「ハイスペック化」する婚活市場で女にだけ課される、若さ・美しさ・家事力・経済力という"四重苦"
「女性活躍」の裏に潜む、男性からの新たな圧
結婚相談所で女性に求められる条件が、年々ハイスペ化している。
MARCH以上の大卒・安定企業の総合職・正社員……今や家庭を守る専業主婦像より自立したバリキャリ像が人気だ。その象徴がファッション雑誌『VERY』。
かつての顔はカリスマ主婦モデルの滝沢眞規子(タキマキ)、その後は、東大卒で外資系金融を経て起業したワーママの申真衣(シンマイ)。理想の女性像の変化は、婚活市場の条件の変化と重なって見える。(※現在は『VERY NaVY』専属モデルとベンチャー企業の役員を兼業)。
ロスジェネ世代の私は、「女は家庭に入れ」と言われて育ちながら、社会に出る頃には「やっぱり女も働け」と背中を押された。そして婚活市場では、「非正規や低収入の女性は価値がない」と見なす男性も少なからず存在した。
ここ20年の急激な変化は、女性の生き方が多様になった結果ではなく、男性の生きづらさが転化された結果ではないか、と感じることがある。
▼「家庭に入れ」と言われたロスジェネ世代の私が、労働と結婚観について考察した記事はこちらです
その思いが強まったのは、MBTI診断(16タイプ性格診断)とジェンダーロール(性別役割)のねじれを扱った、興味深いnote記事を読んだのがきっかけだ。
投稿者のblueさんによれば、男性社会は偏差値や年収といったスペックで測られる「一元主義」。一方、女性社会は「多元主義」のため、多様性に基づいた個性・キャラクターで評価されやすく、専業主婦といった女性的なジェンダーロールはもちろん、バリキャリとして男性的なジェンダーロールへの乗り換えも可能だと主張している。
それゆえ、競争から逃れられない男性社会では、INFPやINFJタイプのような繊細な男性が適応できず、生きづらさを抱えているという。
▼blueさんの考察は示唆に富んでおり、一読の価値がある。私の記事では、婚活の現場で感じた視点からの補足や解釈も含まれるが、blueさんの記事への敬意を込めて紹介させていただいた。
男性の“競争疲れ”と、女性への転嫁
blueさんの指摘は的確で、性格と社会構造のミスマッチが生む苦悩に頷ける部分が多かった。私も婚活のなかで、年収の低い男性が不利になりがちという現実に度々直面してきた。
ただ一方で、長期的な経済停滞によって男性側も苦境に立たされるなか、「じゃあ、女も同じように稼げよ」という圧が、女性に対する“新たな条件”として加わってきたようにも感じている。
たとえば、ブログやXで婚活情報を発信するヨシオさんも、まさに就職氷河期世代の男性だ。ブログによれば、旧帝大院卒ながら、面接でうまく立ち回れず、一時はフリーターになった時期もあったという。安定した雇用を得られないまま、年収400万円未満・実家暮らし・一人っ子の36歳という条件で婚活をスタートしたが、4年婚活した末にアプリ婚している。
つまり、「年収が低い=結婚できない」とは一概に言えない。特に結婚相談所のように30代までは男性のほうが少ない市場では、条件をすり合わせながら関係を築き、成婚につながるケースも多い。
▼ヨシオ氏のnoteはこちら
「ハイスペ婚」から「三平婚」へという婚活のリアル
令和の今、共働きが当たり前になったことで、女性が求める結婚像も変わってきた。男性に依存するのではなく、対等な立場でパートナーシップを築きたいと考える女性が増えているのだ。
その象徴として語られるのが、「三平」(平均的な年収・平均的な外見・平穏な性格)というキーワードである。いわゆる“ハイスペ婚”ではなく、日々の暮らしを穏やかに支え合える関係を重視する考え方だ。
一方で、近年では「妻にも男性と同等に稼いでほしい」「正社員の女性がいい」といった価値観を持つ男性が増えており、結果として女性にかかるプレッシャーは確実に強まっているように見える。
共働きが「希望」ではなく「義務」になる時代
少し前にバズっていたあるXのポストが、そんな状況を象徴していた。
もうこの見出しを見ただけで、仕事も家事も育児も全部担わされて疲弊してる女性と、仕事だけしてダブルインカムで豊かな暮らししたい男性の図が見えて地獄みがすごい🫠 https://t.co/b4hTKAQGEh
— Emily (@manmadailytweet) May 21, 2025
Emilyさんは日本経済新聞の「子育て女性の4割が退職検討 男性の7割『妻に正社員として勤務望む』」という記事を引き合いに出し、仕事も家事も育児も全部担わされて疲弊してる女性と、家事はそこそこにダブルインカムで豊かな暮らしをしたい男性の意図が垣間見えると指摘。
さらに、「この中の一体何割が、『妻の就労を守るために、自分が家事の半分程度をしっかり担わなければ』と思ってるのか見ものです」と綴っている。
実際、SNSでは「自分が不安だからこそ、女性に安定した職業を求める」という声も少なくない。たとえば、こんな男性の投稿もあった。
残念ながら40代で平社員の自分はいつリストラされてもおかしくないと思ってて、お相手が看護師や保育士だとちょっと心配。最低でも大学職員、公務員、薬剤師あたりの安定した職業を条件にしたい。
— ta@婚活AI革命 (@uedaminok) May 24, 2025
