第39回:アワード・表彰への応募を広報に活かす方法
はじめに
第38回では、イベント・発表会の企画と広報対応を解説しました。今回は、広報活動において見落とされがちな「アワード・表彰への応募を広報に活かす方法」について解説します。
業界アワード・政府表彰・メディア主催の表彰など、企業が応募・受賞できる機会は数多く存在します。しかし、「アワードへの応募は手間がかかる」「受賞できなかったら意味がない」「どのアワードに応募すればいいかわからない」と感じて、アワードを広報活動に活用できていない企業は少なくありません。
実は、アワードへの取り組みは受賞・非受賞にかかわらず、広報活動に様々な形で活用できます。今回は、アワード・表彰を広報戦略に取り込むための考え方と実践方法を解説します。
アワード・表彰が広報活動に有効な理由
第三者からの客観的な評価が得られる
アワード・表彰は、自社が「すごい」と言うのではなく、第三者が「すごい」と評価した証明です。第三者からの客観的な評価は、メディア・顧客・投資家・採用候補者にとって、企業の信頼性を示す有力な根拠になります。
ニュースバリューが生まれる
「〇〇アワード受賞」という情報は、単なる製品発表よりもニュースバリューが高い傾向があります。特に権威のあるアワード・業界内で認知度の高い表彰であれば、メディアが取り上げやすいニュースになります。
採用広報への活用
「〇〇に選ばれた会社」「〇〇賞を受賞した企業」という実績は、採用候補者に対して企業の魅力をアピールする上で有効です。特に「働きやすい会社」「成長企業」「技術力の高い会社」といったテーマのアワードは、採用広報との相性が非常に良いです。
営業・取引先への信頼感向上
アワード受賞の実績は、営業活動・取引先との交渉においても信頼感を高める材料になります。「業界で認められた会社」というポジションは、ビジネスにおける競争優位性につながります。
社内のモチベーション向上
アワードへの応募・受賞は、社員のモチベーション向上にも効果があります。「自分たちの仕事が社外から評価された」という実感は、従業員のエンゲージメント向上につながります。
活用できるアワード・表彰の種類
政府・公的機関による表彰
経済産業省・環境省・厚生労働省などの省庁や、中小企業庁・観光庁などの行政機関が主催する表彰制度です。政府からの表彰は権威性が高く、メディアからの注目度も高い傾向があります。
例えば以下のような表彰制度があります。
はばたく中小企業・小規模事業者300社(中小企業庁)
ものづくり日本大賞(経済産業省)
グッドデザイン賞(公益財団法人日本デザイン振興会)
環境大臣賞(環境省)
くるみん認定・えるぼし認定(厚生労働省)
業界団体・業界メディアによるアワード
業界団体・業界専門紙・誌が主催するアワードです。業界内での認知度・信頼性向上に有効で、業界メディアへの露出にもつながります。
メディア・調査機関によるランキング・認定
日経・東洋経済・Forbes Japanなど、メディアや調査機関が発表するランキング・認定制度です。「〇〇ランキング上位」「〇〇認定企業」という実績は、幅広い読者への訴求力があります。
国際的なアワード
Red Dot Design Award・iF Design Awardなど、国際的に権威のあるアワードへの応募・受賞は、グローバルでの認知度向上に有効です。国内メディアでも「国際的なアワードを受賞した日本企業」として取り上げてもらいやすくなります。
スタートアップ・成長企業向けアワード
Forbes JAPAN 30 UNDER 30・ICC FUKUOKA・各種スタートアップコンテストなど、スタートアップ・成長企業を対象としたアワードは、認知度向上・投資家へのアピール・採用広報に有効です。
アワード応募の戦略的な進め方
① 自社に合ったアワードをリサーチする
まず、自社の業界・事業内容・強みに合ったアワードを幅広くリサーチしましょう。以下の方法が有効です。
競合他社・同業他社がどのアワードを受賞しているかを調べる
業界団体・業界メディアのウェブサイトで主催するアワードを確認する
政府・公的機関の表彰制度を確認する
広報担当者同士の情報交換で、有効なアワードの情報を収集する
② 応募するアワードの優先順位を決める
アワードへの応募には、応募書類の作成・社内情報の整理など、一定の工数がかかります。すべてのアワードに応募しようとすると、リソースが分散します。「受賞した場合の広報効果」「応募に必要な工数」「自社の強みと審査基準の合致度」を総合的に判断し、優先順位を決めましょう。
③ 応募書類を広報的な視点で作成する
アワードの応募書類は、審査員に「この会社を評価したい」と思ってもらえるものでなければなりません。以下の点を意識して作成しましょう。
