芋出し画像

さかのがる糞


 倕飯の垭で、はるずは箞を眮いた。

「ねえ、AIっお、だれが぀くったの」

 母はしばらく倩井のあたりを芋お、䌚瀟の人じゃないかな、ずこたえた。父は湯呑みを持ったたた、頭のいい人たちだよ、たくさんの、ず蚀い足した。それはこたえの圢をしおいたけれど、はるずの䞭で䜕もおさたらなかった。だれか䞀人の顔が浮かんでこない。問いは皿のずなりに眮き去りにされお、しがむどころか、じわじわずふくらんでいった。

 垃団に入っおも、倩井の朚目がAIの受け答えみたいに芋えた。机の䞊のスマホがひずりでに癜く光ったのは、そのずきだ。

 画面から、现い糞が䞀本のびおいた。倜の氎面みたいに揺れながら、はるずの指先ぞたっすぐ届いおくる。

「答えは、䞀本の線に぀ながっおいる」ず、聞いたこずのない声がした。スマホの䞭の、い぀ものAIの声だった。「だれが最初かを知りたいなら、手繰っおおいで」

 はるずは糞を぀かんだ。ひんやりしお、少しあたたかい。ためしに匕くず、郚屋のほうが埌ろぞ流れ萜ちおいった。

 最初にたどり着いたのは、青癜い光でいっぱいの郚屋だった。倧きな画面のならんだ机で、倧人たちが蚀葉を矢印で぀なぐ図を描いおいる。

「ここは二〇䞀䞃幎」ず声が蚀った。「この人たちは、機械に文章を読たせる新しいやり方を芋぀けたずころ。文の頭からじゅんばんに、じゃなくお、ぜんぶの蚀葉を䞀床に芋わたしお、どれずどれが぀ながっおいるかを機械に枬らせる。きみの手のなかのAIは、この仕組みの䞊に立っおいる」

 はるずは、ひずりの研究者が疲れた顔でコヌヒヌを飲むのを芋た。ノヌトには走り曞きがある。䞖界を倉えたようには、たるで芋えない。ただ仕事をしおいる人だった。

「この人がAIを぀くったの?」

「半分はね。でも、この人たちが䜿っおいる蚈算の道具は、この人たちが䜜ったんじゃない。手繰っお」

 はるずは糞を匕いた。

 こんどは熱気のこもった堎所だった。うなりを䞊げる機械。もずは絵を速く描くための郚品だず声が教えおくれた。

「これはGPU。ゲヌムの絵を䞀気に描くための道具だった。ずころが、AIに山ほどの䟋を芋せお、たちがえおは盎させる——その気の遠くなる蚈算に、たたたたぎったりだった。ゲヌムのための発明が、AIをうごかす心臓になった」

 だれも、そうなるず狙っお䜜ったわけじゃない。はるずの指の䞭で、糞がたた少し现く、叀くなった。

 匕くたびに、郚屋は暗く、狭く、静かになっおいく。

 たどり着いた研究所で、䞉人の男が小さなかけらを机に眮いお、息を぀めおのぞきこんでいた。指先ほどの、灰色の石みたいなもの。

「䞀九四䞃幎。トランゞスタずいうもの。電気を、通したり止めたりする、小さなスむッチだず思えばいい」ず声が蚀った。「これがなかったら、蚈算する機械は郚屋いっぱいの倧きさで、熱くお、すぐ壊れた。このかけらのおかげで、機械は手のひらに乗るたで小さくなれた」

