【Audible】答えより、その人の頭の中が面白い―小川哲『君のクイズ』
Audibleで小川哲さんの『君のクイズ』を聴きました。
競技クイズの大会で対戦した二人。最後の問題で、まだ問題文が読み上げられていないのに、相手が正解を答えてしまいます。
最初は「やらせなんじゃないの?」と思うわけです。私も思いました。
でも、負けた主人公は、その答えがどうして可能だったのかを調べ始めます。
当日の映像を何度も見返し、自分と相手がどんな動きをしていたのか、出題者の口の動き、声の出し方、さらには音の残響まで観察していく。
これが、ものすごく面白かったです。
私はクイズ番組をほとんど見ないので、競技クイズの世界にも詳しくありません。でも、クイズをやっている人たちの頭の中って、こんなことになっているのか、と。
もちろん、ものすごい量の知識が頭の中に入っていることにも驚きます。でも、それだけじゃないんですね。
問題を読む人のちょっとした口の動きや発声、間の取り方、音の響きまで手がかりにしている。「本当に人間って、そんなことまで分かるの?」と思いながら聴いていました。
でも、そういうことを積み重ねて正解し続ける人たちがいるんでしょうね。
クイズは「答える」だけじゃない
面白いなと思ったのが、クイズクラブでは、問題に答えるだけではなく、自分たちで問題を作ることもしているというところ。
これは学び方としても、かなり面白い方法なんじゃないかなと思いました。
何かを知識として覚えるだけじゃなくて、「どういう問題にしたら、その知識を問えるんだろう」と考える。それだけでも、かなり深くそのことを理解することになりそうです。
物語のほうは、最初は「どうして問題を聞かずに答えられたのか」という謎を追っていく話なのですが、だんだんと、対戦相手がどんな人だったのかというところにも興味が移っていきます。
そして、直接会って話を聞くことで、最初に抱いていた「ずるをしたのでは?」という疑いそのものが、少しずつ揺らいでいく。
そこからさらに話が動いていくのが、この小説の面白いところでした。
私は最後まで結構驚かされました。
クイズに人生をかけるということ
聴き終わってみると、これはクイズ番組の話というより、競技クイズに対する二人の態度の違いを描いた物語だったのかなと思います。
どちらが正しいとか、どちらが間違っているという話でもない。
ただ、クイズというものに、それぞれのやり方で人生をかけている人たちの話だったんだな、と。
そんなことを考えていたら、突然、子どもの頃に見ていた『アメリカ横断ウルトラクイズ』を思い出しました。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、
「ニューヨークへ行きたいかー!」
という、あの番組です。私はあれが好きで、毎回見ていました。
もちろんクイズそのものも面白かったのですが、今思い出してみると、出場者の人たちはアメリカを横断しながら、ずっとクイズのための勉強や準備をしていたんですよね。
当時の私は、「こんなに勉強しなきゃいけないなら、自分でお金を払って普通に旅行したほうが楽しいんじゃないかな」なんて思っていました。
でも、『君のクイズ』を聴いた今なら、クイズに人生をかけている人たちにとっては、そもそもそんな発想にならないんだろうな、と思います。
そして、私には一問も解けなかった
この作品は30章以上で構成されていて、面白い仕掛けがあります。
それぞれの章の最後に、一つのクイズと、その答えが載っているんです。
そして私は、その問題に一問も答えられませんでした。あはは。
こんなことも知らないのか、と落ち込むというより、「へえ、こんなことを知っている人たちがいるんだ」と、むしろ面白かったです。
クイズの世界って、私が思っていたよりずっと奥深い。
そんな世界を、ちょっとだけ覗かせてもらったような気がします。
『君のクイズ』を聴いていたら、思いがけず子どもの頃に見ていた『アメリカ横断ウルトラクイズ』まで思い出しました。
あの頃は「こんなに勉強してまで旅行するなんて大変だなあ」と思っていた子どもでしたけれど、今なら、クイズに人生をかける人たちの気持ちがほんの少しわかったような気がします。
クイズって、ただ知識を競うだけじゃないんですよね。
そんなことを考えながら、聴き終えました。
Happy Listening!
