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🌿 介護からの気づき 第32回「ありがとう」があふれる人生の終わり

― 人の心に残る生き方とは ―

介護の仕事をしていると、「人生の終わり」という、とても静かで尊い時間に立ち会わせていただくことがあります。

私が勤める特養施設では、ご利用者様が最期の時まで安心して過ごせるよう、看取りのお世話も行っています。

食事の量が少しずつ減り、水分もわずかになっていきます。

やがて眠る時間が増え、ご家族や職員が見守る中で、静かに人生の幕を閉じられます。

しかし、その時間は決して暗いものではありません。

その方が歩んできた人生を、皆で感謝とともに見送る、大切な時間なのだと、私は何度も教えられてきました。


🍀 「ありがとう」が人生を彩る

先日、102歳で安らかな最期を迎えられたご利用者様のお見送りをさせていただきました。

司会を務めながら、その方との日々を思い返していました。

真っ先に浮かんできたのは、いつも穏やかな笑顔と、優しい言葉でした。

体調が優れない日もありました。

思うように身体が動かない日もありました。

それでも、その方は笑顔でこう言ってくださるのです。

「せんせぇ、ありがとごじゃいます。」

食事を運ぶ職員にも。

身体を支える介護士にも。

看護師にも。

掃除をする職員にも。

誰に対しても、感謝の言葉を忘れることはありませんでした。

その一言をいただくたびに、私たち職員の心は温かくなりました。

忙しい一日の中でも、その言葉が疲れをそっと和らげ、「今日も頑張ろう」という力を与えてくれました。

感謝の言葉は、受け取る人だけでなく、伝える人自身の人生も豊かにしていく。

そんなことを、この方は静かに教えてくださいました。


🌸 人の心に残る人生

お見送りの日。

私は司会をしながら、その方が歩んでこられた102年の人生を振り返っていました。

長い人生の中には、きっと楽しいことばかりではなく、苦しみや悲しみもあったことでしょう。

それでも最後まで「ありがとう」を口にし続けたその姿に、胸が熱くなり、思わず涙が込み上げてきました。

私は、ご家族や職員の前でこうお話ししました。

「私も〇〇さんのように、歳を重ねた時には『ありがとう、ありがとう』と言える、職員さんからも愛される、かわいいお年寄りになりたいと思いました。」

そして最後に、

「〇〇さんと過ごさせていただいた日々は、私たちにとっても大切な時間でした。本当にありがとうございました。」

そうお伝えして、お別れをしました。

あらためて感じたのは、人は人生の長さではなく、どれだけ人の心を温かくしたかで記憶されることがあるということです。


🌱 毎日の積み重ねが、その人をつくる

私たちは、自分がいつ人生を終えるのかを知ることはできません。

けれど、今日をどう生きるかは、自分で選ぶことができます。

感謝を伝えること。

思いやりを持つこと。

相手を大切にすること。

そんな何気ない毎日の積み重ねが、その人らしい人生を形づくっていくのでしょう。

介護の現場では、その積み重ねが人生の終盤に自然と表れてくるように感じます。

お見送りの時に語られる思い出。

惜しむ声。

流れる涙。

それらは、その方が周りの人へ残してきた温もりの証なのかもしれません。


📖 「良き名」を残すということ

聖書には、このような言葉がありました。

「良い名は良い香油に勝り、死ぬ日は生まれる日に勝る。」

この言葉を初めて読んだときは、その意味を深く理解できませんでした。

しかし、介護の仕事を通して多くの方を見送る中で、少しずつ分かるようになった気がします。

ここでいう**「良き名」とは、有名になることや立派な肩書きを持つことではありません。**

人から信頼され、愛され、「この人と出会えてよかった」と思ってもらえるような生き方。

そんな人生そのものを表しているのではないでしょうか。

102歳のあの方は、多くの財産を残されたわけではありません。

特別な功績を語られる方でもありませんでした。

それでも、お見送りの日には、ご家族も職員も心から惜しみ、「ありがとうございました」と自然に口にしていました。

私は、その姿こそが「良き名」を残した人生なのだと感じました。


🌿 今日という一日が、未来の自分をつくる

あの日のお見送りを終えてから、私は自分自身に問いかけるようになりました。

もし今日が人生最後の日だったなら、私はどんな人として覚えられているだろう。

「ありがとう」と素直に伝えられていただろうか。

誰かの心を少しでも温かくできていただろうか。

介護の仕事は、命の終わりを見つめる仕事でもあります。

だからこそ、そのたびに「今をどう生きるか」という問いを与えられているように感じます。

人生は、最後の一日だけで決まるものではありません。

今日の一言。今日の笑顔。今日の「ありがとう」。

その小さな積み重ねが、やがて人の心に残る人生をつくっていくのではないでしょうか。

皆さんは、どんな人として心に残る人生を歩みたいと思いますか。

そして、そのために今日から大切にしたいことは何でしょうか。

よろしければ、皆さんのお考えやご経験をコメントでお聞かせいただけたら嬉しいです。

#創作大賞2026
#エッセイ部門

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