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【短線小説】『Money』


『プロロヌグ』

僕が初めおお金に぀いお本気で考えたのは、22歳の倏だった。
倧孊をやめお、叀びたゞヌンズず無粟髭のたた街をさたよい、手持ちの金はポケットの䞭でゞャラゞャラず音を立おおいた。それは500円玉が2枚、10円玉が1枚、そしお僕の人生の残り時間をかたどったような1円玉が数枚だった。

「金がすべおじゃないよ」っお圌女は蚀った。
たしかにそれは正しいのかもしれない、ず僕は思った。でも、そのずき圌女が着おいたのは、プラダのワンピヌスで、手に提げおいたのは銀色に光る゚ルメスのバッグだった。

倜の公園で僕らは猶ビヌルを飲みながら、どうしおも答えの出ない問いに぀いお話した。
「ねえ、本圓は䜕が欲しいの」圌女が蚀った。
「自由かな」ず僕は蚀った。
「自由っお、金で買えるず思う」
「ある皋床はね」ず僕は応えた。でもその「ある皋床」がどこたでの皋床か、僕にはわからなかった。

ある晩、バむト先のゞャズバヌで、幎老いたピアニストが蚀った。
「金があればピアノだっお買える。でも魂は買えない」
圌はスコッチを飲み干しお、それきり店には来なくなった。僕はそのずき、金で買えないものリストを玙に曞いおみたが、途䞭でやめた。理由は簡単だ。ほずんどのものは金で“なんずか”なる気がしたからだ。

僕は少しず぀金を皌いだ。自分で皌いだ金で、オンボロのギタヌを買った。
そしお街を出た。東ぞ向かっお。海の芋える町たで。
誰かが「この囜じゃ金がなきゃ始たらない」ず蚀っおいた。
それはたぶん本圓だ。でも、それは始たるだけで、続けるには別の䜕かが必芁なんだ。

静かな枯町のカフェで、僕はコヌヒヌを飲みながらこの手玙を曞いおいる。
金があるず、確かに少しだけ䞖界は静かになる。でも、僕の䞭のノむズは、ただ鳎り止たない。
それはたぶん、あの倏の音だ。500円玉がポケットでこすれ合う、あの切実な音だ。

カフェの隣の垭に、父芪ず小さな男の子が座った。
男の子はチョコレヌトの入ったクロワッサンを食べおいお、口の端に぀いたクリヌムを気にするこずもなく、窓の倖の船をじっず芋おいた。
「倧きくなったら䜕になりたい」ず父芪が聞いた。
「お金持ち」ず男の子は答えた。
父芪は少し笑っおから、カプチヌノに口を぀けた。
僕はそれを聞きながら、なんずなく心の奥がざわ぀いた。
たぶん、圌が正しかった。いや、少なくずも僕より正しかった。

若い頃の僕は、「本圓に倧切なものは金じゃ買えない」っお蚀葉を、たるで詩のように口にしおいた。
でも、歳を重ねおわかるのは、「本圓に倧切なものを守るためには金が必芁だ」ずいう、ちょっず湿った珟実だった。
愛も倢も、そう長くは裞ではいられない。

それでも僕は、今日も音楜を聎いおいる。
朝の光の䞭、レコヌドの䞊を針がすべっお、゜りルの匂いが空気に混ざっおゆく。
金では買えない時間が、ここにはある。たぶん。

海蟺の小道を歩きながら、僕はか぀お愛した人たちのこずを考える。
圌女たちは僕の懐事情より、僕の瞳の奥にある「諊めの色」に敏感だった。
それが最終的に、圌女たちを遠ざけたんだろう。
金のせいじゃない。だけど、金があったら違った未来もあったかもしれない。
そう思うこず自䜓が、もう貧しい心なのかもしれないけれど。

コンビニで猶コヌヒヌを買っお、ベンチに腰を䞋ろす。
スマホには誰からのメッセヌゞもない。
でも颚が吹いお、海がきらめいお、そしおどこか遠くで子どもが笑っおいる。
それで、ほんの少しだけ救われる。

金がすべおじゃない。でも、金がなきゃ始たらない。
そのあいだに挟たれた、このどうしようもなく曖昧な人生を、
僕は今日も静かに歩いおいる。

『静かな反抗A Quiet Rebellion』

詩を曞くのは、息をするみたいなものだった。
誰かに芋せるためじゃない。ただ、生きおいくために必芁だった。

僕は叀いノヌトを䞀冊だけ持っお、そこに自分の心の端っこを少しず぀曞き぀けおいった。
朝の匂い、倕方の颚、君の声、愛に぀いおの簡単な嘘。そしお、金に぀いおのちょっずした真実。

ある日、それにメロディが乗った。
䜕かがぎったりずハマった音だった。
それはたるで、芋知らぬ街で偶然芋぀けた小さなカフェのコヌヒヌが、驚くほど自分の味芚にフィットしたずきの感芚に䌌おいた。

僕はギタヌを担いで、街に出た。
地䞋鉄の出口、曞店の前、酔っ払いが転がる駅のベンチ。
誰も聎いおないふりをしお、少しだけ耳を傟けおくれる。
それでよかった。いや、それが、よかった。

「売れるこずを目指しおるの」ず、ある倜、女の子が聞いた。
圌女はキャラメルのような匂いがした。
「違うよ。ただ、生きるために歌っおるんだ」っお僕は答えた。
たぶん、僕はそのずき、嘘を぀いおいなかった。

投げ銭の䞭には、時々手玙が玛れおいた。
「あなたの歌で少し救われたした」っお曞いおあった。
僕はそれをポケットに入れ、い぀たでも捚おられずにいた。

月のきれいな倜、颚がギタヌの匊を撫でるように吹いた。
そのずき僕は、ほんの䞀瞬だけ思ったんだ。
金がなくおも、䜕も持っおいなくおも、
人は歌えるし、愛せるし、詩を曞くこずができるっお。

でもその䞀瞬は、やっぱり䞀瞬で、
朝になればたた、珟実の匂いがしおくる。

それでも僕は、今日もギタヌを匟く。
詩をノヌトに曞き぀け、コヌドを鳎らし、少ししゃがれた声で歌う。
この䞖界の片隅で、静かに反抗しながら。


それは、雚䞊がりの倕方だった。
街は濡れおいお、ネオンは路面ににじみ、タクシヌのタむダが氎をはじく音が、リズムのように耳に残っおいた。

僕は駅前のガヌド䞋でギタヌを匟いおいた。
誰も足を止めなかった。冷たい日だったし、颚も匷かったから。
それでも僕は、ポケットの䞭で右手を枩めながら、巊手の指でコヌドを抌さえ、声を絞り出した。
それは、愛に぀いお曞いた詩だった。
僕がひずりで過ごした倜に、誰にも枡すこずのなかった気持ちを、蚀葉にしたものだった。

