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ヒジャブ問題~「不衛生だから一律禁止」というエビデンスはありません~

日本で看護師免許を取得、10年程働いてから渡英、英国で看護師免許を取得後国立病院で働き、5年間義父を在宅で介護していました。イングランド北西部の田舎で夫・息子・猫と暮らしています。

今回は、今朝投稿された「ヒジャブ」に関する問題について、私自身の考えをまとめてみたいと思います。
X上でも、賛否を含めさまざまな意見や受け止め方が示されています。

英国でも米国でも、「感染対策上の条件を満たしていれば着用を認める」という方向で議論や運用が進んでおり、「不衛生だから一律に禁止すべきだ」という科学的根拠は示されていません。

英国のエクセター大学が示しているガイドラインでも、「適切な着用とサポートが行われている限り、ヘッドカバーそのものが感染リスクになるわけではない」と明記されており、信仰と感染対策を両立させる前提で運用されています。

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://medicine.exeter.ac.uk/v8media/facultysites/hls/docs/Guidelines_for_wearing_headscarves_on_placement.pdfより

Head coverings do not present an infection risk if they are properly worn and supported in the clinical environment.

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米国では、

複数の法的判例においてヒジャブが他の許容される頭部カバーより感染リスクを高めないとの判断が示されている。外科文化における「清潔vs不潔」の定義が、欧米的価値観に基づく偏見を反映しているという指摘も重要である。

https://medical-educator.hatenablog.com/entry/2026/04/20/133000

興味深い記述的研究があります。

企業や病院の側から見ると、「ヒジャブを禁止するかどうか」ではなく、「どういう仕様(素材・形・洗濯頻度・固定方法)なら安全に働けるか」を明文化するのが重要だと指摘されています。

外国人人材の受け入れを制度として進めた時点で、今回のような宗教的配慮をめぐる問題が生じることは、本来あらかじめ予測できていたはずだと感じます。

衆議院議員・阿部知子氏が提出した「介護現場等で働く外国人をめぐる宗教的配慮に関する質問主意書」(第201回国会・質問第237号)では、EPA等で来日している看護師候補者・介護福祉士候補者に対する宗教的配慮の在り方が、重要なテーマとして取り上げられています。

政府答弁では、外国人介護福祉士候補者に対して、合理的理由なく宗教上の被覆の着用を禁じることは不適切とされています 。

  • さらに、厚労省系の資料でも、外国人労働者と日本人職員が文化・慣習の多様性を理解しながら働けるようにすることが求められています 。

  • そのため、病院が安全・衛生上の必要な条件を別途定めることはあり得ますが、宗教的理由だけで一律に排除する方針は取りにくいと考えられます。

これでは、「不衛生だから一律禁止」の解決にはならないと思います。
そもそも、「ヒジャブは何を根拠に不衛生と言えるのか」「どの程度のリスクがあるのか」といった点について、日本の衛生学・公衆衛生の分野で本格的な調査や研究が行われてこなかったのは、非常にもったいないことだと感じます。

もし科学的なデータに基づいて基準を設けるのであれば、Covid のときにマスクや防護具について詳細な規約やガイドラインを整備したのと同じように、「どのような素材・着用方法なら問題がないのか」を検証し、その結果を踏まえてルール化することもできるはずです。

そう考えると、本来は「とりあえず禁止する」のではなく、「きちんと調べて、必要な条件を明文化する」というプロセスこそが、今回のような問題に対して求められているのではないかと思います。

すでに外国人人材が医療や福祉の現場に不可欠な存在となっている現状を踏まえると、本来は看護協会や医師会といった専門職団体が、エビデンスに基づいた指針や見解を積極的に示すことが必要だと感じます。

現場の個々の判断や感情論に委ねるのではなく、「どの条件なら安全か」「どのような配慮が妥当か」を、科学的根拠と専門的知見に基づいて明文化し、広く共有していくことが求められているのではないでしょうか。

私は外国人として、英国のNHSで働いてきました。患者さんやご家族の中には、「外国人に担当してほしくない」「外国人は遠慮したい」といった反応を示す方も実際にいます。

私たちは、そのような「差別的」とも受け取れる言葉を浴びる可能性も承知のうえで、それでもこの現場で働くことを選んでいます。

それでも続けてこられたのは、「科学的根拠」に裏打ちされた医療がここにあるからです。エビデンスに基づいた方針やガイドラインが、「自分は正しいことをやっている」と胸を張って言える、誰にも簡単には否定させない大きな支えになっているのだと思います。

外国人労働者が直面する課題は、言語の壁や生活習慣の違いだけでなく、宗教や価値観、雇用条件など、実にさまざまな要素が絡み合っています。

そして、それぞれの問題には、それぞれ異なるアプローチや解決の方法が必要だと思います。だからこそ、「外国人だから」「宗教の問題だから」といった形で、なんでもひとくくりに語ってしまわないでほしい、と強く願います。


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