AIが卦を読めるなら、易者はもういらない?
AIに卦を入力すると、驚くほど整った答えが返ってきます。
卦辞や爻辞の意味。
本卦と之卦の関係。
仕事や恋愛、人間関係への当てはめ方。
そして、これから取るべき行動まで。
文章を書くこともできます。
鑑定結果をわかりやすくまとめたり、相談者に渡すメッセージを作ったり、noteやSNSの投稿へ変えたりすることもできます。
以前なら何冊もの参考書を開き、時間をかけて調べていたことを、AIは数秒で整理してくれます。
そうなると、当然こんな疑問が浮かびます。
AIがこれほど易を解釈できるなら、易者はもう必要ないのではないか。
私は、半分はその通りだと思っています。
ただし、AIによって不要になるのは、易者そのものではありません。
卦の意味を説明するだけの仕事です。
AIによって、易者の「専門性」が見直される
これまでは、卦辞や爻辞を知っていること、
難しい古典の言葉を解説できること自体に価値がありました。
相談者は易の本を何冊も読んでいるわけではありません。
そのため、易者が卦の意味を説明するだけでも、
専門的な情報として受け取られていました。
しかし今は、AIに卦名や変爻を入力すれば、
基本的な意味をすぐに調べられます。
たとえば山火賁の上爻なら、
「飾ることの最後に、素朴さへ戻る」
「外見よりも本質を大切にする」
「余計な装飾を手放す」
といった解釈を、AIはすぐに提示できます。
つまり、AIの登場によって明らかになったのは、
これまで易者の仕事だと思われていたものの一部は、
実は情報提供だった。。。
ということです。
AIが代替できる仕事
AIが得意なのは、すでにある情報を集め、整理し、言葉にすることです。
易占いでいえば、次のような仕事はかなり代替できます。
卦辞や爻辞の意味を調べる
複数の参考書や解釈を比較する
古典の言葉を現代語へ置き換える
仕事、恋愛、人間関係に当てはめる
鑑定結果を読みやすい文章にする
行動案を複数提示する
noteやSNSの投稿文を作る
しかし、ここで注意したいことがあります。
AIが出してくれるのは、あくまで解釈の候補です。
候補が多いことと、よい鑑定ができることは同じではありません。
易者の専門性は「解釈を増やすこと」ではない。相談者に合わない解釈を捨てる勇気を持つ
AIは、ひとつの卦から多くの意味を出せます。
たとえば風山漸なら、
「少しずつ進む」
「順序を守る」
「焦らない」
「時間をかけて成長する」
「段階を飛ばさない」
といった解釈が並びます。
どれも間違いではありません。
しかし、相談者に必要なのは
意味を10個並べてもらうことではありません。
必要なのは、
なぜ今回は、この意味を選ぶのか
という判断です。
転職を考えている人に風山漸が出たとしても、
準備不足だから急がないほうがよい人もいます。
一方で、何年も我慢し、十分に準備を重ねてきたため、
そろそろ次の段階へ進むべき人もいます。
どちらも「段階を踏む」という卦の意味に含まれます。
だからこそ、易者に必要なのは、解釈を増やす力だけではありません。
相談者の現実に合わない解釈を捨てる力です。
【人間の易者にしかできないこと】
では、AI時代に人間の易者には何が残るのでしょうか。私は、次の四つだと考えています。
1.相談者の状況を見立てる
同じ卦が出ても、相談者が置かれている状況によって意味は変わります。
仕事、収入、家族、健康、これまでの経緯。
卦だけではなく、現実の情報を一緒に見なければ、行動につながる鑑定にはなりません。
相談者が何に困り、何を恐れ、どこまで準備できているのか。
その状況を見立てることが、人間の易者の仕事です。
2.問いを整える
たとえば相談者が、
「転職したほうがよいでしょうか」と尋ねたとします。
しかし話を聞いていくと、本当は転職の是非を知りたいのではないかもしれません。辞めたいけれど、収入が不安なのかもしれない。家族に反対されるのが怖いのかもしれない。すでに辞めると決めていて、背中を押してほしいのかもしれない。その場合、「転職するべきですか」ではなく、「転職へ進むために、今準備すべきことは何ですか」「今の職場に残ることで、見落としている問題は何ですか」と問い直したほうが、現実的な答えを受け取れます。AIは、入力された質問には答えられます。しかし、問いそのものがずれていても、非常に整った答えを返します。
だからこそ、AI時代には、答えの質以上に問いの質が重要になります。
3.卦と現実を結びつける
卦は抽象的です。
だから、さまざまな状況へ当てはめられます。
しかし、何にでも当てはめられるからこそ、相談者の現実と結びつける根拠が必要です。なぜ、この解釈を選んだのか。相談者のどの言葉と結びついているのか。なぜ、別の意味は今回は採用しないのか。
ここを説明できなければ、相談者が卦の言葉に自分を無理に合わせることになります。
卦という抽象的な象徴を、目の前の人の現実へ翻訳することです。
4.行動まで伴走する
「焦らず進みましょう」「本質を大切にしましょう」
「変化の時期です」これだけでは、現実はほとんど変わりません。
大切なのは、卦の意味を具体的な一歩へ落とし込むことです。
たとえば、今週中に求人を3件見る。家計を計算する。家族に自分の考えを話す。履歴書を書いてみる。1か月後にもう一度状況を確認する
というところまで考える。
そして、相談者が本当に実行できる行動なのかを一緒に確認する。
ここに、人間が伴走する意味があります。
☆AIと易者の新しい分業
これからは、AIか人間かを競わせるのではなく、それぞれの得意な仕事を分けることが必要です。
AIは、非常に優秀な助手になります。
だからこそ人間の易者は、情報を集めることだけに時間を使うのではなく、相談者を見ることに集中できるようになります。
これからの易者は、答えを持つ人ではない。一緒に考え、自分で行動できるように支える人
これまでは、
「卦の意味を知っている人」
「未来の答えを教えてくれる人」
であることに価値がありました。
これからは、
「相談者が何を問うべきかを一緒に考える人」
「卦と現実を結びつける人」
「相談者が自分で判断できるように支える人」
へ変わっていくのではないでしょうか。
相談者の状況を見立て、問いを整え、卦と現実を結びつけ、
行動まで伴走する。
そこに、人間の易者が残る理由があります。
