広告IDからの逃避|個人でも出来そうなトラッキング対策
前回「米軍がビビって広告ID切った。で、俺らはどうなんや?」を書いた。
その記事では「個人でできること」はあくまで補助的な情報しか書いてなかったので、今回は対策メインで書いてみる。
各対策、やると何が防げて、何を失うかもセットで、Tier別にしたよ。
プライバシーは基本、利便性とのトレードオフだしね。
多分、普通はTier 1で十分。プライバシーを気にしてる人はTier 2の中で必要なものを選択、プライバシー沼の住人はTier 3を検討しだす、って感じ。
過去記事で詳しく書いてるのもあるから、織り交ぜながら紹介します。
※俺はAndroid使ってないから、この記事内のAndroid対策はAIさんによる解説です。他の部分はClaudeと相談しながら精査したよ。
Tier 1:基本セット
「特に拘りはないけど、ちょっとは気にしたい」人向け。
所要時間は全部合わせて15分くらい。
iPhone:トラッキングを許可しないよう要求
設定 → プライバシーとセキュリティ → トラッキング → 「Appのトラッキング要求を許可」をオフ。
これで、既にインストール済みのアプリも含めて「他社アプリやサイトを横断した行動追跡」を一括拒否できる。個別アプリ初回起動時に出るポップアップでも都度「Appにトラッキングしないように要求」を選べば同じ効果。
享受できるもの:他社サイト・アプリを横断したプロファイリングの遮断。効果を実感しやすいのは、Instagramで見た商品が他のアプリの広告に延々出てくる現象が減ること。
失うもの:ほぼ無い。強いて言えば広告が「自分と無関係なもの」に戻るので、たまに的外れな広告が増えて鬱陶しく感じるかも。
Android:広告IDの削除
メーカーによって場所が違うので、設定画面の検索バーに「広告」と打つのが一番早い。
Pixel:設定 → Google → すべてのサービス → プライバシーとセキュリティ → 広告
OnePlus:設定 → セキュリティとプライバシー → プライバシー コントロール → 広告 → 広告IDの削除
Samsung(旧バージョン):設定 → プライバシー → 詳細設定 → 広告
「広告IDの削除」を選んで確認すれば完了。「広告IDの詳細」というリンクしか出ず削除ボタンが無い場合は、既に削除済み。
享受できるもの:iPhoneと同じく、アプリ横断のプロファイリング遮断。
失うもの:ほぼ無い。
位置情報:アプリごとに絞る
iPhone・Android共通で、位置情報の許可は「常に許可」になってるアプリを疑ったほうがいい。設定 → プライバシー(Androidは位置情報)→位置情報サービスから、アプリ一覧を開いて一つずつ確認する作業になる。
基本方針:
地図アプリなど「今の位置」が要るものだけ「使用中のみ許可」
バックグラウンドで位置が要る理由が思いつかないアプリ(ニュース、ゲーム、SNSなど)は「許可しない」
「常に許可」は基本ゼロを目指す。天気アプリすら「使用中」で十分なことが多い
享受できるもの:バックグラウンドでの位置情報の常時収集の遮断。前回記事で触れた「広告SDK経由での位置情報送信」の入口を直接塞げる、一番効果が大きい対策とも言える。
失うもの:一部アプリの「今いる場所に基づく通知」みたいな機能が動かなくなる。天気アプリの自動地点切り替えとか。
ブラウザ:Brave か Firefox+uBlock Origin(PC・Android)
前回も名前だけ出したけど、ちゃんと比較すると:
Brave:インストール直後から強い。デフォルトのShields機能で広告・トラッカー・フィンガープリント対策が全部入り。設定不要で使いたい人向け。
Firefox+uBlock Origin:Firefoxは今なお唯一Google/Apple傘下じゃないブラウザエンジン(Gecko)を維持してて、Manifest V2のままなのでuBlock Originがフル機能で動く。ChromiumベースのBraveは今後Chromeと同じMV3の制約を受けていく方向なので、長期的な拡張性ではこっちが上。
導入したらやる設定:
