『貧乏種族』 歪んだ溺愛の輪舞曲
私の実家は、とにかくボロい家だった。
小さい頃からずっと思ってたし、私のコンプレックスでもあった。
家を見て笑われた事もあるし、理由も知らずに、家がボロいだけで、かわいそうと言われ、勝手に同情された事もある。
うちは何でお金がないんだろう。
何でこんなにボロいんだろうって。
でも、父と母の生い立ちを聞いたとき、あぁ、これは逃れられない「貧乏な血筋」なんだって分かった。
母の話:きょうだいが犠牲になって繋がれた学校母の実家も、やっぱりボロい家だった。
母の親、つまり私の祖父母がかつて何をして生きてたのか、私はよく知らない。
母は知っているのかもしれないけれど、私にはそれくらい、過去を簡単に振り返られないような空気を感じる家だった。
そのしわ寄せがいったのが、母の兄や姉。
家にお金がないから、高校なんて行けなかった。
姉の一人は、よその家に養子に出された。
兄は、学校を出てすぐペンキ屋に勤め、肉体労働して、お金を稼いだ。母は一番下の末っ子。
母だけが高校に行けたのは、自分の人生を諦めて、代わりに働いてくれた兄や姉がいたから。
誰かを犠牲にして、誰かを学校に行かせる。
それが母の実家のリアルだった。

父の話:スズメを売る祖父と、奪われたチャンス
一方、父の実家も同じようにボロかった。
父の父親、つまり私の祖父がしてた仕事は「スズメ取り」。
網すら使わず、すずめを素手で捕まえてたらしい。とんでもない野性のチカラだと思う。
それを売ってその日のお金を稼いでた。
祖父は戦争にも行った事があるので、詳しい背景はわからないけど。
そんな家で、父は国公立の高専に進んだ。
家にお金がなかったから、その道を選ぶしかなかったのか、それとも父の頭が良すぎたから行けたのか、本当の理由は私にはわからない。
けれど、父がものすごく頭が良くて、自力でその道を切り拓いたのは事実だ。
電気をつけることもせず、暗い部屋の中で必死に勉強するような努力家でもあった。
そうやって自分の力で高専を出て、海外に行く船に乗った。そこでモールス信号を打つ、通信の仕事をしていた。
本来なら、父はそこで大金持ちになれたはずだった。
貧乏な血筋なんて、自分の頭脳と努力でぶち壊せるはずだった。
だけど、親が父の足を引っ張った。
父が遠い海外の海から、日本のボロい実家に送り続けた大金。家族のため、もしくは、これからの蓄えのために、そう信じて送ったお金だったかもしれない。
祖父たちは、その仕送りを全部使い込んで、毎日のように酒を飲んで、歌って暮らしていた。
父が暗闇の中で命がけで勉強し、海の上から送ったモールス信号は、親たちの呑気などんちゃん騒ぎに全部消されて、泡になって消えた。
何年もの航海を終えて、父がようやく船を降りたとき、手元には一銭も残っていなかった。
結局、父は全部親に奪われて、一から借金をして魚屋を始めるしかなかった。
そうやって、理不尽に足を引っ張られ続けた果てに、私は生まれ、あのボロい家で育つことになる。
どんなに頭がよくても、どんなに頑張っても、親のせいで底に引きずり下ろされる。
父は、祖母に溺愛されて育ったらしい。
それなのに、その親から必死に稼いだお金を搾取されていた。
そして、私はそんな父から溺愛されて育った。
それなのに、私は父から、後に虐待を受けることになった。
可愛がられているはずなのに、ひどいことをされる。お金だけでなく、愛の形まで歪んで引き継がれていくような、そんな歴史が血が私の身体には流れてる。
普段はあんなに優しかった父も、もしかしたら、その親から目に見えない何かをされて歪んでしまっていたのだろうか。
そんなことを、今でもふと思うことがある。
その運命を背負って、今、私が紡いでいる音楽たち。近々公開される音声ガイド付き自主制作映画祭のエンディングテーマ曲(エンドロール)にも起用していただいた、「August」

この曲は、夏の儚さや、短い恋、そして避けては通れない運命を歌った楽曲ですが、
「何のために生まれて、何のために人は人と出会うのか」
その問いは、自分がこの境遇に産み落とされ、そこから必死に生きて誰かと出会っていく、その意味を探す作業のようでもあります。
一つの映画を観終えたような気持ちで、受け取ってもらえたら嬉しいです。
▶︎ シャム猫娘 - 『August』 Music video

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