【短編小説】夏の境界線
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澄み渡る沖縄の海。その日、僕は1日だけのオプショナルツアーでウィンドサーフィンの体験スクールに参加していた。
インストラクターとして現れたのは、僕より少し年上の女性だった。小麦色に焼けた肌に、濡れた髪を豪快にかき上げる凛とした立ち振る舞い。セイルを操るしなやかな体つきと、風を捉える真剣な眼差しは、海の上で圧倒的な存在感を放っていた。
「福岡から夏の間だけ、バイトで来とるんよ」
休憩中、ふと見せた柔らかい笑顔と、ほんのり混ざる博多弁のアクセント。教官としてのテキパキとしたカッコよさと、ふとした瞬間に覗く大人の女性らしい艶やかさのギャップに、僕は完全に心を奪われていた。夏が終わればまたどこかへ行ってしまうような、どこか儚げな空気感も彼女の魅力を引き立てていた。
夕方、レッスンの片付けが終わると、彼女は悪戯っぽく微笑みながら僕を覗き込んだ。
「ツアー、これで終わり? ……もし時間あるなら、飲みに行かん?」
海沿いの小さな居酒屋で泡盛のグラスを傾ける。昼間の厳しいインストラクターの顔は消え、グラス越しに見つめてくる瞳は色っぽく、潮風とほんのり甘い香水の匂いが混ざり合っていた。
「まだ、帰りたくないな」
夜の波音が響く部屋で重ねた時間は、たった1日のツアーで出会った二人とは思えないほど熱く、切なく、鮮烈だった。
翌朝、沖縄の眩しい光の中で目覚めたとき、夏の風とともに現れた彼女とのあの一夜が、一生消えない焼き痕のように僕の心に残ることを確信した。
了
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