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資源の価値は誰のものか——AI時代の地方と交渉力

前回、Agoraで「AI時代は資源の定義を書き換える」

という記事を書きました。

noteにも「AI時代の水と電力ーー資源の定義が変わる日」という記事も書きました。

これまで価値が低いと考えられていたものが、AI時代には新しい意味を持つかもしれない。

記事を書いたあと、さまざまな反応をいただいた。

面白いという声もあった。

一方で、

「本当にそんな時代が来るのだろうか」

という声もあった。

どちらの反応も理解できる。

ただ、記事を書いたあとで私自身が気になったことがある。

もし本当に地方の価値が上がるとして、

その利益は誰のものになるのだろうか。

地方は豊かになるのだろうか。

それとも別の誰かが豊かになるだけなのだろうか。

今回はそんなことを考えてみたい。

AI時代の過疎地はなぜ注目されるのか

AIブームによって世界中でデータセンター建設競争が起きている。

データセンターはどこにでも建てられるわけではない。

必要なのは、

  • 電力

  • 通信

  • 土地

  • 冷却能力

である。

特に近年は、AIが生み出す膨大な熱をどう処理するかが重要になりつつある。

そうなると、

  • 豪雪地帯

  • 地下水が豊富な地域

  • 人口密度の低い山間部

が候補地として浮上する。

これまで弱みだと思われていた条件が、別の文脈では強みに変わる。

私はこの構造そのものが面白いと思っている。

しかし、本当に気になるのは立地の話ではない。

価値が生まれたとき、その価値は誰のものになるのだろうか。

その問いである。

メガソーラーが教えてくれたこと

このことを考えていて、私はメガソーラーの議論を思い出した。

多くの地域では、

荒れ地が活用できる。

固定資産税が入る。

地主に収入が入る。

そんな期待から歓迎された。

もちろん、それ自体は間違いではない。

実際に利益を得た人もいるだろう。

ただ、その後になると別の話も聞こえてくるようになった。

景観の問題。

災害リスク。

地域との対立。

利益の域外流出。

太陽光発電が悪いと言いたいわけではない。

私が気になったのは、

地域は本当に自分たちが渡したものの価値を理解していただろうか、

ということである。

これはデータセンター誘致でも同じかもしれない。

地方が売るのは土地ではない

私たちはつい、

土地を売る。

土地を貸す。

という発想で考えてしまう。

しかしAI時代のデータセンター立地を考えると、実際に評価されているのは土地そのものではない。

その土地が持つ環境条件である。

地下水。

冷涼な気候。

豪雪による冷熱。

豊富な電力。

通信網。

社会的な安定性。

つまり地方が持っているのは土地ではなく、

複数の資源が組み合わさった環境そのものなのである。

もしそうなら、

売っているものの価値は、私たちが思っているより大きい可能性がある。

見えない価値は交渉できない

問題はここからだ。

価値が見えていないものは交渉できない。

たとえば、

地下水利用の価値。

排熱利用の価値。

将来の産業誘発効果。

周辺インフラ整備の価値。

雇用創出の価値。

これらは帳簿には載っていない。

しかし存在しないわけではない。

見積もられていないだけである。

そして見積もられていない価値は、往々にして安く扱われる。

私は地方が搾取されていると言いたいわけではない。

むしろ逆だ。

価値を理解していない状態で交渉に入ると、本来得られたはずの利益を自ら手放してしまう可能性がある。

そのことを心配している。

反対運動だけでは解決しない

こういう話をすると、

だから企業を入れるな。

だから反対運動をしろ。

という議論になりがちである。

しかし私はそうは思わない。

地方に必要なのは拒絶ではない。

理解である。

自分たちが何を持っているのか。

その価値はいくらなのか。

何を渡し、

何を残し、

何を交換条件にするべきなのか。

そこを理解した上で交渉することが重要なのだと思う。

企業が悪いのではない。

自治体が悪いのでもない。

価値の見積もりが存在しないことが問題なのである。

AI時代に必要な交渉力とは何か

交渉力という言葉を聞くと、

声が大きい人。

押しが強い人。

相手を論破する人。

そんなイメージを持つ人もいるかもしれない。

しかし最近、私は少し違う考えを持つようになった。

交渉力とは、

相手より強く主張する力ではない。

自分たちが何を持っているのかを理解する力ではないか。

そして、

その価値を見積もる力ではないか。

そう思うようになった。

結論

AI時代によって、

地方の価値は変わるかもしれない。

地下水。

冷涼な気候。

豪雪。

過疎地。

これまで見向きもされなかったものが、新しい資源として評価される可能性がある。

しかし本当に重要なのは、

価値が生まれることではない。

その価値を誰が理解し、

誰が受け取り、

誰が未来のために活用するのかである。

私は最近、

地方に必要なのは補助金でも反対運動でもなく、

まず自分たちの価値を見積もる力なのではないかと思うようになった。

価値を理解していなければ交渉はできない。

そして交渉できなければ、価値が生まれても豊かにはなれない。

AI時代の地方創生とは、

もしかすると新しい産業を探すことではなく、

自分たちがすでに持っている価値を見つけ直すことなのかもしれない。

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