テート美術館ターナー展
微妙な光や空気を筆で描き出すことに長けていることから「光の画家」と呼ばれ、英国ロマン主義を代表する芸術家J.M.W. ターナー(1775-1851)の大回顧展「テート美術館 ターナー展ーー崇高の絵画、現代美術との対話」が2026年10月24日(土)から2027年2月21日(日)まで国立西洋美術館(東京・上野公園)で開かれる。
世界最大のターナー・コレクションを誇るロンドンのテート美術館の所蔵品から、油彩画や水彩画など80点以上を紹介する。
また、テート美術館での試みと同様に、ターナーの絵画と現代美術を併置して「対話」させることで、過去の画家の問題意識が後世のアーティストたちの関心とも響き合うことを浮き彫りにする。
なお、本展は2027年3月13日(土)から6月27日(日)まで大阪中之島美術館に巡回する予定。

ターナーは自宅のそばに開設した画廊で自身の作品を展示販売していた。
彼は自身の絵画がどのように鑑賞者に受け止められるかに細心の注意を払い、来訪者が最初に作品を見る環境そのものを整えていたといわれる。入室前に薄暗い部屋で来館者をしばらく待たせたという逸話はその一例だ。

島国である英国には、多様な風景を見せる山岳や丘陵、湖などがある。そうした英国の風景を、歩きながら丹念に記録したターナーの初期作品は、自然が生み出す形態や色彩、それらと不可分な光と大気を、彼がいかに綿密に観察していたかを明らかにしている。

1802年、ターナーは20代後半のとき
に、初めて英国の外へと旅に出た。フランス、そしてスイスに足を延ばす過程でターナーは険しくも悠然とそびえるアルプスの山々と遭遇した。彼は生涯を通じて6度もアルプスを訪れ、1841-1844年のスイスへの旅がその最後となった。

ターナーが生きた時代にもっとも権威があった絵画ジャンルは歴史画で、彼もまた繰り返し、それを描いた。ターナーは歴史的主題を巧みにあつかう力量によって高く評価されたが、それだけでなく、従来の絵画様式や理想化された世界像を超えていった点においても注目された。彼は古典的な主題を取り上げつつも、実験的な手法を用い、見る者の経験により強く訴えかける作品を生み出していった。

ヴェネツィアは歴史ある建築都市としての驚異であると同時に、潮の満ち引きに左右される脆弱な生態系のうえに立つ都市である。陸と水の交わり、広大な空と壮麗な建築を持つヴェネツィアは歴史上、数えきれないほど多くの芸術家を惹きつけてきた。しかしターナーほどに、その都市のありかたと響きあう油彩画や水彩画を生み出した画家はほかにはいなかっただろう。

ターナーが残した作品群のうち、半数以上を占めるのは海景画だ。そこには外洋、捕鯨船、漁船、難破船、海戦を描いた絵画が含まれ、海は人間の営みと自然の力が出会い、しばしば衝突する場として描かれている。海の危険とその抗いがたい力学を前にした人間がどのように表されたか。

ターナーは海の激しいちからを捉えただけでなく、その詩的で見る者を惹き込むような性格も探求した。油彩画にくわえ、ターナーは薄くたなびく雲、海しぶき、波頭などの細部を描写した数百点におよぶスケッチも残した。これらをあわせて見ると、海面や光が移ろっていくさまにターナーが一貫して強い関心を向けていたことがわかる。

健康の悪化や同業者からの批判にもかかわらず、晩年のターナーはきわめて旺盛な制作を行なっていた。技法や素材をめぐるいっそう大胆な実験を重ねながら、こんにちとりわけ高く評価される挑戦的な作品を数多く生み出した。この時期のターナーの芸術は、しばしば伝統からの離脱によって位置づけられる。が、ターナーの作品はなおも同時代の芸術、科学、文化をめぐる思考と深く関係しており、伝統への意識と変革の態度をあらたに融合させたものだった。

開館時間は午前9時半から午後5時半。金土曜日は午後8時まで。入館は閉館の30分前まで。休館日は月曜日、11月24日(火)、12月28日(月)~2027年1月1日(金・祝)、1月12日(火)。ただし、11月23日(月・祝)、2027年1月11日(月・祝)は開館。
観覧料は一般2400円、大学生1500円、高校生1100円、中学生以下、障がい者手帳を持つ方および付添者1名は無料。
問い合わせは℡050-5541-8600(ハローダイヤル)。展覧会公式サイトは https://turner2026-27.exhibit.jp/
