ゼッテリアを調べたら“すき家の会社”ではなかった――ゼンショーは、なぜ外食で1兆円企業になれたのか?
先日、テレビで「ゼッテリア」が紹介されていました。
最近よく名前を聞くようになりましたが、
「ロッテリアと何が違うのだろう?」
そんな軽い興味から調べ始めました。
ところが、途中から気になったのはゼッテリアそのものではなく、その親会社でした。
ゼンショーホールディングス(7550)
です。
ゼンショーと聞けば、「すき家の会社」というイメージを持つ方が多いと思います。
しかし現在のゼンショーは、それだけでは説明できません。
2026年3月期の売上高は、
1兆2,640億円。
世界の店舗数は約1万5,000店。
しかも、そのうち海外店舗は約1万店に達しています。
そして驚くのは、その成長スピードです。
2021年3月期に約5,950億円だった売上高は、わずか5年間で約1兆2,640億円まで増えました。
ほぼ2倍です。
さらに2027年3月期には、売上高1兆4,020億円を見込んでいます。
なぜゼンショーは、これほど急速に巨大化できたのでしょうか。
今回は、
「なぜゼンショーは外食で1兆円企業になれたのか?」
という視点から、この会社の強さを掘り下げてみたいと思います。
1.売上1兆円超――しかも成長が止まっていない
まず、ゼンショーの売上高推移を見てみましょう。


わずか5年間で、
約5,950億円 → 約1兆2,640億円。
ほぼ2倍です。
しかも1兆円を超えたところで成長が止まったわけではありません。
2027年3月期について会社側は、
売上高1兆4,020億円
営業利益1,020億円
を見込んでいます。
一般的に企業規模が大きくなればなるほど、高い成長率を維持するのは難しくなります。
それにもかかわらず、ゼンショーは現在も成長を続けています。
ここが、この会社を調べてみようと思った最大の理由の一つです。
2.もう「すき家の会社」ではない
ゼンショーと言えば、真っ先に思い浮かぶのは「すき家」でしょう。
しかし現在の事業構成を見ると、意外な姿が見えてきます。

すき家は確かに巨大ブランドですが、グループ売上全体では約4分の1です。
そして、はま寿司もほぼ同じ規模まで成長しています。
ゼンショーグループには、私たちがよく知るブランドが数多くあります。

つまり現在のゼンショーは、
「すき家の会社」
というより、
「多数の食ブランドを抱える巨大グループ」
として見る必要があります。
3.40年余りで1兆円企業へ
ゼンショーの創業は1982年です。
横浜で事業を始め、その後すき家を展開。
店舗数を増やしながら成長してきました。
ただし、現在の巨大なゼンショーを作ったのは、すき家の出店だけではありません。
大きな転換点となったのが、
M&Aです。
2000年代以降、ゼンショーはさまざまな企業・ブランドをグループに取り込んできました。