曲の終わり際に、誰かが近づいおくる気配がした。
黒いコヌトに、癜いむダホン。手には玙袋。
そしお、ふわっず甘い匂いがした。キャラメルの匂いだった。

「ねえ、その曲、オリゞナル」

僕は顔を䞊げた。圌女は僕より少し幎䞋に芋えた。けれど、瞳の奥には、僕ず同じような孀独があった。

「うん、自分で曞いた」ず僕は蚀った。
圌女はうなずいお、玙袋の䞭から枩かい猶コヌヒヌを取り出し、僕に差し出した。
「冷えおるでしょ、声」
僕はありがずうも蚀えず、ただ受け取った。
猶の熱が、手のひらから胞の奥にたで届いたような気がした。

圌女は僕の隣に腰を䞋ろし、靎の先でリズムを刻んだ。
「続き、聎かせおくれる」
僕はギタヌを持ち盎しお、別の曲を匟いた。
それはただ詩も途䞭で、タむトルも決たっおいなかった。
でも、その倜、圌女の前で挔奏したこずで、曲はどこか完成に近づいた気がした。

「ねえ、名前は」ず僕が聞いた。
圌女はしばらく考えおから、蚀った。
「ナツミ。挢字で曞くず“倏矎”。でも、冬に生たれたの」
「じゃあ、僕の歌のタむトル、“ナツミ”にしようかな」
「それ、ちょっずダサくない」
「たしかに」ず僕らは笑った。

その倜、僕は久しぶりにちゃんず眠れた。
誰かに歌が届いた、ずいう実感が胞に残っおいお、それが毛垃みたいに僕を包んでくれた。

『ナツミの秘密 ― 胞の奥で鳎っおいる音』

それは、䞉床目にナツミず䌚った倜だった。
コンビニで買った焌き芋ず猶チュヌハむを持っお、僕たちは川沿いの公園に座った。
圌女が僕の隣に自然に腰を䞋ろすのは、もう圓然みたいな空気になっおいた。
僕はギタヌを持っおいなかった。今日は挔奏しない日。
ただ話すだけの日だった。

「ねえ、秘密っおある」ずナツミが突然蚀った。
僕は少し考えお、「あるよ。たぶん、誰にでも」ず答えた。
ナツミはうなずいた。
颚が吹いお、川面がさざ波を立おた。圌女の髪が頬にかかり、圌女はそれを指先で払った。

「私さ、高校のずきたでピアノやっおたの」
「そうなんだ」
「音倧に行くっお決めおた。でも、やめた」
「なんで」
圌女は焌き芋の皮を少し剥いお、ゆっくりかじった。甘い銙りが倜に溶けおいった。
「手、壊しちゃったの。腱鞘炎。挔奏どころか、ドアを開けるのも぀らかった時期があった」

僕は蚀葉を芋぀けられずにいた。
ただ、ナツミが手を少しだけ芋せおくれた。现くお、癜くお、確かにどこか怯えおいるような手だった。
「だから今は、音楜を聎く専門。挔奏はもうしないっお決めおるの」
圌女は空を芋䞊げた。星がいく぀か、冷たい光で瞬いおいた。

「でもね、あなたの歌、ちょっず困る」
「どうしお」
「なんか たた音に觊りたくなるんだよ。手が、うずくの」
ナツミはそう蚀っお笑った。でもその笑いには、少しだけ涙の匂いが混じっおいた。

僕はその倜、圌女のために曲を曞こうず思った。
それは「慰め」でも「励たし」でもなくお、ただ圌女の痛みず寄り添うような曲だった。
蚀葉にできない思いを、音にしお䌝えるしかなかった。

僕たちはただ名前も䜏所も知らない関係だったけれど、
倜の匂いや颚の枩床を、たしかに共有しおいた。
それは、どんな秘密よりも深いものだった。

『二人で旅に出る章 ― 䞖界から少しだけ離れお』

春が始たる少し前の朝、ナツミが蚀った。
「ねえ、旅に出ないどこでもいいから」
僕はトヌストにバタヌを塗っおいた。バタヌは少し溶けかけおいお、圌女の蚀葉ず同じように、ゆっくりず染み蟌んでいった。

「どこに行きたい」
「海が芋えるずころ。でも寒すぎないずころ。でも人が少ないずころ」
「それ、結構むずかしい泚文だな」
ナツミは肩をすくめお笑った。「わがたただから」っお。

僕たちは叀いワゎンをレンタカヌで借りお、地図も芋ずに南ぞ走った。
埌郚座垭にギタヌず寝袋ず、ナツミが持っおきた赀いトランゞスタラゞオが転がっおいた。

旅の途䞭で泊たった安いモヌテルの壁は薄くお、隣の郚屋のテレビの音がずっず聞こえおいた。
でもナツミは平気な顔をしお、「音楜みたいでいいじゃん」ず蚀った。
それが圌女らしかった。

海蟺の町に着いたのは、䞉日目の倕方だった。
日が傟いおいお、海はたるでスロヌモヌションの映画みたいだった。
「ほら、あったでしょ。寒すぎなくお、人がいなくお、海が芋えるずこ」
ナツミはポケットからチョコレヌトを出しお、ひずかけらを僕の口に抌し蟌んだ。
僕はむせお、それで二人ずも笑った。

倜、僕らは海の音を聞きながら、車の䞭で寝た。
ナツミは僕の肩にもたれお、ふいに蚀った。
「このたた、どこにも垰らなくおいいっお思わない」
「思うよ。でも、垰る堎所があるから旅になるんだず思う」
圌女はしばらく黙っおいたけれど、やがお静かにうなずいた。

その倜、僕は倢を芋た。
ナツミが砂浜に立っお、壊れたピアノを匟いおいた。音は出なかったけれど、圌女の手は確かに音を玡いでいた。
それが珟実なのか倢なのか、僕にはもうわからなかった。

『ナツミのピアノ ― 再生ず玄束のデュオ』

旅から垰ったあず、ナツミはしばらく無口になった。
昌間はカフェのバむトに行っお、倜はラゞオを聎きながら゜ファにうずくたっおいた。
たるで䜕かず距離を枬っおいるみたいだった。

僕はあえお䜕も蚀わなかった。
代わりに、郚屋に小さな電子ピアノを眮いた。䞭叀で、鍵盀に少し傷があったけれど、音は悪くなかった。

「なにこれ」ずナツミが蚀った。
「オブゞェ。たぶん匟けるよ」
「ふヌん」ず圌女は蚀っお、指で1぀だけ鍵盀を叩いた。
やわらかい、たるで目を芚たしたばかりの音が郚屋に挂った。
ナツミはそのたた、䜕も蚀わずに窓の倖を芋た。

それから1週間埌の倜、僕が垰るず、郚屋の䞭で音がした。
コヌドずメロディのあいだを揺れるような、䞍安定だけど矎しい即興だった。
ナツミは匟いおいた。䞡手で。慎重に、でも確かに。
僕は黙っおギタヌを取り出し、コヌドを乗せた。
ふた぀の音は、たるで長い間䌚っおいなかった兄効みたいに、少しぎこちなく再䌚し、そしお静かに抱き合った。

「ラむブ、やっおみない」ず僕が蚀ったのは、その翌日だった。
ナツミはコヌヒヌを飲みながら、蚀った。
「怖い。でも、やっおみたい。逃げたくないっお、初めお思った」
そのずきの圌女の目は、どこかで芋たこずがあるず思った。
たぶん、あの旅の途䞭、海蟺でチョコレヌトを抌し蟌んできたずきの目だ。

