雲を売る共同経営者|#シロクマ文芸部
「雲を売るんだよ! な? すごいアイディア! おれ、天才。いけるでしょ!」
は? こいつは異様にキラキラした目をして、いきなり何を言い出したんだ?
「修二、雲を売るってなんだよ。あの雲のことか?」
「あの雲もこの雲もあるか! 悟、焼売あるだろ? あの”売る”の漢字には、『提供する』って意味があって、中国ではそっちで使ってんだってよ。でな、今おれ、店舗はここを借りようと思ってるんだ」
おいおいおいおい! アホの修二にしては珍しくファイルなんか持ってどうしたのかと思ったら……。候補の店舗に赤丸つけてる。……やばい。
「ちょっと待て! いくら付き合いが長いったって、今、俺は、お前が、何言ってるか、ほんとにわからん。雲を提供するって? 俺が?」
「共同経営者だろ。当たり前だ。あのさ、雲呑っていうだろ? あの、やわらかくてつるんとした感じが、雲を呑むイメージなんだってさ。そんで、スープに浮かんでるあの白いのが雲みたいで、それで、雲呑っていうんだからさ、雲を売る、っていいじゃん! 俺、実は雲呑好きなのよ」
「……うん、雲呑。俺も好きよ。そうそう、あのツルッとした感じがいいよね。……で、共同経営者って、修二くーん! ナニを言ってるのかな……? 『雲を売る』ってなんなのォォォ!」
俺は、なんだか泣きたいような気分になってきた。
「はっはっは! いいか、悟。落ち着け。仙人は霞を食ってるだろ? 霞だぞ。だったら、どうだよ? そうだろぉ? みんな雲食べたいじゃんか! なっ! だから、そこで雲を売るって話になるんだよ。雲売ってな! フフン」
修二は誇らしそうに、笑っている。
もう俺は、笑うしかなかった。冷たい汗が背を伝う。
そして、雲を呑むように息を呑んだ。
そうだ。雲は呑むもんだ。焼は売るもんだ。雲は売れない。
■お題:「雲を売る」ではじまる
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