国内でブランドを増やす。
海外にも進出する。
必要であれば企業そのものを買収する。
こうしてゼンショーは事業領域を大きく広げてきました。
しかし、会社を買えば自動的に成功するわけではありません。
重要なのは、
「買った後にどうするか」
です。
ここにゼンショーの本当の強さがあります。
4.ゼンショー最大の武器「MMD」
ゼンショーを理解するうえで、最も重要なのが、
MMD
です。
MMDとは、
Mass Merchandising System
(マス・マーチャンダイジング・システム)
の略です。
簡単に言えば、
原材料の調達
↓
製造・加工
↓
物流
↓
店舗
↓
消費者
という一連の流れを、グループ内で一貫して企画・運営する仕組みです。
外食企業というと、どうしても私たちは「店舗」に目を向けます。
ところがゼンショーは、その店舗のさらに後ろにある、
調達・製造・物流まで含めた巨大な食の仕組み
を作っています。
ここが非常に重要です。
5.なぜMMDとM&Aは相性がいいのか
例えば、ゼンショーがある外食チェーンを買収したとします。
その会社が単独で食材を仕入れている場合、当然ながら調達規模には限界があります。
しかしゼンショーグループに入れば、
巨大グループ全体の調達力
を活用できる可能性があります。
物流も同じです。
ブランドごとに別々に配送するより、複数ブランドの商品をまとめて運べれば効率化できます。
つまり、
ブランドを買収
↓
ゼンショーのMMDに接続
↓
調達・製造・物流を効率化
↓
収益力を高める
という流れが作れます。
私は今回ゼンショーを調べていて、
ゼンショーは「ブランドを買う会社」ではなく、
「買ったブランドを巨大な食のインフラにつなぐ会社」なのではないか
と感じました。
単純にM&A件数が多いだけではありません。
買収した企業を受け入れ、グループ全体で効率化するための基盤をすでに持っている。
これがゼンショーの強みなのでしょう。
6.実は「はま寿司」がかなり強い
そして現在のゼンショーの成長を考えるうえで、非常に重要なのが、
はま寿司
です。
ゼンショーと言えばすき家という印象がありますが、直近では、はま寿司の存在感が急速に高まっています。
2027年3月期第1四半期の売上高は、
グローバルはま寿司:約935億円
に対して、
グローバルすき家:約810億円
となりました。
はま寿司が、すき家を上回っています。
では、なぜはま寿司はこれほど伸びているのでしょうか。
一つは、
客数を維持しながら客単価を上げられていること
です。
2027年3月期の4~7月累計では、既存店売上高が前年同期比109.2%。
その内訳を見ると、
客数102.3%
客単価106.8%
となっています。
つまり、
価格を上げながらも客数を増やしている。
ここに現在のはま寿司の強さが表れています。
「すき家」と「はま寿司」では売上の伸ばし方が違う
ここで、すき家とはま寿司のビジネス特性を比較してみます。

もちろん、これは両業態を単純化した比較です。
しかし、売上を伸ばす構造には違いがあります。
すき家は、
安く、早く、気軽に食べられる
ことが非常に大きな強みです。
その反面、日常利用が中心だけに、価格を大きく上げれば消費者の反応も受けやすくなります。
一方のはま寿司は、家族や複数人で利用されることが多く、
寿司だけでなく、
ラーメン
うどん
揚げ物
茶碗蒸し
デザート
高価格帯の期間限定ネタ
など、さまざまな商品を追加できます。
つまり、
単純な「値上げ」ではなく、付加価値を増やすことで客単価を引き上げやすい。
ここは、はま寿司の大きな強みだと思います。
既存店成長+新規出店
さらに、はま寿司では積極的な新規出店も続いています。
つまり、
既存店の売上成長
+
店舗数の増加
という二つのエンジンが同時に動いています。
さらに見逃せないのが、先ほど紹介したMMDです。
寿司チェーンでは魚だけではありません。
米、醤油、海苔、油、麺、肉、野菜、デザートなど、非常に多くの食材を扱います。
それらをゼンショーグループ全体の巨大な調達・製造・物流網に乗せられることは、はま寿司にとって大きな強みになります。
つまり現在のはま寿司は、
「ブランドそのものの人気」
と、
「客単価を引き上げやすい業態」
と、
「ゼンショーの巨大インフラ」
の三つを組み合わせて成長していると考えられます。
今後のゼンショーを見るのであれば、
すき家だけでなく、はま寿司がどこまで伸びるのか
は非常に重要なポイントになりそうです。
7.海外店舗1万店――その正体は?
さらに驚いたのが海外展開です。
2026年3月期時点では、
国内約4,900店
に対して、
海外約1万店。
海外店舗の方が圧倒的に多くなっています。
ただし、
「海外にすき家が1万店ある」
という意味ではありません。
ここで重要なのが、
テイクアウト寿司
です。
ゼンショーは2018年、米国のAdvanced Fresh Concepts(AFC)を取得。
さらに2023年にはSnowFoxを取得しました。