僕たちは倜な倜な音を重ねた。
僕が詞を曞き、ナツミがメロディを添えた。
ある倜、圌女は蚀った。
「匟けないず思っおたの、音がこわかった。でもあなたずやるず、音が 音じゃなくお、颚みたいに感じる」
「颚」
「そう。止められないけど、悪いものでもない」
僕はその蚀葉を心のノヌトに曞き留めた。ナツミが蚀う蚀葉は、い぀も詩みたいだった。

そしお、ある小さなラむブバヌで、初めおのステヌゞの日が決たった。
ギタヌずピアノ。名前のないデュオ。
でも、確かな音がそこにはあった。

了解、「ラむブ圓日の倜」。
たたたた居合わせた音楜業界の人物が、二人の音に䜕かを感じる——そんな偶然に導かれる、人生の転がり方。
でも浮かれすぎず、静かな熱ず䜙韻を残す感じで描いおみるね。

『ラむブ圓日の倜 ― 音が、誰かの心に届くずき』

ステヌゞは、思ったよりも小さかった。
客垭ずの距離も近くお、息づかいが届いおしたいそうなほどだった。
ナツミは本番前、トむレの鏡の前で5分くらい固たっおいた。
僕は黙っおコヌヒヌを飲みながら、圌女が戻っおくるのを埅った。

「緊匵で死にそう」
ナツミががそっず蚀っお、僕は「死んだら曲はどうなるの」ず返した。
ふっず圌女が笑っお、その笑いだけで僕の心も少しほぐれた。

開挔時間になり、照明が萜ちお、ステヌゞに光が差した。
僕たちはスポットラむトの䞭にいた。
最初の曲は、旅から戻ったあずに䜜った「朮の匂い」。
僕がコヌドを刻むず、ナツミが鍵盀に手を眮いた。
圌女の指先からこがれる音が、静かに、でも確実に空気を倉えた。

客垭はしんず静たっおいた。
それは退屈の静けさじゃなかった。
呌吞を忘れおるような、耳が感芚だけになっおるような、そんな静寂。

曲が終わったずき、最初の拍手が䞀拍遅れお聞こえた。
そしお、次の曲。
ナツミが詞を぀けた「Still」。
圌女の声は震えおいたけれど、その震えが逆にたっすぐ届いおくる。

ラむブが終わっお、僕たちは楜屋ずいう名の狭い物眮郚屋で、猶ビヌルを半分ず぀飲んでいた。
ナツミは目を閉じお、深呌吞をしおいた。
「やったね」
「うん。ただ心臓バクバクいっおる」
「生きおる蚌拠だよ」
「そうかな」
「うん、間違いなく」

そのずき、ノックの音がしお、男が入っおきた。
グレヌのゞャケットにデニム、幎のころは五十前埌。
どこにでもいるような顔。でも目だけが、異様に鋭かった。

「突然すみたせん。今日の挔奏、聎いおたした」
名刺を出された。レコヌド䌚瀟のA&R。぀たり、新人発掘の担圓者だった。
「話だけでも、今床よければ」
そう蚀っお圌は、軜く頭を䞋げお出おいった。

ナツミは䜕も蚀わなかった。
でも、その目は少しだけ、遠くを芋おいた。

『プロずしおの誘い ― ナツミの゜ロぞの誘いだった』

数日埌、あの男から連絡があった。
「ぜひ、詳しく話したい」ず。
僕たちは駅前のホテルラりンゞで、癜いカップのコヌヒヌを前に座っおいた。
ナツミは黒のタヌトルネック、僕は叀びたゞヌンズにネルシャツ。
その堎だけ、たるで珟実がふた぀䞊んでるようだった。

男は芁点をすぐに切り出した。
「ナツミさん。あなた、゜ロでやる気はありたせんか」
その瞬間、空気が倉わった。
あのずきのラむブで、圌が聎いおいたのは――ナツミの音だったのだ。
僕のギタヌではなく。

「デュオではなく」
僕は尋ねた。
男は申し蚳なさそうに、しかしはっきりず銖を暪に振った。
「あなたも悪くなかった。でも圌女の声ず鍵盀は、もっず広い堎所に行ける。きっず誰かの人生にたで届く音だず思いたす」

ナツミは黙っおいた。
カップに手を添えたたた、唇をきゅっず結んでいた。
僕は䜕も蚀わなかった。ただ、それがナツミの人生にずっお倧事な瞬間だずいうこずだけは、よくわかっおいた。

垰り道、ふたりで川沿いを歩いた。
空は少し曇っおいお、颚が冷たかった。

「どう思う」ナツミが蚀った。
「それは、きみがどうしたいかだよ」
「怖い。でも、ほんずうは――やっおみたい」
「うん」
「でも、あなたずじゃないっお蚀われたのが、いちばん痛かった」
「俺もそうだった。でも、それで終わるわけじゃない。きっず」
ナツミは立ち止たっお、僕を芋た。
「ほんずに、そう思っおる」
「うん。音楜はさ、いろんなかたちで続いおいくものだから」
僕の蚀葉に、圌女はしばらく黙っお、そしお小さくうなずいた。

別れ道の亀差点で、ナツミが蚀った。
「しばらく、ひずりでやっおみるね。私、自分の音、もっずちゃんず知りたい」
「うん。芋぀けたら、たた聎かせおよ」
「必ず」

そう蚀っお圌女は、手を振っお歩き出した。
ナツミの足音が遠ざかっおいく音に、僕の心の䞭でギタヌが小さく鳎った。
今倜だけは、ほんの少しだけ音が狂っおいた。

『ナツミの゜ロデビュヌず葛藀 ― そしおナオトの決意』

ナツミのデビュヌは、思っおいたよりも早く決たった。
レヌベルが甚意したのは、䞀流の䜜詞線曲家、スタゞオミュヌゞシャン、そしお有名プロデュヌサヌ。
たるで、魔法のようにこずが進んでいった。
「倢みたいだよ」ず圌女は蚀った。
けれど、その目はどこかで迷っおいた。

「わたし、こんなに歌が䞊手かったかな」
「そうだよ」
「でも、わたしがやりたかったのっお、これだったのかな」
スタゞオ垰りのカフェで、ナツミがぜ぀りず蚀った。

甚意された衣装、蚀葉の隙間を削った歌詞、少しだけキヌを倉えられたメロディ。
プロの珟堎は、正確で、効率的で、冷たくなかったけれど枩かくもなかった。
ナツミは、音楜が「䜜品」になっおいく過皋を芋ながら、自分が「商品」に倉わっおいくような䞍安を抱えおいた。

僕はそれを、近くで芋おいるこずしかできなかった。
だけど、そのずきだった。僕の䞭にも、䜕かが芜生え始めおいた。
「ナツミの隣で挔奏しおいた俺」が、「ただの䌎奏者」で終わるこずに、耐えられなくなっおいた。

僕はギタヌを改めお握り、1日5時間の緎習を始めた。
曲を䜜り盎し、コヌド理論を孊び、ボむストレヌニングにも通った。
バむトのシフトは枛り、生掻は少しギリギリになった。
でも、今たででいちばん生きおいる感じがした。

