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『平和のプロトコル —コンスティテューションの書き換え—』​第1巻:『ノイズのプロパガンダ』

『平和のプロトコル —コンスティテューションの書き換え—』

​第1巻:『ノイズのプロパガンダ』

​前文

​平和憲法という名の社会基盤コードを失うのは、一瞬の油断、たった一行の例外条項の追加で足りる。しかし、暴力と恐怖に塗り替えられた世界でそれをもう一度作り直すことは、地獄の底から素手で光を編み上げるほどの苦難を伴う。これは、知性を武器にディストピアへ挑む政治家・皐月遥と、その仲間たちの戦いの始まりである。

​本文

​「容疑者、皐月遥。国家安全維持法違反、およびテロ組織との内通の罪で拘束する」

​量子法廷の冷徹な合成音声が響いた瞬間、皐月遥は自分が完璧な罠に嵌められたことを悟った。彼女が議会で主張していたのは、軍事独裁コードの一時停止と、かつて存在した「非戦・平和憲法」の再実装にすぎない。しかし、軍政府の低解像度な検閲AIは、その知的な反論をすべて「国家反逆」のノイズへと変換し、プロパガンダの生贄に仕立て上げたのだ。

​「そんな……遥先生がテロリストだったなんて……」

​傍聴席から漏れたのは、かつて遥を熱狂的に支持していた有権者たちの声だった。彼らの瞳には恐怖が宿っている。軍政府の監視ナノマシンに怯え、思考の解像度を極限まで下げられた国民たちは、保身のために進んで嘘の証言を重ねていく。

「見たんです、彼女が不審な端末を操作しているのを」

「私もです。彼女は国を売ろうとしていた」

​次々と浴びせられる偽証のデータ。人型ロボットのロッコが、その高密度論理コアを駆動させ、即座に反論のログを空間に投影した。

「無効論理です。その証言は時間軸的矛盾を含み、政府の誘導パルスが検知されます。遥は無罪です」

​「黙れ、旧世代の鉄屑が」

軍政府の兵士がロッコのフレームを乱暴に殴りつける。彼らは論理的な対話を拒絶し、原始的な暴力と姑息な偽造データだけで世界を支配しようとしていた。

​集団心理という名の見えない怪物が、遥の正義を噛み砕いていく。嘘を信じ込むことでしか生きられない怯えた国民たちの前で、遥は静かにロッコを見つめた。

「リブートするわよ、ロッコ。こんな壊れた世界(システム)なら、私たちが根底から書き換えるまで」

​有罪判決のブザーが鳴り響き、遥の手首に電磁拘束具が嵌められた。知性なきディストピアの暗雲が、彼女を深く飲み込んでいく。

​説明文

​本作は、軍国主義によって管理されたディストピア社会を舞台に、政治的な正義とテクノロジーの矛盾を描くハードSF小説です。第1巻では、かつて存在した「平和憲法」がいかに簡単に失われ、それを再生することがどれほど困難であるかという絶望的な対比が描かれます。政府の低解像度な暴力と、国民の集団心理による偽証という「理不尽な恐怖」に対し、主人公・遥と相棒のロボット・ロッコが知性を武器に立ち向かうプロローグとなっています。

​次回予告

​国家の敵として深い闇へと投獄された遥とロッコ。密告と不信が蔓延する隔離セクターで、二人はさらなる人間の醜悪な裏切りに直面する。崩壊していく司法インフラの中で、知性は暴力を超えられるのか。

​次回、第2巻:『偽証のホログラム』

「信じる」という行為そのものが、罪になる世界で。

​ハッシュタグ

​#SF小説 #ハードSF #ディストピア #平和憲法 #政治ドラマ #ロボット

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