こうした企業は、スーパーなどの売場内で寿司を販売しています。
つまりゼンショーの海外戦略は、
日本の店舗をそのまま海外へ持っていく
だけではありません。
海外企業そのものを買収して、
現地の食市場へ一気に入り込む
という方法も使っています。
すき家。
はま寿司。
テイクアウト寿司。
同じ日本食でも、さまざまな形で世界市場を攻略しているわけです。
8.そしてゼッテリアへ
ここで最初の話に戻ります。
2023年、ゼンショーはロッテリアを取得しました。
そして登場したのが、
ゼッテリア。
「絶品バーガー」と「カフェテリア」を組み合わせたブランドです。


さらに2026年には、ロッテリアを運営してきた会社の社名も、
「株式会社バーガー・ワン」
へ変更されました。
ここからも、ゼンショーがハンバーガー事業を本格的に再構築しようとしている姿勢が見えてきます。
ロッテリア取得時、ゼンショーは、
食材調達・物流・店舗運営などでのシナジー
を期待すると説明しています。
これは、まさに先ほど紹介したMMDの考え方です。
つまりゼッテリアは、
単なる「ロッテリアの看板変更」
ではなく、
ゼンショーが取得したブランドを、自らの仕組みを使ってどこまで成長させられるのか
を見るケースとも言えます。
そしてもう一つ興味深いのが、
ゼッテリアがどのポジションを狙っているのか
という点です。
ゼッテリアが目指しているポジションを整理すると、ロッテリア時代よりも、
「高付加価値」
と、
「カフェ利用」
の方向へシフトしようとしている姿が見えてきます。