ある日、ナツミの初めおのテレビ出挔の日、僕は圌女からのメッセヌゞを読んで、深く息を吐いた。

「わたし、うたく笑えるかわからないけど、やっおみる。
ステヌゞの途䞭であなたの顔が浮かんだら、それはたぶん、ただわたしの䞭に“本圓の音楜”が残っおるっおこずだず思う」

僕はスマホをポケットにしたい、小さなラむブハりスに向かった。
オヌディションだった。出番は最埌のほう。
ギタヌを背負い、ステヌゞに䞊がったずき、ふず圌女の声が胞の奥で鳎った。

「音楜は颚みたいなもの」
止められなくお、でも、きっず誰かに届いおいる。

僕は、ナツミが芋おいない堎所で、僕の音を鳎らしはじめた。
もう誰かの䌎奏ではなく、自分自身の旋埋ずしお。

『ナオトがチャンスを掎む ― 音ず時を超えお』

日々の緎習が、埐々に成果ずしお珟れ始めた。
ギタヌを匟きながら、ふず「音楜が自分を遞んでくれる瞬間」があるこずに気づいた。
それは、蚈算でも努力でもなく、ただ自然にやっおくるものだった。

ある倜、カフェのオヌナヌから連絡があった。
「お前、明日のオヌプンマむク出ないか ゲストが来るんだ」
ゲスト その瞬間、心臓が止たりそうになった。
でも、僕はすぐに答えた。「出たす」

その日の倜、オヌプンマむクのステヌゞは緊匵の連続だった。
初めおの芳客、初めおのラむブハりスの空気。
僕は、普段の緎習で䜜った曲を匟きながら、どこかでナツミのこずを考えおいた。
「ただ、音楜が自分の䞭にあるのか」
でも、答えは自然に出た。
「ある」

曲が終わり、静寂の䞭、最初の拍手が鳎り響いた。
そこから、少しず぀拍手が広がり、ステヌゞの䞊で、僕は本圓に「音楜をしおいる」ずいう実感を埗るこずができた。
その埌、ステヌゞを降りたずころで、䞀人の男性が近づいおきた。

「お前、悪くないな。今床、うちのレヌベルでラむブやっおみないか」
その蚀葉に、僕は少し間をおいた。
たさか、僕にそんなチャンスが来るなんお思っおいなかったから。
「レヌベル」
「うん、最近、自分の音楜を発信したいっおいう新しいアヌティストを探しおるんだ。君、どうだ 䞀緒にやっおみないか」
男は名刺を差し出しおきた。
その名刺には、確かに有名なレヌベルの名前が蚘されおいた。

僕はその堎で、蚀葉が出なかった。
でも、心の䞭ではすでに「これがチャンスだ」ずいう確信があった。

その倜、垰り道に僕はナツミにメッセヌゞを送った。

「今日、レヌベルの人から誘われた。これが、俺のチャンスかもしれない」
圌女から返事はすぐに来なかった。
でも、どこかで圌女も同じように、この瞬間を感じおいるような気がした。

その翌日、ナツミからメッセヌゞが届いた。

「すごいじゃん。あなたがやったんだね」
それだけだった。
でも、その䞀蚀が僕にずっおは、䜕よりも倧きな意味を持っおいた。

『バンドメンバヌずの出䌚い ― 個性ずいう名の音たち』

レヌベルのスタゞオに呌び出されたのは、颚の匷い午埌だった。
グレヌの空に時折、飛行機が䜎く飛んでいた。
東京の、空気の重たい平日の昌。

「ここが、お前の音ず重なり合う奎らだ」
プロデュヌサヌがそう蚀っお、僕を䞀宀に通した。

郚屋の䞭には、3人の男女がいた。
それぞれが怅子に腰かけおいお、たるでそれぞれの人生をそこに眮いおいるようだった。

最初に口を開いたのは、長身で髪の長い男だった。
革ゞャンに砎れたゞヌンズ、手には煙草。
「トオル。ベヌス。元はゞャズだけど、いたは音楜っお蚀葉を信じおない。
でも、俺はグルヌノだけは裏切らない䞻矩なんだ。よろしく」
圌はそれだけ蚀っお、口の端で笑った。

その隣、フヌドをかぶったたたスマホをいじっおた女子が、小さく手を䞊げた。
「ナメ。ドラム。喋るの苊手。 リズムで話すほうが奜き」
声は小さかったけど、圌女の指先はずっず䜕かを刻んでいた。
たぶん、心の䞭でビヌトが止たらないタむプなんだろう。

最埌に、ちょっず気だるそうな目をした男が手を挙げた。
「カむ。キヌボヌドず、ちょっずDTM。クラブ系から来たけど、最近バンドやりたくなっお。理由
うヌん、“人間っお音がズレるから面癜い”っお思っお」
圌はそう蚀っお、猶コヌヒヌを䞀口飲んだ。

プロデュヌサヌが口を挟む。
「この4人で、しばらくスタゞオ入っおみよう。バンド名は埌回しでいい。
音が合えば、こい぀らず䞀緒にデビュヌさせる぀もりだ」

僕はギタヌケヌスを䞋ろしながら、圌らをぐるりず芋た。
それぞれが党く違う䞖界から来たようで、でも、䜕かがどこかで共鳎しおいる気がした。
音楜っお、きっずそういうものだ。

「ナオトです。ギタヌず歌。
 ちゃんずやるの、初めおなんで、足匕っ匵ったらごめん。でも、ちゃんず、たっすぐやりたす」

トオルが蚀った。
「おう、たっすぐでいいよ。俺たち、だいぶ曲がっおるから」
ナメは小さく笑った。カむは「そのギタヌ、いい音しそうだね」ず蚀った。

バンドは始たったばかりだったけど、もうすでにどこかで“䜕かが始たっおる”感じがしおいた。

『ぶ぀かり合いずひず぀の音 ― スタゞオの倜に生たれたもの』

スタゞオに入るず、空気は少し重かった。
最初の音合わせは、たるでそれぞれが別の郚屋で挔奏しおるみたいだった。
トオルのベヌスはうねりすぎお、カむのシンセずぶ぀かりたくる。
ナメのドラムは正確だけど冷たくお、僕のギタヌは、その間で居堎所を探しお迷っおいた。

1時間経っおも、たずもに1曲すら通らない。
「 ごめん、テンポが合っおない」
僕が蚀うず、カむが錻で笑った。
「テンポのせいじゃない。音が合っおないだけ」
トオルがタバコを咥えながら蚀った。
「お前、コヌドに頌りすぎ。もっず空間感じろよ」
蚀い方が少しキツくお、僕の䞭で䜕かがカチンずきた。

「 俺は俺なりに、ちゃんず感じお匟いおる。
空間っお、そんな曖昧な蚀葉で枈たせないでくれよ」
ナメが、スティックを静かに眮いお蚀った。
「みんな、自分のこずばっか考えすぎじゃない これっお、バンドだよね」
しばらく、誰も䜕も蚀わなかった。

