【実話怪談】単身赴任の部屋、深夜2時に増える『靴』
単身赴任の部屋、深夜2時に増える「靴」
玄関に、見覚えのない靴が増えている。
最初は気のせいだと思った。でも三日目の朝、数えてみると、間違いなく一足多かった——。
田中さん(仮名・42歳)は、この春から単身赴任で古いマンションの一室を借りていた。
築30年以上の物件だが、家賃の安さに惹かれて即決した。荷物を運び込んだ日、不動産屋の担当者が一瞬だけ言葉に詰まったことを、田中さんは後になって思い出すことになる。
「事故物件……ではないですよね?」
「いえいえ、そういうのは告知義務がありますから、大丈夫です」
その答えに、少しだけ引っかかるものがあった。けれど新生活の忙しさに紛れ、田中さんはすぐにその違和感を忘れてしまった。
異変に気づいたのは、引っ越しから二週間ほど経った頃だった。
仕事から帰ると、玄関に自分のスニーカーが二足並んでいた。
一足しか持ってきていないはずなのに。
「また忘れ物でも届いたか」
そのときはそう思い、深く考えなかった。翌朝、余分な一足はなくなっていた。片方だけ買った覚えもない、見たこともない色のスニーカーだった。
それから、靴が「増える」現象は少しずつ頻度を増していった。
パンプス。革靴。子供用の小さな運動靴。
どれも、田中さんの家族のものではない。
不思議なことに、増えるのはいつも深夜だった。田中さんは試しに、寝る前に玄関の写真をスマホで撮っておくことにした。
深夜2時、ふと目が覚めた。喉が渇いて水を飲みに行こうとしたとき、廊下の奥、玄関のあたりでカサ、と何かが擦れる音がした。
息を潜めて様子を伺う。
暗闇の中、玄関のたたきに、誰かがしゃがみこんでいるような影があった。
田中さんは声も出せず、その場に立ち尽くした。
影は、ゆっくりと靴を並べているように見えた。まるで、これから誰かを――家族を――迎え入れる準備をするかのように。
「……あの」
思わず声をかけると、影はぴたりと動きを止めた。そして、ゆっくりとこちらを振り向いた。
顔はなかった。
いや、正確には、顔があるべき場所に、のっぺりとした暗闇があるだけだった。
翌朝、田中さんは玄関を確認した。写真と見比べると、明らかに靴の数が増えていた。しかも今度は、小さな子供用の靴が二足。
田中さんには、まだ子供はいない。
不動産屋に問い合わせても、「そのような話は聞いたことがない」の一点張りだった。だが近所の人に何気なく聞いてみると、ある高齢の住人がぽつりとこう言った。
「あの部屋、昔ね……家族ごと、誰かを待ってるまま出ていったのよ。理由は知らないけど」
その日以来、田中さんは深夜2時に絶対に起きないよう、耳栓をして眠ることにしている。
そして今も、朝起きるたびに、玄関の靴の数をそっと数えているという。
もし、あなたの家の玄関に、覚えのない靴が増えていたら――。
それは、誰かがまだ、家族が揃うのを待っているのかもしれません。
あなたなら、この状況でどうしますか?
引っ越しますか、それとも住み続けますか?
少しでもゾッとしたら「スキ」をお願いします。スキを押すと、この話のもう一つの結末が見れるかも……?