横軸は、
低価格・日常性 ←→ 高付加価値
縦軸は、
食事特化 ←→ 食事+カフェ利用
です。
この中で、
マクドナルドは低価格・日常利用寄り。
バーガーキングは、食事としての満足感やボリュームを重視した高付加価値寄り。
モスバーガーは、素材・品質・出来立てへのこだわりが強い高付加価値ブランド。
フレッシュネスバーガーは、さらにカフェ利用とプレミアム志向が強いポジション。
そしてゼッテリアは、
ロッテリアよりも高付加価値かつカフェ利用寄りのポジション
を狙っているように見えます。
ゼッテリアでは「絶品」シリーズを前面に出し、カフェ利用も意識した商品展開を行っています。
ロッテリア時代から単純に価格を大幅に上げたというより、
高付加価値商品を増やし、ブランドとしての価値を引き上げようとしている
と見る方が良さそうです。
つまり、
ロッテリア → ゼッテリア
という変化は、
単なる名称変更ではなく、
ブランドの立ち位置そのものを一段上へ動かそうとする試み
なのかもしれません。
ゼンショーの調達力、物流力、店舗運営力を使いながら、既存ブランドをどう再構築していくのか。
ゼッテリアは、ゼンショーのM&A後の再生能力を見るうえでも興味深い存在です。
今後どこまで店舗を増やし、ブランドとして定着していくのか。
ここは注目したいところです。
※ポジショニングマップは、各ブランドの商品構成・価格帯・利用シーンなどをもとに筆者が整理したものです。
9.ゼンショーの「成長の自己増殖モデル」
ここまで見てくると、ゼンショーが急成長している理由が少しずつ見えてきます。
ゼンショーの成長モデル
ブランド・店舗が増える
↓
調達量が増える
↓
MMDの効率が上がる
↓
利益・キャッシュフローが増える
↓
出店・M&Aへ再投資する
↓
さらにブランド・店舗が増える
この循環です。
つまりゼンショーの本当の強さは、
「会社が大きいこと」ではありません。
むしろ、
「大きくなるほど強くなる仕組みを持っていること」
なのではないでしょうか。
店舗が増えれば調達力が高まる。
調達量が増えれば物流効率も上げられる。
その結果生まれた利益やキャッシュを使って、新しい店舗やM&Aへ投資する。
そして、さらに規模が拡大する。
この自己増殖的な成長モデルこそ、ゼンショーを1兆円企業まで押し上げた大きな要因だと考えています。
10.もちろんリスクもある
ここまで書くと、ゼンショーは非常に魅力的な会社に見えます。
しかし当然リスクもあります。
大きく分けると、私は4つあると思います。
① 人件費・原材料価格の上昇
外食産業では人件費の上昇が続いています。
さらに米、肉、魚、油などの食材価格上昇も利益を圧迫します。
ゼンショーは巨大な調達力を持っていますが、それでも影響を完全に避けることはできません。
② M&A拡大に伴う負債
ゼンショーはM&Aを積極的に活用して成長してきました。
その一方で、借入金などの有利子負債もあります。
買収した企業が期待通りの利益を生み続けられるかどうかは、今後も確認する必要があります。
③ 海外事業の管理難度
海外店舗が国内を大きく上回るようになったことで、
為替、現地景気、法規制、人材管理などの影響も大きくなります。
世界規模で事業を管理する難易度は、当然高くなります。
④ 高い株価評価
そして投資家にとっては、これも重要です。
ゼンショーの成長力は市場からすでに高く評価されています。
そのため、
成長率が市場予想を下回った場合、株価が大きく調整する可能性
には注意が必要です。
良い会社であることと、株価が常に安全であることは別問題です。
11.会社は魅力的。でも株価は安いのか?
では、投資対象としてゼンショーをどう考えるか。
ここは少し冷静に見ておきたいところです。
2026年9月2日の終値は、
11,480円。
予想PERは、
約33倍。
PBRも、
約6.5倍
という高い水準まで評価されています。
これは明らかに、
「安いから買われている株」
ではありません。
市場はすでに、
今後の利益成長
はま寿司
海外展開
M&A
MMD
ゼッテリアなど新しい成長余地
への期待をかなり織り込んでいると考えられます。
ただし、
PER33倍だから必ず割高
とも言い切れません。
仮に利益成長が高い水準で長期間続けば、高いPERが正当化される可能性もあります。
重要なのは、
「この成長を何年続けられるのか」
です。
逆に成長率が鈍化した場合には、高いPERそのものが株価下落要因になる可能性があります。
ここで忘れてはいけないのは、
「良い会社」と「今買うべき株」は同じではない
ということです。
会社としてのゼンショーは非常に魅力的です。
一方、投資対象として見るなら、
将来の利益成長と現在の株価評価のバランス
を慎重に見ていく必要があります。
まとめ――ゼッテリアの先に見えた「食の巨大企業」
今回、テレビで見たゼッテリアが気になったことから、親会社のゼンショーを調べ始めました。
しかし調べてみると、
「すき家の会社」
というイメージは大きく変わりました。
ゼンショーの強さは、
すき家だけではありません。
急成長するはま寿司。
世界へ広がる寿司事業。
数多くの外食ブランド。
積極的なM&A。
そして、それらを支えるMMD。
これらが一つにつながっています。
特に興味深いのは、
規模が大きくなるほど、その規模自体が次の成長を生み出す
という構造です。
ブランドが増えれば調達量が増える。
調達量が増えればMMDの効率が高まる。
利益とキャッシュフローが増えれば、さらに出店やM&Aができる。
そしてまた規模が大きくなる。
つまりゼンショーは、
「大きい会社」なのではなく、
「大きくなるほど強くなる会社」
なのかもしれません。
その象徴の一つが、現在急成長しているはま寿司です。
すき家とは違い、家族・複数人利用が多く、豊富なメニューを使って付加価値を高めることで、客単価を引き上げる余地があります。
そしてゼッテリアもまた、ロッテリアという既存ブランドをゼンショーの巨大な仕組みに接続し、どこまで成長させられるのかを見る新しい挑戦です。
2021年3月期に約5,950億円だったゼンショーの売上高は、
2026年3月期には、
約1兆2,640億円。
わずか5年間でほぼ2倍になりました。
そして会社が次に目指すのは、
1兆4,000億円。
もしかすると、
売上1兆円はゴールではなく、単なる通過点だったのかもしれません。
ゼッテリアを調べたことで見えてきたのは、
一つのハンバーガーチェーンではなく、
世界規模の「食のインフラ」を作ろうとしている巨大企業
でした。
今後もゼンショーの成長を追っていきたいと思います。
※本記事は企業分析を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

