美味しい中国-泡椒生汤牛肉米线
中国には、「なぜ日本にまだないのだろう」と思う料理がいくつもある。その一つが、雲南料理の泡椒生汤牛肉米线(pào jiāo shēng tāng niú ròu mǐ xiàn)だ。

雲南省は中国南西部に位置し、ラオスやベトナム、ミャンマーと国境を接する地域である。そのため、東南アジアの食文化の影響を受けた米料理や米麺文化が根付き、米線(mǐ xiàn)を使った料理が数多く発達してきた。
一口食べると、まず酸味が広がる。そして、すぐに辛さが追いかけてくる。しかし、それだけでは終わらない。牛骨や鶏ガラから取った深い旨味が全体を包み込み、思わずもう一口、スープをすすってしまう。
日本には、この味にそのまま当てはまる料理が思い浮かばない。
主役は、酸味の効いた黄色い泡椒(pào jiāo)。唐辛子を塩水などに漬けて発酵させたもので、その爽やかな酸味と辛味がスープに溶け込み、牛肉の旨味と見事に調和している。
さらに、たっぷりのパクチーが加わることで、後味は驚くほど軽やかになる。汗をかきながら食べているのに、不思議と箸が止まらない。
私は、さらにラー油を加える。辛さが増すだけではなく、香りとコクが加わり、味がもう一段階深くなる。
店内を見渡すと、昼時には多くの人で賑わっている。地元の人たちが当たり前のように食べている日常の料理だが、一度口にすれば、人気の理由はすぐに分かる。
日本では近年、麻辣湯や蘭州牛肉麺が広く知られるようになった。どちらも中国を代表する麺料理だが、その次に日本で人気が出るとすれば、私はこの雲南米線ではないかと思っている。
辛いだけではない。酸っぱいだけでもない。その両方を、牛骨や鶏ガラから生まれる奥深い旨味が支えている。
暑い夏でも食欲が落ちないどころか、汗を流しながら夢中で食べてしまう。むしろ、暑い日にこそ食べたくなる料理だ。
その中毒性は、間違いなく本物だ。