Firefoxの場合:設定 → プライバシーとセキュリティ → 「トラッキング防止」を「厳格」に。uBlock Originはインストールするだけでほぼ設定不要(デフォルトのフィルタリストで十分効く)
Braveの場合:アドレスバー右のライオンアイコンから、Shieldsが有効になってるか確認するだけ
これはPCとAndroidの話。Androidは各ブラウザが独自のレンダリングエンジン(ChromiumやGecko)をそのまま積めるので、乗り換えの効果がそのまま出る。
享受できるもの:広告表示自体の削減、クロスサイトCookie追跡のブロック、ページ表示速度の向上(広告読み込まない分軽くなる)。
失うもの:まれに壊れるサイト(EC決済画面とかで稀に発生)。厳格設定だと解除が必要な場面がたまにある。
iPhoneの場合:実は中身、どれもSafari
iPhoneはApp Storeのポリシーで長らく「ブラウザのレンダリングエンジンはWebKit(Safari)以外禁止」ってルールがあって、iPhone版のChromeもFirefoxもBraveも、UIや広告ブロックの層は別物でも、土台のエンジンは全部WebKit。
つまり「ブラウザを変える」効果は、PC/Androidほど大きくない(※EU圏だけDMA対応で2024年から他エンジンが解禁されてるけど、日本は対象外)。
なので日本のiPhoneでの現実的な選択肢は2つ:
コダワリがないならSafariのまま設定を詰める
設定 → Safari → 「サイトを越えてトラッキングしない」をオン、「詐欺Webサイトの警告」もオンのまま。エンジンが同じなので、乗り換える手間をかけずにこれだけで一定水準まで持っていける。
「すべての Cookie をブロック」をオンにするとログイン情報保持なども問題が出るので、バランスを考えると、標準の「サイト越えトラッキングを防ぐ」だけでいいかな。
広告ブロックの強さで選ぶならBraveへの乗り換えもアリ
エンジンはSafariと同じでも、Shields機能自体はアプリ層で動くので広告カット・トラッカーブロックの効きは体感できるほど強い。「中身がSafari(Webkit)ベース」ってだけで、対策効果がゼロになるわけではない。
要は、iPhoneでは「エンジンごと変える」という発想を捨てて、「アプリ層の対策としてどっちが強いか」で選ぶくらいの温度感でいいと思う。
検索エンジン:DuckDuckGo / Brave Search / Startpage
Googleは検索履歴を広告プロファイルに直結させる設計なので、代替を検討する価値はある。3つの性格が結構違う。
DuckDuckGo:一番シンプル。個人プロファイルを持たない設計で、どのブラウザでもデフォルト検索エンジンに設定しやすい。検索結果の大部分はBing由来。
Startpage:Googleの検索結果をプロキシ経由で「無プロファイル化」して返す方式。結果の質はGoogleにかなり近いのが強み。オランダのサーバーでEUのプライバシー規制下にある。
Brave Search:独自インデックス(Tailcat由来)を持ち、Google/Bingどちらにも依存しない。マイナーな検索には弱いことがあるが、主要サイトの検索結果は十分実用的。
これらを、ブラウザのデフォルト検索エンジンに設定する。
享受できるもの:検索履歴が広告プロファイルに紐づかなくなる。フィルターバブル(自分の興味に最適化されすぎた検索結果)からも距離を置ける。
失うもの:Google検索特有の「ドンピシャで出てくる」感覚が落ちることがある。特に日本語のローカル情報・マイナーな固有名詞検索で差が出やすい。
Tier 2:もう一歩踏み込みたい人向け
ここからは「面倒でもやると効果ある」っていう層。
それぞれ導入に数十分〜半日くらいかかる。
DNS:暗号化DNSへの切り替え
普通の回線業者のDNSを使ってると、アクセス先のログはISP側に残る前提で考えたほうがいい。用途別に選ぶといい。
Cloudflare (1.1.1.1):速度最優先。IPログは24時間以内に破棄、恒久保存なし。表示も問題ないし、使いやすい。コダワリがないならこれでいい。
Quad9:スイスの非営利団体運営。IPアドレスとクエリの紐付けを一切行わない厳格な無ログ方針。マルウェアドメインのブロックも標準で付く。設定して放置したい人向け。ブロックが強くて見れないサイトが増える。
