帆な人生を送っているように見える。
いやいや、ちょっと待ってほしい。
仕事では精神をすり減らし。理不尽なことも受け入れ。
家に帰ったとて色々と気を遣う事は山ほどある。
私がかいた汗はどこに行った?
つい漏れてしまった溜息はどこへ行った?
胃の痛みはどこへ消えた?
私の抜け毛を返せ!
これは切り抜きに他ならないじゃないか。
私の人生の、都合のいいところだけを集めた切り抜きだ。
私の身体は傷だらけだ。
私の抜け毛を返せ!今すぐ!
でも、嘘ではない。
笑っていたのも本当だし、
美味しかったのも本当だし、
家族との時間も確かにそこにあった。
そう、人生の全てを記録する必要はない。
大体そんなもの誰が喜ぶというのだ。
残したいところを残す。それで誰が困るわけでもない。
残したいのは毛髪だ。
むしろ未来の自分がちょっと救われる。
汗をかかない人はいないし、
傷の無い人もいない。
誰もが時々溜息をつきながら、時々楽しげに生きる。
それでいいじゃないか。
人生の全てを見れば、
きっと誰だって、それなりにしんどい。
だからせめて、後から見返す時くらい、
「案外悪くなかったじゃないか」と思える切り抜きを残しておきたい。
最後に見る走馬灯は笑いながら見たい。
人生という長すぎる動画から、楽しそうな場面だけを切り抜いておく。
どうだ?
抜け毛は戻ってこないけど。