ポスト主のtaさんは「自分がリストラされないか不安だから」という理由で、大学職員、公務員、薬剤師といった安定した職業を条件に上げている。
このポストに違和感を抱いた女性も多く、「相手に求め過ぎじゃないですかね。お相手に何を提供できるんですか?」とリプライされていたが、この構造的なすり替えこそが、今の婚活における女性への圧力の正体だと思う。
blueさんが言うように、かつて女性には「多元的な人生」が許されていた。だが現在の婚活、特にお金をかけて結婚相手を探す結婚相談所の世界では、その多元性は幻想に近づきつつあると感じる。
もちろん、物価高も相まって、ダブルインカムでなければ生活が成り立たない時代になってきたことは、私も実感している。だが、「家事もやって、育児も担って、なおかつ正社員として男性と同等に稼げる仕事を続けろ」というように、雇用形態や年収にも安定性が要求される。
すなわち、女性の生き方そのものにまで「条件」をつけられることに、強い違和感を抱いているのは、私だけではないはずだ。
競争を降りたい男と、降りられなくなった女
blueさんのnoteでは、「女性が男性的ジェンダーロールで生きることは自由だが、男性が女性的ジェンダーロールで生きることは許されない」と述べられていた。その背景として、「男性は女性よりも職業の選択肢が限られやすい」点が指摘されている。
確かに、そうした構造的な制約は存在するし、それゆえに男性が生きにくいという現実もあるだろう。一方で、私自身が感じているのは、男性が「競争から降りたい」と感じたとき、その“代わりに競争を続ける人”として女性が位置づけられてしまう、という構造である。
つまり、職業選択や生き方の自由が男女で等しく保証されるどころか、男性が降りた分だけ女性が背負う構図が、婚活市場のなかにも入り込んでいるのではないか、という疑念だ。
「平等」の名のもとに、二重労働を押しつけられる現実
共働きが当たり前になった今、男性が「妻にも正社員として働いてほしい」と願うのは、もはや特別なことではなくなった。
だがその一方で、女性には仕事に加えて、家事・育児・介護といった「見えないタスク」も自然に担うことが求められている。
もちろん、男性の中にも家事や育児に協力的な人はいるだろう。だが、既婚女性の話を聞いてみると、「保育園の送り迎えや子どもの急な発熱などの対応、掃除洗濯や料理も私の仕事にされている。夫はテレワークなのにオンライン会議などを理由にするし、育児休暇を取ったこともない」といった声は珍しくない。
つまり、男性が「競争から降りたい」と願う裏側で、女性は降りることすら許されない立場に追い込まれているのだ。
それはもはや、「公平な分業」などではない。家庭内外でフル稼働を強いられる、典型的な“二重労働”にほかならない。
今、SNSを通して語られるのは、「男女のどちらが、どれだけ稼げるか」といった条件ばかりだ。婚活は本来、支え合える相手を探す場であったはずなのに、いつの間にか“能力査定”の場へと変わってしまった。
もちろん、生活が苦しければ、女性だって正社員を目指したり、専業主婦からパートに出たりと、家計に貢献しようとするのは自然なことだ。
だが、それを男性側から「男女対等」という大義名分で押しつけられたり、「男性と同等の年収500万円以上の女性でなければ対象外」と言われるのは、話が違うように思う。
「若さ」「美しさ」「家事力」「経済力」という婚活女性の4重苦
婚活市場、特に結婚相談所では、評価の基準そのものに男女差がある。
男性は今も昔も「経済力」が最大の評価軸であり、年齢が上がっても収入を上げれば評価される。一方、女性は年齢・容姿に加え、近年では年収や職業といった“新たな条件”まで求められるようになってきた。つまり、女性にだけ評価項目が増えていくという、不公平な構造が生まれている。
若さ・美しさ・家事力・経済力。女性はこの4つが揃って、ようやく評価のスタートラインに立てる時代なのだ。
本来、パートナーとは、苦しいときにこそ助け合える相手だったはずだ。にもかかわらず、「自分がしんどいから、相手にも同じだけ背負わせる」という発想が、あたかも平等であるかのように語られている。それは本当に、支え合う関係なのだろうか。
こうした構造は、婚活だけでなく、恋愛結婚をした夫婦間でも当てはまる。
たとえば、私の女友達はもともとフリーランスとして一定の収入を得ていたが、結婚後は10年以上にわたり、夫から「収入が減ってもいいから、安定した正社員になってほしい」とプレッシャーを掛け続けられていた。子どもが生まれても、夫の海外赴任を経ても、その要望は変わらず、結局は帰国後に正社員として就職した。
彼女は「家計のため」と自分に言い聞かせているが、その選択は本当に納得の上なのだろうか。
女性が希望を語れる世界へ
男性が疲弊して、女性も削られていく現実。
この“両成敗”のような構造のなかで婚活し、成婚していった先に、パートナーシップは育まれるのだろうか。
婚活が、役割の査定場ではなく、価値観と人柄を見つめる場所であってほしい。
人の価値は、肩書きや年収だけでは決まらない。そう願うのは、きっと私だけではないはずだ。
※本記事の模倣・無断転載・無断引用は固く禁じます。
※2025年9月22日に執筆・公開しました。
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