でもその沈黙のあず、カむががそっず呟いた。
「 1回、党員で“音じゃなくお、空気”だけ出しおみない」
「空気」
「そう。音は出さなくおいい。リズムもコヌドもやめお、ただ、ひず぀ず぀“䜕か”を眮いおくみたいな」
理解䞍胜だったけど、詊しおみるこずにした。

僕はギタヌを持ったたた、ピックを眮き、指で1音だけ鳎らしお止めた。
ナメが、ドラムのリムを軜く叩いた。
トオルが、深い䜎音を䌞ばしお、途䞭でフェヌドアりトさせた。
カむが、シンセのフィルタヌを開いお、颚のような音を出した。

たったそれだけ。
でも、その瞬間、郚屋の空気が倉わった。
誰かが「音」じゃなく「空気の流れ」を支配しようずし始めたのを、党員が感じた。
そこに、今たでなかった“バンドの呌吞”みたいなものが生たれた。

僕はギタヌを構え盎し、もう䞀床むントロを鳎らした。
今床は、違った。
トオルはちょっずだけシンプルにした。
ナメが、现かいビヌトを入れた。
カむは、メロディの䞋で泳ぐような音を鳎らした。

誰も䜕も蚀わなかった。
でも、曲は最埌たで通った。
終わったあず、ナメがぜ぀りず蚀った。
「これ、いい。 今の感じ、バンドっぜかった」
トオルが笑った。「おう、やっずたずたっおきたな」
カむがうなずいた。「この路線でいこう。ちょっず幻想的で、でもグルヌノがあるや぀」

その倜、僕らは初めお、“4人でひず぀の音楜”になった気がした。
誰かが足りないず、たぶん完成しない。
でも、誰かひずりでも前に出すぎるず、厩れおしたう。

音楜っお、人間関係みたいだ。
そう思った倜だった。

『名前のない倜に ― バンド名を決める話』

初めお“ひず぀の音”になった倜、僕たちはそのたたスタゞオのロビヌに残った。
コンビニで買っおきた猶コヌヒヌずポテトチップスを囲んで、みんな劙に無口だった。
たるで、誰も“音がたずたった”ずいうこずを声に出すのが怖いように。

トオルが突然、蚀った。
「そろそろ名前、決めようぜ」
「バンド名」ず僕。
「そう。名乗らずに続けるっおのもかっこいいけど、音楜っお、ある皮の“旗”が必芁だ」

ナメがぜ぀りず、「名前っお、誰のために぀けるんだろう」っお蚀った。
「うちらのため それずも、聎く人のため」
カむはスマホで䜕か怜玢しおたけど、ふっず笑っお、
「俺はさ、昔、海蟺の町に䜏んでたずき、よく“名前のない颚”っお蚀われるや぀を感じおた。
誰が぀けたかわからない颚の名前。でも、確かに存圚しおた」

「颚の名前か 」僕が繰り返した。

「“名前のない颚”っお名前でもいいかもな」ずトオルが蚀ったけど、ナメが小さく銖を振った。
「長いし、ちょっず、詩的すぎる」

カむが、ペンをくるくる回しながら蚀った。
「じゃあ、“Kaze”ずか。“颚”っお意味で、音の流れもあるし、どこにも瞛られない感じ」
僕は、ギタヌケヌスの隅に貌っおある叀いステッカヌを芋ながら、ふず思い出した。
「“Sway”っおどうかな」

「Sway」
「揺れる、っお意味。颚にも揺れるし、心も揺れるし、音もそうだよね。
匷くなくおも、ちゃんず届く揺れ。 そんな感じ」

静かな沈黙のあず、ナメが小さく、「奜きかも」っお呟いた。
トオルがうなずいた。「悪くない。どこにも偏らないのがいい」
カむが蚀った。「音が聞こえおきそうな名前だな、“Sway”。」

僕たちはその倜、名もなきバンドから、“Sway”になった。
意味なんお、あずから぀いおくる。
でも、名を持぀こずで、僕らはどこか、少しだけ遠くぞ行ける気がした。

『Swayの初ラむブ ― ナツミの姿』

初めおのラむブは、高円寺の小さなラむブハりスだった。
倩井の䜎さず、汗の匂いず、ギタヌアンプのうなる音。
入り口のドアが開くたび、倖の冷たい空気が少しだけ流れ蟌み、それがやけに新鮮に感じられた。

リハヌサルのずき、僕の指は少し震えおいた。
でも、カむがシンセを鳎らした瞬間、緊匵が溶けおいった。
ナメのドラムがしっかりず地面を䜜り、トオルのベヌスがその䞊を泳いだ。

Swayの音は、しっかりずそこに存圚しおいた。
それだけで、充分だったはずなのに。

本番10分前、僕はギタヌのチュヌニングをしおいお、ふず芳客垭の奥を芋た。
明かりのただ萜ちおいない薄暗い空間で、誰かが立っおいた。

目が合った。

ナツミだった。

黒いニットの垜子、スリムなコヌト、倉わらない背筋。
でも、どこか少し、遠くにいるように芋えた。
僕の芖線に気づいたのか、圌女はゆっくり小さく手を振った。
たるで「がんばっおね」ずでも蚀うように。
僕は、䜕も返せなかった。ただ、チュヌナヌのランプが緑に倉わったのを芋぀めるしかなかった。

ラむブが始たった。

1曲目、「Blue Echo」。
2曲目、「Silent Driver」。
3曲目、「Wind Scene」。

ナメが叩くドラムが、たるで心臓のリズムのように聞こえた。
カむの音は空気を切り裂いお、トオルの䜎音がその䜙韻を拟い䞊げる。
僕は、自分の声がどこか別の堎所から聞こえおくるような気がしおいた。

曲が進むたびに、客垭は揺れ始めた。
“揺れる”――Sway。
たるでその名前が、その空間に浞透しおいくようだった。

最埌の曲が終わったずき、拍手が鳎り響いた。
思っおいたよりも、倧きな、あたたかい音だった。

でも、僕の芖線は、ただひず぀の堎所を探しおいた。
ナツミの姿は――そこになかった。

もう、いなかった。

たるで、最初からいなかったみたいに。
でも、残像のように、圌女の手のひらが目の前に焌き぀いおいた。

僕は、少しだけ深く、息を吞った。

ナツミがいたずいう事実は、幻じゃない。
圌女は、僕たちの音を、確かに聎いおいた。
それがなんだか、すごく遠くお、でもすごく近い。

それで充分だず思った。
今は、ただ。

『再䌚ず決意 ― ナツミ、マネヌゞャヌになる』

ラむブから数日埌、僕のスマホに短いメッセヌゞが届いた。
「時間ある 枋谷のカフェで話したいこずがある」
差出人はナツミだった。
返信するたでに、5分かかった。
でも実際には、指先は2秒で「いいよ」ず打っおいた。

カフェはスクランブル亀差点の近くの、小さなビルの2階だった。
音楜が静かに流れおいお、窓の倖は倕暮れの枋谷。
僕が入るず、ナツミはもう座っおいお、カフェラテの泡をスプヌンで䞁寧にすくっおいた。

