まだ9月なのにインフルエンザ流行入り――恩恵を受ける関連株5選を調べてみた
「インフルエンザが流行するのは冬」
そんなイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。
ところが2026年8月28日、厚生労働省から少し気になる発表がありました。
8月17日~23日のインフルエンザの発生状況について、定点当たり報告数が流行開始の目安となる「1.00」を上回り、流行入りしたのです。
まだ9月です。
これから秋、そして本格的なインフルエンザシーズンである冬を迎えます。
もしこのまま感染者が増えていけば、医薬品や検査薬、ワクチンなどの需要も増えていく可能性があります。
そこで今回は、
「インフルエンザが流行すると、どの企業が恩恵を受けるのか?」
という視点から、インフルエンザ関連銘柄を見ていきたいと思います。
インフルエンザが流行すると、どこにお金が流れるのか
インフルエンザ関連企業を考えるうえで重要なのは、
「感染者が増えると、何が売れるのか」
ということです。
大きく分けると、インフルエンザに関連する市場には3つの段階があります。
①予防する
→ ワクチン
②感染したか調べる
→ 診断・検査キット
③感染した人を治療する
→ 抗インフルエンザ薬
つまり、
ワクチン → 診断 → 治療
という一連の流れのどこに企業が関わっているのかを見ると、「インフルエンザ流行の恩恵を受けやすい企業」が見えてきます。
今回は、この視点から5社を取り上げます。

それぞれ見ていきましょう。
① デンカ(4061)
「予防」と「診断」の両方を持つ
今回、個人的にまず注目したいのがデンカです。
「デンカ」と聞くと、電子材料などを手掛ける化学メーカーというイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし同社にはライフサイエンス関連事業があり、
インフルエンザワクチン
に加えて、
感染症の抗原迅速診断キット
も手掛けています。
ここが面白いところです。
インフルエンザが流行すると、
流行への警戒
↓
ワクチン接種
↓
感染者増加
↓
医療機関で検査
↓
診断キット需要増加
という流れが発生します。
つまりデンカは、インフルエンザ市場における
「予防」と「診断」
の両方に関わっています。
特に感染者が増えれば、医療機関で行われる検査の回数も増える可能性があります。
患者数の増加が比較的ストレートに需要増加へつながることを考えると、インフルエンザ関連株としては分かりやすい企業の一つです。
② 塩野義製薬(4507)
「感染症のSHIONOGI」の本領発揮?
次に注目したいのが塩野義製薬です。
同社には抗インフルエンザウイルス薬
「ゾフルーザ」
があります。
ゾフルーザの特徴の一つが、1回の経口投与で治療を完結できることです。
インフルエンザ患者が増えれば、
感染者増加
↓
医療機関受診
↓
インフルエンザと診断
↓
抗インフルエンザ薬の処方増加
という流れが考えられます。
つまり塩野義製薬は「治療」という段階で、インフルエンザ流行の恩恵を受ける可能性があります。
また、塩野義を考えるうえでは単純にゾフルーザの売上だけを見るのではなく、
「感染症に強い製薬会社」
という同社の特徴にも注目したいところです。
COVID-19を経験したことで、世界的に感染症対策への関心は以前より高まっています。
インフルエンザ流行が長期化・大規模化した場合、「感染症のSHIONOGI」という企業イメージが改めて意識される可能性もあります。
もちろん、インフルエンザ治療薬だけで塩野義全体の業績が決まるわけではありません。
それでも今回の5社の中では、インフルエンザとの結び付きが比較的分かりやすい企業だと考えています。
③ H.U.グループホールディングス(4544)
患者が増えれば「検査」が増える
3社目はH.U.グループホールディングスです。
同社傘下の富士レビオは、感染症などに使用される迅速診断薬を手掛けています。
インフルエンザが疑われる患者が医療機関を受診した場合、まず重要になるのが
「本当にインフルエンザなのか」
を確認することです。
特に発熱や咳、倦怠感といった症状だけでは、
インフルエンザ
COVID-19
その他の呼吸器感染症
を見分けるのが難しいケースがあります。
そのため、
感染者増加
↓
受診者増加
↓
検査件数増加
という流れが生まれます。
治療薬の場合、どの薬が処方されるかによって需要が分散します。
一方、診断薬メーカーの場合は、
「まず検査する」
という段階で需要が発生します。
その意味では、インフルエンザの流行が拡大した場合、診断薬メーカーは比較的分かりやすい恩恵を受ける可能性があります。
④ 第一三共(4568)
「イナビル」という治療薬を持つ
第一三共もインフルエンザ関連銘柄の一つです。
同社には抗インフルエンザウイルス薬
「イナビル」
があります。
ゾフルーザが経口薬であるのに対し、イナビルは吸入タイプの治療薬です。
インフルエンザ患者が増えれば、こうした治療薬の需要増加も期待できます。
ただし、投資という視点では少し注意が必要です。
現在の第一三共においては、抗体薬物複合体(ADC)を中心としたがん領域が、非常に重要な成長ドライバーとなっています。
そのため、
「インフルエンザが流行したから第一三共の業績が大きく変わる」
と考えるのは少し無理があります。
インフルエンザ流行はあくまで、
業績にプラスとなる可能性がある材料の一つ
くらいに考えておくのが良さそうです。
⑤ 明治ホールディングス(2269)
実はワクチンメーカーでもある
最後は少し意外な銘柄です。
明治ホールディングス。
「明治」と聞けば、
チョコレート
ヨーグルト
牛乳
などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
しかし明治グループには医薬品事業があり、傘下にはワクチンを手掛けるKMバイオロジクスがあります。
つまり明治HDには、
食品会社
という顔だけではなく、
ワクチン・医薬品企業
というもう一つの顔があります。
インフルエンザへの警戒が高まれば、ワクチン接種への関心も高まる可能性があります。
一方で、明治HDは食品事業の規模も非常に大きいため、インフルエンザワクチンの販売増加だけで会社全体の業績が大きく変化する可能性は限定的です。
その意味では、インフルエンザ関連株としての「純度」は、デンカや塩野義製薬より低いと考えています。
「恩恵を受ける会社」=「株価が上がる会社」ではない
ここで一つ、注意しておきたいことがあります。
インフルエンザが流行する=関連企業の株価が上がる
とは限りません。
重要なのは、
インフルエンザ関連事業が、その会社全体の売上や利益にどれだけ影響するのか
という点です。
例えば同じ治療薬を持っていても、その製品が会社全体の売上に占める割合が小さければ、インフルエンザが流行しても業績へのインパクトは限定的です。
逆に、診断薬やワクチンなどの売上が事業部門にとって大きければ、流行拡大が業績に与える影響も大きくなります。
テーマだけを見るのではなく、
「そのテーマが利益にどれだけ効くのか」
を見極めることが、関連銘柄を選ぶうえでは重要だと思います。
では、どの銘柄が一番面白いのか?
