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一人の人生が歴史を作る瞬間に触れたとき

シドニーはすっかり冬を迎え、朝晩の冷え込みが一段と厳しくなってきました。日本は反対に、すでに猛暑が続いているようですね。どうぞ熱中症にはくれぐれもお気をつけください。

先日、先週から始まったオーストラリア先住民(アボリジニ)YIRRKALAのアート展を、Art Gallery NSW(ニューサウスウェールズ州立美術館)に観に行ってきました。

とてもラッキーなことに、美術館で日本語ガイドをされているChieさんに偶然お会いし、モック練習のお付き合い…というより、ほぼプライベートガイドのような形でご一緒させていただきました。

これまで私は、絵を観るときは一人で静かにゆっくり巡るのが好きでしたが、ガイドの方のお話を聞くことで、作品の奥にある深い意味に触れることができるのだと、改めて感じました。

特に今回は、アボリジニアートが彼らの歴史そのものであり、文化やアイデンティティと深く結びついていることを、Chieさんの説明を通してより深く理解することができました。

【『Yolŋuの力』ーアートが語る、文化の誇りと魂】

展示会のタイトルは『Yolŋuの力』。
オーストラリア・ノーザンテリトリー州のYirrkala(イラカラ)で生まれた非凡なアーティストたちと、彼らのアートが持つ圧倒的な力を、1940年代から現在に至るまでの作品を紹介しています。

この展示では、Yirrkalaの歴史の中でアーティストたちがどのように意識的に制作スタイルを変化させ、新しいスタイルや新しいテクノロジーを取り入れてきたプロセスが丁寧に描かれています。
そして、世代を超えて受け継がれる作品群は、家族のつながり、そして文化の継続性を語っています。


【戦わずに伝えるーYirrkalaアートのメッセージ】

もともとアボリジニの人々が住んでいた土地に、西洋の人々がやって来たことで、彼らの生活は大きく変わらざるを得ませんでした。
現代とはまったく異なる暮らしをしていた人々が、理不尽で理解できないルールや制度のもとに置かれたのです。

それはまるで、暮らしや誇りを壊されるような感覚だったのではないでしょうか。

そんな中、一人のアーティストが武力ではなく、「アート」で自分たちの暮らしや文化の尊さを訴えました。
それは、自分たちに代々受け継がれてきた大切な文化──アートというかたちの “言葉” であり、“記憶” であり、“魂” そのものだったのです。



【アートは、愛からの選択だった】

Yirrkalaのアーティストたちは、約100年もの間、アートを文化的な「外交手段」として使い続けてきました。西洋からの支配や制度に対して、「戦う」のではなく、「語りかける」方法として、彼らはアートを選びました。

アート作品の多くは、本来は家族の中だけで継承されてきた神聖なものだから、外の世界には見せることがなかった!それをあえて公開し、共有するという選択は、「対立」ではなく「対話」、そして「愛」を選んだということなのかもしれません。

今、世界では心を痛めるような戦争や対立が続いています。
だからこそ私は思います。
Yirrkalaのアーティストたちのこの選択と行動を多くの人に知ってほしいと!


【この時代に届けられた100年前の祈り】

なぜ、このタイミングでYirrkalaのアートが展示されたのでしょうか。
彼らのアートは、オーストラリアだけではなく、世界に向けての「静かなメッセージ」のように!

100年近く前に描かれた一つの作品が、今の国際社会に大切なことを問いかけている ── そんな風に、私は感じています。


The Art of YIRRKALAは10月6日まで、NSW州立美術館で開催されています。日本語ガイドは、7月中毎週日曜日11時から行われています。ぜひ、Chieさんの説明と一緒に、彼らの心とスピリットを感じる貴重な時間を体験してください。


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