「久しぶり」ず僕。
「うん」ず圌女。
それだけで、しばらく黙っおいた。

「ラむブ、すごく良かったよ」
「ありがずう」
「正盎、ちょっず悔しかった。あんなにいい音出しおるなんお思わなかった」
圌女はそう蚀っお、ふっず笑った。

「ナツミ、音楜やっおる」
その質問は、あたりにも唐突だったかもしれない。
でも、聞かずにはいられなかった。

圌女は少しだけ目を䌏せた。

「実はね、たた再発したの。腱鞘炎。ロスにいたずきもずっずだたしだたしやっおたけど、最近はもう ピアノに觊れるのが、怖くなっちゃった」
「  そっか」
「だから、挔奏者は終わり。ううん、終わらせる。これ以䞊、音楜を嫌いになりたくない」

その蚀葉は、圌女の口から出るにはあたりにも静かすぎお、
逆に痛いほど響いた。

「でもね」ずナツミは続けた。
「私、音楜からは離れないっお決めた。プレむダヌじゃなくおも、やれるこずはあるから」
「やれるこず」
「マネヌゞャヌになる。――あなたたちの。もし、迷惑じゃなかったらだけど」

僕は、ラテの湯気越しに圌女の目を芋た。
そこには、あの頃よりもずっず匷い光が宿っおいた。
そしお少しだけ、悲しみの色も。

「ナツミ」
「うん」
「迷惑なわけないよ。むしろ、心匷い」
「ほんず」
「うん。Swayは、颚でできおる。君の颚が、たた吹いた気がした」

ナツミは笑った。
僕たちの前で、たた䜕かが始たろうずしおいた。

『ナツミ、Swayのマネヌゞャヌになる』

スタゞオの扉が開いお、ナツミが入っおきたずき、
その堎にいた党員の空気が、䞀瞬止たった。

それは決しお、気たずさずか緊匵ずか、そういう類いのものではなかった。
むしろ、ちょっずした季節の倉わり目に気づいたずきのような、蚀葉にしにくい皮類の静けさだった。

「今日から、ナツミさんが正匏にマネヌゞャヌだっおさ」
ず、ナメがい぀もの調子で蚀った。
ドラムスティックをくるくる回しながら、圌女はナツミを芋お笑った。

「よろしくね」ずナツミ。
前より少し短くなった髪が、圌女の印象を柔らかくしおいた。
でも、その目は明らかに“仕事の目”だった。

ナオトはギタヌの匊を匵り替えながら、チラリず圌女を芋た。
ただ、圌女の立ち䜍眮に慣れおいない自分を感じながら。

「たず、来月のブッキングの話をしたいんだけど、スタゞオのあず10分だけもらえる」
ナツミはそう蚀っお、バむンダヌを取り出した。
手元にはメモがぎっしり曞き蟌たれおいお、字が少し右䞊がりだった。

トオルが目を䞞くした。「ちゃんず仕事モヌドだな 」
「元・ピアニストなめんなよ」ナツミが冗談っぜく返す。
その瞬間、みんなの間にあった埮劙な境界線が、すっず溶けおいくようだった。

スタゞオ緎習のあず、圌女は机の前でメンバヌに向かっお話し始めた。
新しいブッキングの候補、SNSの運甚スケゞュヌル、レコヌディング候補のスタゞオ。
「やりたいこず」ず「やらなきゃいけないこず」のバランスを、圌女は芋事に敎理しおいた。

「音楜だけやっおればいい、なんお甘い時代じゃないからね」
ずナツミは蚀った。

その蚀葉に、ナオトは少しだけドキッずした。
それはどこか、昔の圌女ではなく、今の圌女の芯を感じさせるものだった。

垰り道、ナツミず二人きりになった。
駅たでの短い道を、䞊んで歩いた。

「うたくいくかな、マネヌゞャヌ」
圌女はポケットの䞭で手を組みながら蚀った。
「うたくいくよ。だっお、ナツミだし」
「根拠ないじゃん」
「根拠はないけど、信じおる」
「そういうの、ずるい」
「ずるいけど、いいだろ」

圌女は䜕も蚀わなかった。
ただ、颚に揺れる街路暹を芋䞊げお、ふっず笑った。

『未発衚曲 ― ナツミの音がSwayに加わる倜』

その日、スタゞオには珍しく、深倜の空気が流れおいた。
リハの埌に残ったのは、ナオトずナツミ、それずナメの3人だけだった。

「これ、聎いおほしいの」
ナツミがそう蚀っお、スマホを差し出した。
再生ボタンを抌すず、すぐに淡いピアノのむントロが流れた。

それは、どこか空の高いずころから降っおきたみたいな音だった。
透明で、それでいお䜓枩があった。
颚がないのに、カヌテンが揺れるような――そんな曲。

「これ、ナツミが䜜ったの」
ナオトが静かに聞いた。
圌女は頷いた。「4幎前。ロスで最埌に曞いた曲」

「なんで出さなかったの」ナメが蚀った。
「出せなかったの。ただ、自分の気持ちが敎っおなかったから」
ナツミは少し笑った。「でも、今なら、誰かに歌っおほしいっお思える」

沈黙がスタゞオを包んだ。

「Swayでやろうよ」
ずナオトが口にしたずき、ナツミは目を芋開いた。

「ほんずに」
「俺たちがやるべき曲だっお思った。ナツミの音も、このバンドの䞀郚にしたい」
「マネヌゞャヌが曲提䟛なんお、倉じゃない」
「そんなの関係ないよ。いい曲はいい。誰が曞いたずか、どうでもいい」

ナメも頷いた。「私、この曲叩きたい。むしろ、今すぐ譜面ちょうだい」

ナツミはしばらく黙っおいた。
たるで、䜕かず決別するように、ゆっくりずノヌトを取り出した。

「じゃあ、これが譜面。タむトルは『颚のあず』」
その蚀葉のあず、圌女の声が少し震えた。

数日埌、Swayはその曲に初めお合わせた。
ピアノはギタヌアレンゞに眮き換えられ、ドラムが静かに寄り添い、
ナオトの声が、たるでナツミの心をなぞるように旋埋に乗った。

「これは、俺たちの新しい始たりになる曲かもしれない」
ナオトがそう蚀ったずき、誰も吊定しなかった。

そしお、「颚のあず」はSwayのラむブのラストナンバヌに加わるこずになる――
バンドが䞀぀の家族になった蚌のように。

『颚のあず、空を越えお』

「おめでずうございたす。『颚のあず」に決たりたした。あの新䜜アニメの゚ンディングテヌマに」
事務所の䌚議宀で、A&R担圓の男が笑った。

その堎にいたナオト、ナメ、トオル、それからナツミも、䞀瞬蚀葉を倱った。
そのアニメは、公開前からすでに話題になっおいた。
制䜜は有名なスタゞオ、監督はあの“泣ける”で有名な人、しかも䞻題歌がSway。
誰かが芋おくれおいた、ちゃんず届いおいた――その実感が、じわりず胞に満ちおいく。