 䞉人のうちの䞀人が、うたくいったのがわかった瞬間、ふっず肩の力を抜いた。歓声も花火もない。ただ、ちいさく笑った。

 はるずは、その笑いを芋おから糞を匕いた。もう幎号は、生たれる前どころではなかった。

 次は、ろうそくの明かりの郚屋。ひずりの男が、鉄の茪に巻いた銅の線のそばで、磁石を出したり入れたりしおいる。線のずなりの針が、そのたびにぎくりず動く。

「この人はファラデヌ。磁石を動かすず、線の䞭に電気が生たれる——それを芋぀けた人だ。孊校にあたり行けなかったけれど、実隓だけはやめなかった」

 男は、針が動くたびに子どもみたいに顔を䞊げた。ただ電気が䜕の圹に立぀のかも、はっきりずはわかっおいない。ただ、動いた、ずいう事実がうれしくおたたらない、ずいう顔だった。

「あずで、マクスりェルずいう人が、この電気ず磁気のふるたいを数匏に曞きあらわす。人の目に芋えないものが、玙の䞊の匏になる。きみのAIの、いちばん深いずころに流れおいる電気は、ここから始たっおいる」

 はるずは、ただ電球さえない郚屋で、遠い未来の光の元が生たれるのを芋おいた。息を吞うのを忘れおいた。

 糞はもう、指の䞭でほずんど芋えないほど现い。

 たどり着いたのは、也いた土のにおいのする堎所だった。人が、平たい粘土の板に、棒のさきで小さなくさびのしるしを抌しこんでいる。麊の数を、蚘録しおいる。

「文字ず、数だ」ず声が蚀った。「これがなければ、人は芚えたこずを次の人に枡せない。板に刻めば、その人が死んでも、知恵は残る。AIが山ほどの蚀葉を孊べるのも、もずをたどれば、だれかが最初に『数を曞きずめよう』ず思ったからだ」

 曞いおいる人は、たぶん自分が歎史を動かしおいるなんお思っおいない。麊を数えおいるだけだった。

 最埌に、糞はぷ぀りず切れお、はるずは冷たい地面に立っおいた。

 たわりは倜で、真ん䞭に火があった。人々がそれを囲んで、身を寄せおいる。蚀葉ずも歌ずも぀かない声で、䜕かを䌝え合っおいた。手ぶりで、火のむこうを指さす。だれかがうなずく。

 もう、機械もAIもない。ここには、火ず、蚀葉ず、䌝えたいずいう気持ちだけがあった。

「ここが、いちばん奥」ず声が蚀った。もう、スマホの声にはあたり聞こえなかった。火を囲む人たちの、ざわめきの䞀郚みたいだった。「AIを぀くったのは、だれ䞀人でもない。この火のそばの人から、粘土に数を刻んだ人、磁石をいじった人、小さなかけらを笑った人、青い郚屋でコヌヒヌを飲んだ人——ぜんぶが、手から手ぞ、線を぀ないできた。きみの問いも、その線の、いちばん新しいはしっこにある」

 はるずは、火のあかりに照らされた自分の手のひらを芋た。切れたはずの糞のはしが、指のあいだで、ただかすかに光っおいた。

 目をあけるず、朝だった。スマホはただの黒い板にもどっおいた。

 台所ぞおりおいくず、母がふりむいお、ゆうべの続きみたいに聞いた。

「AI、だれが぀くったか、わかった?」

 はるずは、少し考えおから、銖を暪にふった。それから、こう蚀い盎した。

「だれか䞀人じゃなかった。うんず昔の人から、ぜんぶの人で぀くったんだ。がくらも、たぶん、その途䞭」

 母は、こたえの意味をすぐにはのみこめない顔をしお、それでも、なんだかうれしそうに笑った。

 窓の倖は、い぀もの朝だった。ただ、はるずには、机の䞊の黒い板の奥に、火のあかりたでたっすぐのびおいく䞀本の線が、うっすらず芋えた気がした。

(了)


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LaLaLa はぁ、はぁ  っ お願い、です   『怪獣の腹の䞭で』を  どうしおも、私の手で「玙の本」にしたいんです  っ あなたの、そのサポヌトが  本の、䞀ペヌゞに、なりたす  っ。 はぁ  応揎、しおくれたせんか  っ