今回紹介した5銘柄を、
ワクチン・診断・治療
という3つの視点で整理すると、次のようになります。

こうして比較すると、それぞれの企業がインフルエンザ市場のどこで恩恵を受けるのかが分かりやすくなります。
なかでも今回、特に注目したいのは、
デンカ
そして
塩野義製薬
の2社です。
デンカは、
「ワクチン+診断」
の2つの領域に関わっています。
一方、塩野義製薬は抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」を持ち、
「治療」
の領域で直接的な恩恵が期待できます。
同じインフルエンザ関連株でも、
予防で恩恵を受ける会社
診断で恩恵を受ける会社
治療で恩恵を受ける会社
では、業績への影響の出方が違います。
流行の進み方を見ながら、
「いま、どの段階の需要が最も増えているのか」
を考えることも、関連銘柄を選ぶ一つのポイントになりそうです。
大切なのは「流行入り」よりも、この先
ただし、今回の厚生労働省の発表だけを見て、
「インフルエンザ関連株を買おう」
と考えるのは少し早いと思います。
重要なのは、
これから感染者数がどう推移するのか
です。
厚生労働省からは今後も毎週、インフルエンザの発生状況が公表されます。
ここから定点当たり報告数がさらに増えていくのか。
それとも一時的な増加にとどまるのか。
もし、
9月
↓
10月
↓
11月
と感染者が増え続け、本格的な冬のシーズンを迎えることになれば、
「2026年はインフルエンザの流行が早い」
というテーマが株式市場でも意識される可能性があります。
今後、何をチェックすればいいのか?
今後インフルエンザ関連株を追うのであれば、私は次の4点をチェックしていきたいと思います。
① 定点当たり報告数
まず最も重要なのが、厚生労働省が公表するインフルエンザの患者数です。
単に「流行入りした」というニュースだけを見るのではなく、
患者数が毎週増えているのか
を確認する必要があります。
② 前年同期との比較
今年の患者数だけを見るのではなく、
昨年の同じ時期と比べて多いのか
を見ることも重要です。
例年より明らかに早いペースで感染が拡大しているのであれば、関連企業への業績インパクトも大きくなる可能性があります。
③ ワクチン接種の動向
感染者が増えると、
「自分も感染するかもしれない」
という意識が高まり、ワクチン接種への関心が高まる可能性があります。
これはデンカや明治HDなどを見るうえで重要なポイントです。
④ 診断薬・治療薬の販売動向
最終的には、
実際に商品がどれだけ売れたのか
を見る必要があります。
患者数が増えても、企業の売上や利益に反映されなければ投資材料としての意味は小さくなります。
決算説明資料などで、
診断薬
ワクチン
抗インフルエンザ薬
の販売状況について言及されているかを確認していきたいところです。
まとめ
株式投資の面白いところは、ニュースそのものを見るだけではなく、
「そのニュースによって、誰の商品が売れるのか」
まで考えることだと思います。
インフルエンザが流行する。
そこで思考を止めるのではなく、
患者が増える
↓
検査が増える
↓
治療薬が使われる
↓
ワクチンへの関心も高まる
↓
では、どの会社の売上につながるのか?
と、一歩先まで考えてみる。
すると、
デンカ
塩野義製薬
H.U.グループHD
第一三共
明治HD
といった企業が浮かび上がってきます。
ただし、
「関連銘柄だから株価が上がる」
というほど株式投資は単純ではありません。
重要なのは、その事業が会社全体の利益にどれだけ貢献するかです。
今回の流行入りが一時的なものなのか。
それとも、これから始まる大きな流行の入口なのか。
今後発表される患者数と、各社の業績を継続して追っていくことで、意外な投資のヒントが見えてくるかもしれません。
※本記事は特定銘柄への投資を推奨するものではありません。記事の内容は情報提供を目的としたものであり、投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

