三度目の グラン・ブルー
20代,観たあとすぐに屋上プールに飛び込んだほど深い青に惚れてしまった。
30代,女とイルカの間で揺れるなんてどうかしてると許せなかった。
シニアになった今,ジャックはエンゾの魂とともに深海に寄り添ったのだ,と分かる。ラストシーンについて,映画評論家たちはジャックはイルカの棲む海へ溶けていったというが,私はラストシーンの次の未来をこう思う。
大丈夫,ジャックはきっとジョアンナが待つ陸へ還ってくる 。旅人が故郷へ戻ってくるように。
37年間ずぅぅぅと好きだったし,はじめて買ったVHSで何度も繰り返しみた。”私のグラン・ブルー”について想いを記しておく。
(ネタバレあるので未見の方は注意ください)
●写真 左:1988年当時の大判パンプレットB3サイズ
右:2025年4Kの日本版ポスター
冒頭のモノクロ回想シーン 色はなくても海の透明度や波のきらめきが伝わり美しい。
幼いころ,ギリシャの離島で育ったふたり。ジャックは貧しい潜水夫の息子で,あだ名はフランス人のちび。エンゾはそこそこのイタリア名門一家の長男で,近所のガキ大将。二人とも潜るのが上手な少年だった。
愛すべき男・エンゾ
ジャックと十数年ぶり再会した時,エンゾが別れた女のことを思い出し,こう言っていた。「本当に好きだった女と別れて自殺までしようとしたんだ。だがな,死ねなかった。二年も経てば好きだった女のことも忘れてしまう」。彼の言葉を借りれば,ジャックは親友との別れを乗り越えられる日がくる,と信じたい。
それにしても エンゾがあんなにどデカいのに,ママンに頭が上がらず 「ママン以外のパスタは絶対食べません」と誓いを立ててるところ,何度みても微笑ましい。
エンゾ役のジャン・レノ ‼︎ 漢らしいええ奴。友情と約束をまもる熱い男を演じて,揺るぎない。
破天荒な兄貴エンゾと支える弟ロベルトとのコンビもうまい。
例えば,遭難船調査の事故をチャンスにと,保険会社に100万ドルを吹っ掛けるエンゾと弟。エンゾが「俺の村には格言がある…... 何だった?」とロベルトに助けを求めるが弟の表情は「???」。撮影中に本当にセリフを忘れてしまったが,そのまま本編で使われたのだ(笑)。大金を手にしてもフィアット500を二回塗り替えるだけで,ポンコツ車を買い変えようとしない,こだわりの頑固者。ダイビングの記録にも挑戦し続け,最後の最後まで熱い男だった。

イルカと家族の青年 ジャック・マイヨール
母が去り,父が潜水事故で無くなり,天涯孤独となった少年は海のイルカと兄弟のように育った。水族館のイルカにダージリンと名前を付け,旅行土産を買ってくるほど”家族”だった。
成長したのちも寡黙で女性経験もほぼなく,海とイルカだけが彼の青春だったが,旧友エンゾよりフリーダイビング競技会への招待状を受け取ってから,身辺が騒がしくなる。そして,南米ですれ違った女性ジョアンナと恋に落ちてしまう。
人間の女性と愛し合うよりもイルカと泳ぐほうが気楽。海にいる時がもっとも輝いてる人魚男・ジャックの名セリフ
「海底はつらい。上がってくる理由が見つからないからだ」
えーん(泣)。愛する男にこんなこと吐かれたら,こっちこそ痛くてつらいわ。
しかし,演じるジャン・マルク・バールのうるんだ青い瞳でみつめられたら許してまうよね。
恋に一途なジョアンナ
南米へ仕事で行くのに,パンプスはいてブランドものバッグさげて―,アホちゃう,と思ったが当時のNYキャリアガールはこうだったのね。さして魅力的に映らなかったジョアンナが,年を経てとてもチャーミングに思えてきたのは不思議。上司をだましジャックに会いにイタリア出張してしまうが,バレて叱責され職を失う瀬戸際に「ある男に恋してしまったんです」と悪びれもなく正直に言うところ,可愛らしいやん,と。
一回目より二回目,二回目よりも三回目,と見直すたびに,この物語はジョアンナの恋物語なんだ,と気づかされた。海に魅せられた男たちと彼らを愛する女,アンデルセンの人魚姫の逆さ版といえるだろう。
そして,リュック・ベッソン監督の自伝によると,私生活では女優ロザンナ・アークェット自身はハリウッドでのちに”me too"問題となる騒動に巻き込まれており,キャリアに悩んでいたらしい。相当つらかったに違いない。
エリック・セラとリュック・ベッソン
少年時代のベッソン監督の若き日の試練を赤裸々に語った自伝では,音楽家エリック・セラとの出会いも記されている。
本作ではモノクロ冒頭シーンの序章的な曲、南米での民族音楽らしい曲調、ニューヨークでの都会らしい曲調などストーリーに花を添えてる。ベッソン監督と組んだどの映画でも毎度センスがすばらしい。
三度目のブラン・ブルー
ここで何種類かあるが,微妙に編集内容が違う三種類のポスターの紹介

「グレート・ブルー」(日本公開1988年)
作品が完成したあと,なぜか短いアメリカ版[The Big Blue](セリフは英語.音楽もエリック・セラではない)というのが先に出回った。

「グラン・ブルー オリジナル版」(日本公開1992年)
こちらのポスターは奇跡のショット,と呼ばれているイルカたちが一斉に波間にはねている映像。本物のイルカが,デジタルでなくはねている!!!
ほんまにすごい。

「グラン・ブルー 完全版4K」(日本公開2025年)
1980代では水中カメラ撮影はそんなに発達しておらず,相当な資金を毎日毎日費やした。あの濃厚で深遠な青は監督自身が情熱を燃やし続け追い求めた結果のまさにグラン・ブルーだ。
蛇足だが,運が悪いことに, 監督自身の娘が撮影中に手術を受け,完成した映画のラストクレジットには”娘・ジュリエットに捧ぐ”と標された。撮影も必死,親としても絶体絶命のさきにこんなに美しい映画が完成できたんやね。
本物ジャック・マイヨールのドキュメンタリー・タッチの映画もあるが,こちらは未見。実際の彼の記録は水深105m
#4Kで出会う真のグランブルー
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