笑郷まほろば視察(奈良県香芝市)
旅する空想図書室「まなぶっく」代表のよっしーです。今回は奈良県香芝市で活動されている笑郷(えこ)まほろばさんに視察に伺った記録です。
トランジションタウンの拠点として
近鉄大阪線関屋駅から歩いて10分ほどの場所にある、古民家を改修した「竹の杜茶論」。笑郷まほろばは、2016年10月にエコビレッジの専門家を講演会講師に招いたのをきっかけに、地域のラジオ体操仲間が集まって活動を開始しました。
次世代の子どもたちに豊かな自然と地域のあたたかな人の輪を残すことを、設立の理念にされています。

ラジオ体操仲間から育ったコミュニティということで、もともと顔見知りな点が連帯感の醸成につながったようです。
使われなくなった古民家を借り受け、活動開始から2年をかけてメンバー総出で雨戸や床材などをメンテナンスして誕生した竹の杜茶論。その名のとおり庭の随所に竹が生え、屋内では竹の根っこで作ったシャンデリアが私たちを出迎えてくれました。
薬草茶と清水で淹れたコーヒー、竹に巻きつけて庭のたき火で焼いたパンをご馳走いただき、お話を伺いました。

竹の杜がコミュニティを生む根っこに
竹の杜というコミュニティ拠点が根を張ることで、地域の方による様々な活動が派生的に生まれてきました。
毎月第1土曜日の自然観察会、第3土曜日に景勝地・屯鶴峯周辺の清掃活動を行う「どんづる峯の森」、国際問題に関する勉強会、地域への宅配サービスなど多彩な企画がメンバーの皆さんによって作り出されています。行政への提言も積極的になされ、地域の課題解決に寄与する役割も担っています。

竹の杜の下にはビオトープと田畑があり、ここもうっそうとしていた藪をみんなで開墾して設けたのだとか。地域での空き家活用も進み、絵本文庫トットロが設けられるなどまち全体に活動が広がっています。
メンバーの方によると、地域活動を広めるには源泉となる市民力が必要不可欠だそうです。香芝市は地域課題に関心を持つ住民が多く、行政にも動く職員がおられたことから、竹の杜を中心にしたまちづくり活動のスピードが上がったそうです。
私も各地の図書館や本をテーマにしたコミュニティスペースを取材するなかで、「まちライブラリーを開いてみたけどこの街では根づかなかった」「新しいイノベーションが起こる住民気質ではない」など、地域による色合いの違いがまちづくりに影響を及ぼすとの声を聴いてきました。それだけに香芝市穴虫地区の皆さんの課題意識と行動力には圧倒されました。

世代間の”のりしろ”をつなぐサードプレイス
近年サードプレイスという言葉が注目されています。公園や駄菓子屋、喫茶店など昔は当たり前のように交流空間として使われていた場所が減ってきたからこそ、その重要性が叫ばれているのかもしれません。
かつての日本では高齢者と若者が交流する場所が随所にありました。私自身三世代同居の家で30年近く暮らし、おじいちゃんおばあちゃんの考え方や地域の人の温かみに幼いころから育てられた実感があります。
核家族化が進む現在では世代間の分断が進み、高齢者は非生産的な人材と位置づけられてしまっているそうです。そうじゃない、65歳以上の私たちは次の世代・社会づくりを担う「社会的貢献世代」なんだとメンバーの方は力説されていました。
車座になって皆さんとお話をしていると、生き字引ならではの知恵や経験を学ぶことができます。
ご自身の父親が戦争への思いを涙して語っていたこと、メディアの情報をうのみにせず自分でデータソースを探っていく大切さ、行政を敵視せず一緒に活動に取り込むためのアプローチなど、広い視野で地域や社会に役立とうとする使命感が伝わってきました。
竹の杜では田植えや学校での講演会など、子どもたちとつながる活動にも力を入れておられます。飼われているうさぎの親子は大人気なんだとか。
どんづるぼうを登る

竹の杜に続き、屯鶴峯での清掃活動にも参加させていただきました。二上山はかつて火山だったそうで、噴火時に流れ出た溶岩が固まり、地殻変動や風化を経てカッパドキアのような奇岩が作り出されています。
岩はもろく、崩れた砂礫が谷筋の川底にたまっています。「どんづるぼうの森」では、周辺の清掃活動に加えて登山道の整備もしており、新しく開通した道も通らせていただきました。
私は中学~大学時代、地元の間伐作業のボランティアに参加した経験があります。道なき道を切り拓き、伸びた枝や下草を刈り、階段を作るなど体力のいる作業です。
屯鶴峯に至る道すがらも、皆さんが鎌を手に伸びた竹や道をふさぐ木を伐採されていきます。地域のために汗を流すことが生きがいになるのは素敵でかっこいいですし、笑顔で活動についてお話される姿からは誇りも感じられました。
土や木と触れ合うことで、自然のエネルギーが私の中にも満たされました。笑郷まほろばの名前のとおり、環境保護やパーマカルチャーが活動の大きなテーマの一つであり、自然とともに生きているからこそ自然体な活動が育まれているのかもしれません。

屯鶴峯の近くには、旧日本軍が本土決戦に備えて設けた地下壕が残っています。実際に使われることはなかったものの、朝鮮半島からの動員兵も開削に携わるなど貴重な戦争遺産となっています。網の目のように2kmにわたって張り巡らされているそうで、ヘルメット着用で中を案内いただくこともできます。
活動への種

今回の見学で、私は地域活動を続けるヒントを学びました。
①民による地域コモンズは力強い
住民参加というワードはよく耳にします。しかし、メンバーの方によると住民主体であることが重要だそうです。
公園や図書館などの地域コモンズを行政が取り込むと、人員やランニングコストなど負担がのしかかり、運営に創造性を持たせることが難しくなってしまいます。
公が設けたものや仕組みに住民を参加させるのではなく、管理も含めて住民主導でコミュニティづくりを行うことで、竹のようにしなやかで力強い場が育ちます。
②未完成の状態でありつづける
竹の杜では次回の日程や活動内容の相談がされていました。空間ができたのはゴールではなく、活動のスタートにすぎません。そこから常に新しい活動が生まれてきたからこそ、今の笑郷まほろばの成長があります。
公共施設の場合、できた瞬間から陳腐化が始まっていきます。どんなに素敵な施設であっても、40年後にはニーズに合わない旧態依然としたものになる。そんな事例を私は目にしてきました。
未完成のままだからいい。みんなを巻き込んでアイデアを形にする住民側のコンサルが必要だよね。メンバーの方の言葉が印象的でした。
③自由であること
活動のエキスパートとなる住民側のコンサルは少人数で構わない。トップダウンですべての方向性を決めると息苦しいコミュニティになってしまう、とメンバーの方はおっしゃいます。私自身、宇治市で「大人の夜学」に取り組んだ際、こうしたい!との気持ちが強すぎて寄合を閉鎖的にしてしまった経験があります。
来た人が思い思いに空間を使って好きなことをやる。本来公民館に求められる役割かもしれませんが、ルールはあえて設けず自由度を高めることで、伸び伸び息抜きができるサードプレイスが育つのだと学びました。
図書館も、静かにしないとダメ、飲食しちゃダメ、社会教育目的でしか使えないなど数多くのルールが可能性を狭めてしまっているように思います。
住民主体、未完成の継続、そして自由。これからの活動をみんなで広げていくうえで大切な種の数々を笑郷まほろばの皆さんからいただきました。
笑郷まほろばさんの活動はホームページでも詳しく発信されています。興味のある方はぜひご覧ください⭐