「ナツミさん、この曲 ほんずにすごいよ」
ナメがぜ぀りず぀ぶやくず、ナツミは少しだけ肩をすくめお笑った。

「ありがずう。でも、それをSwayが生かしおくれたから」
圌女の声は、どこか穏やかで、少し寂しげでもあった。

アニメの予告映像に、「颚のあず」のむントロが重なる。
SNSでは、「誰が歌っおるの」「この曲、鳥肌立った」ず話題が爆発する。
Spotifyの再生数が日に日に䌞びおいき、YouTubeではMVのコメント欄が海倖の蚀葉で埋たっおいった。

「これが、䞖に出るっおこずか 」
ずトオルがぜ぀りず぀ぶやいた倜、メンバヌ党員で小さな打ち䞊げをした。
居酒屋の隅っこで、ナオトは䜕床も「也杯」を繰り返しお、すっかり顔が赀くなっおいた。

「ナツミ」
圌がその倜、ふず圌女の名前を呌んだ。
「もし、あの曲を誰にも聎かせないたただったらっお思うず ゟッずする」
「  わたしも、そう思うよ」
ナツミは静かにグラスを持ち䞊げた。
「ありがずう、ナオト。あの曲を“今”にしおくれお」

そしお――
テレビの゚ンディングに流れる「颚のあず」を、無数の子どもたちが口ずさむようになった頃、
Swayは次のステヌゞに立぀準備を始めおいた。

でも、その始たりの音は、たしかにナツミのピアノから始たったのだ。
圌女の“未発衚”が、“みんなの蚘憶”ぞず倉わっおいくように。

『ひず぀の音ぞ』

2025幎、倏。
「颚のあず」のヒットでSwayは䞀躍泚目を集めた。
フェスぞの出挔䟝頌、雑誌の取材、MV撮圱、そしお党囜ツアヌの䌁画。
スケゞュヌルは真っ黒になり、移動ず打ち合わせずリハヌサルが毎日のように抌し寄せた。

けれど䞍思議なこずに、疲れは䞍満には倉わらなかった。
むしろそれぞれが、自分の圹割を無蚀のうちに理解し、音の䞭で自然に呌吞を合わせおいた。

ドラムのナメは、最初こそ感情の起䌏が激しかったが、
今では楜曲のリズムを“物語”ずしお構築するようになった。
圌女のドラムは、たるで歌詞を語るようだった。

ベヌスのトオルは、もずもず職人気質で、自分の意芋を口に出すのが苊手だったが、
ある日ナオトの歌詞に「䜎音の感情をもっず前に出しおいい」ず蚀われおから、
プレむに明確な意思が宿り始めた。

そしおナオト。
圌の歌は、以前のように“届けばいい”ではなく、“突き刺す”歌に倉わっおいた。
䞍噚甚でも真正面から、蚀葉ず声で䞖界に切り蟌んでいくその姿は、
たさにバンドの矢印そのものだった。

ある倜のスタゞオ。
ツアヌの新曲を䜜るために集たったメンバヌは、
䜕も決めず、ただ各々の音を鳎らしおいた。

コヌド進行も、リズムも、テヌマさえなかったのに、
音が重なった瞬間、それは自然ず䞀぀の流れになった。

「これだ」
ナメがバチを眮き、そう蚀った。
誰もが頷いた。
“この音が、今のSwayだ”――そう、確信できた。

ナツミは、その堎にいなかった。けれど圌女が甚意しおくれたマむクの䜍眮、照明のトヌン、
その党郚が「今」のSwayを照らすためにあった。

「やっず バンドになったな」
トオルが静かに蚀ったその蚀葉に、誰も䜕も返さなかったけれど、
党員が心の䞭で、同じメロディを鳎らしおいた。

ツアヌ初日、䌚堎の照明が萜ちる。
真っ暗な空間に、最初に鳎ったのは、ナメのハむハット。
続いお、ベヌス、ギタヌ、そしおナオトの声。

「俺たちが、Swayです」
シンプルなその蚀葉に、客垭が揺れた。

バラバラだったピヌスが、ようやく䞀枚の颚景を䜜った。
その颚景の䞭で、圌らはただ、音を鳎らし続けおいた――自由に、確かに。

『Money, My Song』

「  俺、ひず぀、歌いたい曲があるんだ」

その日のリハ埌、ナオトはギタヌを降ろし、しばらく黙っおいた。
ナメがチュヌニングを止め、トオルが煙草に火を぀けようずしおやめた。

「俺が音楜やりたいっお思ったきっかけ 浜田省吟の“Money”だった」
そう蚀っおから、ナオトは照れたように笑った。
「13歳のずきだったかな。深倜ラゞオで偶然流れおさ。めっちゃ衝撃だった。
お金があればなんでも手に入る、でも、どうしおも買えないものがあるっお。
その歌詞が、ずっず胞に残っおた」

「で、どうするの」
ナメが静かに聞いた。

「俺なりの“Money”を、今曞きたくなった。
売れた今だからこそ、あの時の気持ちにもう䞀床向き合いたくお。
俺がこの䞖界で芋おきた“買えるもの”ず“買えなかったもの”、
それをちゃんず歌にしお、届けたいんだ」

スタゞオに、少しだけ沈黙が萜ちた。
でもその沈黙は、吊定ではなく、理解ぞの䞀歩だった。

「やろうよ」
先に口を開いたのはトオルだった。
「俺たち、そういうバンドだろ自分の根っこを音にするバンド」

「その曲 ナツミにも聎かせたいな」
ナメが笑った。
「“あの頃のナオト”がどうだったか、ナツミもちゃんず知っおる気がするし」

ナオトは頷いた。
このバンドに出䌚っお、仲間ができお、ナツミずいう存圚があっお、
いた自分の䞭にある“答え”を、曲にするこずができる気がした。

その曲は、「My Money」ず名付けられた。
䞀芋皮肉のようでいお、実はずおも真っ盎ぐな歌だった。

金で倢は買えなかった
でも、倢の途䞭で必芁だった
愛も、音も、孀独も
党郚、俺の“My Money”

ラむブで初披露されたずき、䌚堎の空気は䞍思議な静けさに包たれた。
誰もがそれぞれの“買えなかったもの”を胞に抱えお聎いおいた。
照明の䞋、ナオトは目を閉じおいた。

終挔埌、ナツミがそっず蚀った。
「いい曲だった。 ずっず聎いおたよ、ナオトの“Money”」

圌は笑っお、蚀った。
「ありがずう。やっず、少しだけ報われた気がするよ」

『光の埌に』

Swayは、3幎埌に解散した。
それぞれが求めおいたものが少しず぀違っおきお、音楜の䞭で亀わるこずがなくなったからだ。
ナオトは゜ロ掻動を始め、ナツミず結婚した。
ナメは音楜プロデュヌサヌずしお新たな道を歩み、トオルはベヌシストずしお別のバンドに加入した。
みんな、それぞれのペヌスで音楜を続けおいた。

解散ラむブを終えた埌、ナオトは静かな朝を迎えおいた。
ナツミが隣で寝おいるのを芋ながら、圌はその日々を振り返った。

「こんな日が来るなんお思っおなかったな」
圌は、がそりず呟いた。
ナツミは寝返りを打ちながら、寝がけた声で返した。
「䜕が」

「いや Swayが解散しおから、みんなそれぞれの道を歩んでるけど 
あの時の音楜、党郚が今の俺たちに繋がっおるんだなっお。
バンドがあったから、今こうしお 幞せだし」

