沖縄で10年暮らしたら、地元・兵庫がちょっとした異文化になっていた
沖縄で暮らして約10年、3年ぶりに兵庫へ帰省してきた。
そして到着早々、父に言われた。
「沖縄には靴ないんかいな」
ないわけではない。もちろんある。
ただ私は、本当に靴を持って帰るのを忘れていた…。
どうやら私は、自分が思っていた以上に沖縄の暮らしに染まっていたらしい。
兵庫に帰ってきて、以前は当たり前だったはずの風景に驚いている。
まず、人が多い。
街を歩いている人が多いし、自転車も多い。前後に子ども用のシートをつけた、いわゆる「ママチャリ」に乗っているパパもよく見かける。
沖縄は、とにかく車社会だ。
公共交通機関が少ないこともあるけれど、何より日差しが強すぎて、徒歩での移動は危険を感じるほどだ。
だから、徒歩5分のスーパーにも車で行く。私もそれがすっかり当たり前になっていた。
だから今、歩いて買い物に行くだけでちょっと楽しい。
そして、予定より買いすぎて「重っ!」となりながら歩くのも、また楽しい。
兵庫では、時間の流れの速さにも驚いた。
今回は神戸空港を利用したので、空港からはポートライナーで三宮まで向かった。そこから阪急電車に乗り換えようと駅に着いた瞬間、次の電車は何時なのか、何番線なのか、乗り遅れないためにはどこへ行けばいいのかと、急にあちこちを確認し始める。
さっきまで普通に動いていた時計が、駅に着いた途端、高速回転し始めたような気分だった。
電車に乗れば、今度は情報がどんどん飛び込んでくる。
中吊り広告を眺めるだけでも、
イベント情報。
イベント情報。
ひとつ飛ばして、学研教室。
漫才のつかみのようだけど、本当にそんな感じで、さまざまな広告がズラリと並んでいる。
沖縄にもモノレールはあるけれど、広告の多くは美容クリニックや病院の宣伝。あとは端っこに、指名手配犯の情報が載っているくらいだ。
電車内を見渡せば、イベントや新商品の案内、知らなかったサービス、色とりどりのキャッチコピーが並んでいる。
ただ電車で移動しているだけなのに、世の中の情報が次々と目に入ってくる。さまざな言葉や表現に触れられるのもおもしろい。
もうひとつ驚いたのは、みんな靴を履いていること。
兵庫では当たり前の光景なのに、なぜか新鮮に見えた。
沖縄では子どもたちが島ぞうりで過ごすことも多く、わが家も普段はサンダルばかり。保育園でも、足の健康のために島ぞうりが推奨されていたし、保護者もサンダルがほとんどだったので、当たり前のようにサンダルを履いて登園していた。
そして当然のようにそのスタイルで帰ってきたものだから、空港まで迎えに来てくれた父に、
「沖縄には靴ないんかいな」
と笑われた。
もちろん、沖縄にも靴はある。笑
けれど、サンダル生活がすっかり当たり前になっていた私は、帰省するときに自分の靴を持ってくるのを忘れてしまった。
兵庫に着いてから、「靴、いるやん……」と後悔した。
素足にサンダルで歩いている自分が、なんだか急に恥ずかしくなった。
家でテレビをつけたときには、チャンネルの多さにも驚いた。
沖縄で見られるのは、NHKの2チャンネルと民放の3、5、8チャンネル。兵庫に帰って見られる番組が一気に増え、ようやく金曜ロードショーの話題にもリアルタイムでついていけるようになった。笑
一方で、兵庫へ帰ってきたからこそ、あらためて気づいた沖縄のすごさもある。
最近は「沖縄が避暑地になっている」と言われることもある。たしかに気温だけを比べれば、兵庫のほうが高い日もある。
それでも、沖縄の日差しはやっぱり別物だ。
気温ではなく、肌に突き刺さるような強さがある。兵庫の暑さを感じながらも、「沖縄の日差しはもっと痛かったな」と思い出す。
人の多さや時間の流れ、靴を履く生活、テレビのチャンネル…
そんな日常に驚いている自分を見て、私はいつの間にか、すっかり沖縄の暮らしに馴染んでいたのだと気づいた。
暮らす場所が変わると、「当たり前」もこんなに変わるらしい。
3年ぶりの兵庫は、地元のはずなのに、ちょっとした異文化体験になっている。まだまだ驚くことはありそうだ。
とりあえず、靴を買いに行こうと思う。