具体的な数字・実績を盛り込む(第31回参照)
審査基準に沿った内容を明確に示す
社会への貢献・業界への影響を明確にする
読みやすく・わかりやすい文章で書く(第22回参照)
写真・図解など視覚的な素材を活用する(第32回参照)
④ 社内の関係部署と連携して情報を収集する
応募書類に必要な情報は、広報部門だけでは収集できないことが多いです。事業部門・技術部門・人事部門・財務部門などと連携し、必要なデータ・実績・エピソードを収集しましょう(第16回参照)。
⑤ スケジュールを逆算して管理する
アワードの応募締め切りから逆算し、書類作成・社内確認・法務確認などのスケジュールを管理しましょう。締め切り直前に慌てると、書類の質が下がります。
受賞した場合の広報活用
プレスリリースを配信する
受賞が決まったら、速やかにプレスリリースを配信しましょう。リリースには以下の情報を盛り込みます。
受賞したアワードの名称・主催者・権威性
受賞した製品・サービス・取り組みの概要
受賞の理由・評価されたポイント
経営層・担当者のコメント
今後の展望
メディアへの個別アプローチ
プレスリリースの配信と合わせて、関連性の高いメディアの記者に個別にアプローチしましょう。特に、アワードを主催するメディア・アワードのテーマと親和性の高いメディアへのアプローチが効果的です。
自社のオウンドメディア・SNSで発信する
受賞情報を自社ウェブサイト・SNS・社内報などで発信しましょう(第17回・第18回参照)。受賞の背景にあるストーリー・チームの取り組みを合わせて発信することで、読者の共感を呼びやすくなります。
採用広報・営業資料に活用する
受賞実績を採用サイト・採用広報コンテンツ・営業提案資料などに盛り込みましょう。「〇〇受賞企業」というラベルは、採用候補者・取引先への信頼感向上に長期的に活用できる資産です。
受賞ロゴ・バッジを活用する
多くのアワードでは、受賞企業に対して受賞ロゴ・バッジの使用を許可しています。自社ウェブサイト・名刺・製品パッケージ・広告などに受賞ロゴを掲載することで、視覚的に受賞実績をアピールできます。使用条件はアワードによって異なるため、事前に確認しましょう。
受賞できなかった場合の対応
応募・ノミネート自体を広報に活かす
アワードによっては、受賞に至らなくてもノミネートされた段階で発表されるケースがあります。「〇〇アワードにノミネートされました」という情報も、広報素材として活用できます。
応募プロセスを社内活動に活かす
アワードへの応募は、自社の強み・実績・取り組みを改めて整理する機会にもなります。応募書類の作成プロセスで得られた「自社の言語化された強み」は、今後のプレスリリース・営業資料・採用広報コンテンツの素材として活用できます。
次回に向けた改善につなげる
受賞できなかった場合は、主催者に「審査でどのような点が評価されたか・改善点はどこか」をフィードバックとして聞いてみることも有効です。次回応募に向けた改善のヒントになります。
注意点
権威性のないアワードへの注意
近年、「お金を払えば受賞できる」「自社推薦で受賞できる」といった権威性の低いアワードも存在します。こうしたアワードの受賞を広報に活用しても、記者・メディアに「このアワードは何?」と疑問を持たれ、信頼性を損なうリスクがあります。応募前にアワードの主催者・審査プロセス・過去の受賞企業などを確認し、権威性を見極めることが重要です。
受賞実績の正確な表記
受賞実績をプレスリリース・ウェブサイト・広告などに掲載する際は、正確な表記を心がけましょう。「〇〇部門賞」を「〇〇大賞」と誤って表記するなど、受賞内容を誇張・誤記することは、景品表示法上のリスクになる可能性があります。
まとめ
アワード・表彰は第三者からの客観的な評価であり、メディア露出・採用広報・営業・社内モチベーション向上に有効
活用できるアワードは政府・公的機関の表彰・業界アワード・メディアランキング・国際アワード・スタートアップ向けアワードなど多様
応募戦略は自社に合ったアワードのリサーチ→優先順位の決定→広報的視点での応募書類作成→スケジュール管理の順で進める
受賞した場合はプレスリリース配信・メディアへの個別アプローチ・オウンドメディア発信・採用営業資料への活用・受賞ロゴの活用を組み合わせる
受賞できなかった場合もノミネート情報の活用・応募プロセスで得た強みの言語化・次回への改善につなげる
権威性のないアワードへの注意——応募前に主催者・審査プロセス・過去受賞企業を確認する
受賞実績の表記は正確に——誇張・誤記は景品表示法上のリスクになる可能性がある
次回(第40回)は、「広報視点でのコーポレートサイトのチェックポイント」を解説します。記者・投資家・求職者がコーポレートサイトで何を見ているかを広報目線で解説します。