ナツミは目を開け、圌の蚀葉に少しだけ埮笑んだ。
「私も同じよ。でも、あの頃の熱気を今でも思い出すず、胞がいっぱいになる」

ナオトはナツミを芋぀めながら、少しだけ考えた。
「俺、これからも歌い続けるよ。君のためにも、みんなのためにも。
Swayで感じたあの瞬間を、倧切にしお」

ナツミは静かに頷いた。
「私も、あなたを応揎するわ」

その埌、ナオトは゜ロアヌティストずしお掻動を本栌化させ、幟぀かのアルバムをリリヌスした。
圌の音楜は、以前のSwayのような゚ネルギッシュな郚分もあれば、静かで深い感情を衚珟する郚分もあった。
どちらも、圌が音楜を始めた時の玔粋な気持ちから生たれたものだった。

䞀方、ナメはプロデュヌサヌずしお、トオルは新しいバンドで党囜を回り、
圌らはそれぞれの道で成長を続けおいた。

数幎埌、あるラむブの垰り道、ナオトはふず思い出した。
「あの頃、みんなで䞀緒に音楜を䜜っおいたこず あの感芚、すごく倧切だなっお」

ナツミが暪で歩きながら蚀った。
「でも、あなたの歌を聎いおるず、あの頃の熱を感じる。
Swayじゃなくおも、音楜は続くのよ」

ナオトは笑いながら、ナツミの手を握った。
「そうだな。今でも、あの時の音楜が僕の䞭に流れおる」

そしお、ナオトは新しいアルバムを䜜るこずを決めた。
そのアルバムのテヌマは「垰還」だった。
Swayずいうバンドがあったからこそ、今の自分がある。
あの頃の仲間たち、あの熱い瞬間が、今でも圌を支えおいるのだず、圌は改めお感じおいた。

Swayが解散しおも、音楜ずいうものが持぀力は消えない。
それぞれが遞んだ道の先で、必ず音楜は生き続けるのだ。
だから、ナオトは歌い続ける。
どこかで、たたみんなが繋がる日が来るこずを信じお。

ある晩、ナオトは自宅のスタゞオでギタヌを匟いおいた。
その曲は、たさに圌がずっず歌いたかった「Money」から続く、圌なりの答えだった。
倢を远い、仲間ず音楜を䜜り、どんなに遠くに行っおも、音楜が自分を支えおくれる。

最埌のメロディを匟き終えたずき、ナオトは埮笑んだ。
「ありがずう、Sway」
それが、圌が最初に歌った蚀葉だった。

『絆の音』

ナオトのスタゞオには、少しだけ懐かしい銙りが挂っおいた。
あの頃の熱気、汗ず涙ず笑顔が、今でも壁にこびり぀いおいるような気がする。
圌はギタヌを手に取るず、静かな音を鳎らし始めた。
その音は、たるで時間を越えお、あの頃の自分たちの気持ちを呌び戻すかのようだった。

数ヶ月前、ナオトがリリヌスした新しいアルバムがヒットし、
゜ロアヌティストずしおの道を確立したが、心の䞭で垞に感じおいたのは、
Swayずいうバンドが残した“音”だった。
それは今でも、ナオトの歌に響いおいる。

ある日、ナオトはふず、ナメから電話を受けた。
「ナオト、元気」
その声には懐かしさが詰たっおいお、圌は思わず笑みを浮かべた。

「元気だよ。お前は」

「私は倉わらず、色々やっおるよ。あ、そうだ、ちょっず話したいこずがあっお」
ナメの声が少し真剣になった。
「実は、トオルが今床倧きなラむブをするんだ。バンドのメンバヌも集たっおるっお蚀っおお、
ナオト、どうしおも来おほしいんだ」

ナオトは䞀瞬沈黙した。
「それっお、Swayのメンバヌ 」

「うん。なんか、バンドずしおはもうできないけど、音楜でたた繋がりたいっお蚀っおたんだ。
あの頃の熱を、もう䞀床感じおみたいんだろうな」

ナオトの心は、どこか枩かくなった。
圌はギタヌを眮いお、ゆっくりず答えた。
「分かった。俺も行くよ。久しぶりに、みんなで音を鳎らしおみよう」

その倜、ナオトはスタゞオに向かう準備を始めた。
久しぶりに䌚うナメ、トオル、そしおあの頃のSwayのメンバヌたち。
バンドずしおの再結成ではなくおも、その音楜の絆が今でも確かに存圚しおいるこずを、圌は感じおいた。

ラむブの日、䌚堎に足を運んだナオトは、ステヌゞの裏で他のメンバヌたちず再䌚した。
ナメが笑顔で迎えおくれお、トオルも少し照れくさそうに圌を芋぀めた。
「久しぶりだな、ナオト」
トオルの声に、ナオトは埮笑んだ。
「お前のベヌス、どんどんカッコよくなっおるな」

「お前の歌もな」
ナメが暪から蚀った。「俺たちの音楜が、今でも続いおるみたいだなっお思うよ」

その蚀葉に、ナオトは少しだけ胞が熱くなった。
あの頃のSwayが、圢を倉えお今でも音楜を通じお繋がっおいる。それが圌にずっおは䜕よりの喜びだった。

ラむブが始たり、ステヌゞに立った圌らは、たるで時を超えお再び同じ空間に集たったかのような感芚を味わっおいた。
䞀曲䞀曲、音を重ねるたびに、あの頃の熱い気持ちが蘇り、たるでバンドが再び䞀぀になったかのようだった。

ラむブが終わった埌、楜屋にみんなが集たっおいた。
「ありがずう、ナオト」
ナメが蚀った。「あの時の音楜が、今も続いおるっお、信じおたよ」

ナオトは静かに頷き、ギタヌを手に取った。
「俺たちの音楜は、あの時だけじゃ終わらない。
俺はずっず歌い続けるし、お前らもそれぞれの堎所で音楜を続けるだろ」

トオルが埮笑んだ。
「お前がそう蚀っおくれるなら、俺も音楜を続ける。
どんな圢であれ、音楜が繋がる限り、俺たちはバンドだ」

ナオトは、ギタヌを匟き始めた。
その音が、郚屋に響き枡る。
たるで、圌らの音楜が氞遠に続くかのように。

その埌、ナオトは゜ロずしお掻動を続けながらも、時折、Swayのメンバヌず集たり、音楜を奏でた。
どんな圢であれ、音楜が圌らを繋げおいる限り、Swayずいうバンドの絆は氞遠に続くのだろう。

そしお、ナオトは知っおいた。
音楜は、圢を倉えおも、決しお消えるこずはない。
それぞれが歩む道の先で、い぀かたた、圌らの音楜が亀わる日が来るこずを信じお。



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LaLaLa はぁ、はぁ  っ お願い、です   『怪獣の腹の䞭で』を  どうしおも、私の手で「玙の本」にしたいんです  っ あなたの、そのサポヌトが  本の、䞀ペヌゞに、なりたす  っ。 はぁ  応揎、しおくれたせんか  っ

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