NextDNS:自分でブロックリストをカスタマイズでき、端末ごとに別設定も可能。トラッカーのドメイン自体を名前解決の段階でブロックできる。設定が強力なので、見れないサイトはある程度調整可能。無料枠あり。
設定はiPhone/Androidどちらも「設定 → DNS」やプロファイルインストールで対応可能(各サービスの公式サイトに端末別の手順あり)。
享受できるもの:閲覧履歴のISP側ログを回避。NextDNSならアプリ内トラッカー通信もドメインレベルで遮断できる。
失うもの:あまり無いが、企業ネットワークやフィルタリング環境だと接続がブロックされる場合がある。
VPN
ここは趣味の範囲。やらなくてもいいけど、外出先でWifi繋ぐとか海外サービス使いたい人とかはアリかもしれん。
VPN業者自身がログを取ってたら本末転倒なので、第三者監査を通過してる業者に絞るのが最低条件。
Mullvad:総合評価トップクラス。2024年に本体アプリの完全監査、2026年には決済・アカウントシステムの監査も追加で通過。現金や匿名の支払い方法にも対応してて、アカウント作成にメール不要。2023年にスウェーデン警察が令状持って来た時も渡せる顧客データが無かったという実績付き。
ProtonVPN:2025年に4年連続の無ログ監査をパス。アプリは完全オープンソース。無料プランもあるので試しやすい。
IVPN:Mullvadと並ぶプライバシー重視層向け。無ログ実装はCure53の監査済み。こちらもメール無しでアカウント作成可能。
享受できるもの:ISPから通信内容そのものを隠せる。公衆Wi-Fi利用時の盗聴対策にもなる。
失うもの:スマホのGPS/Wi-Fi測位はVPNを迂回するので、位置情報トラッキングへの効果は限定的(前回記事の通り)。あと通信速度が多少落ちる、一部の地域制限コンテンツやオンラインバンキングでVPN経由だと弾かれることがある。
メール:エイリアスアドレスを使う
サービスごとに使い捨てのメールアドレスを発行して、本物のメールアドレスを晒さない仕組み。
SimpleLogin:無料プランでエイリアス10個まで。返信メールの同期(リバースエイリアス)機能が使いやすい。SimpleLoginはProtonとセット利用が強力。個人的おすすめ。詳細は下記記事参照▼
addy.io:無料プランでもエイリアス実質無制限(月10MBの転送量制限はあり)。独自ドメインは有料。
サービス登録のたびにエイリアスを新規発行して使う。漏洩したサービスが分かればそのエイリアスだけ削除すればいい。
享受できるもの:どのサービスからメールアドレスが漏れたか特定できる。本物のメールアドレスへのスパム集中を防げる。
失うもの:エイリアス管理の手間。パスワードリセットメールなどが届くまでのワンクッションが増える。
正直これはProtonPass課金とセットが最強だと思ってる。AppleやGoogleもエイリアス提供してるけど、今回の文脈ではちょっと違う気がするから排除してる。
メールサービスの変更もありかも。
決済・支払い方法
クレジットカードの購買データもトラッキング源になる。店舗ごとに使い捨てのカード番号を発行できると、購買履歴の名寄せを防げる。
米国だとPrivacy.comが定番だが日本非対応。
基本的にApple PayかPayPalでいい。
ApplePayはそもそも実カード番号を店舗に渡さない仕組み(デバイス固有の番号に変換)なので、対応店舗ではそれだけでも十分効果がある。
ここに関しては、「ショップやサービス会社に直接カード情報を渡さない」ってことが出来てれば良いと思う。
享受できるもの:カード情報漏洩時の被害範囲の限定、店舗横断での購買データ名寄せの阻止。
失うもの:日本では選択肢自体が少ない。AppleやPayPalには情報を握られる。
メッセージアプリ:Signalへの一部移行
LINEやMessengerは会話内容だけでなく「誰といつどれだけ話したか」というメタデータ自体が集められる。
Signal:メタデータの最小化を設計思想の中心に置いてる数少ないアプリ。非営利団体運営。
仲間内だけ・大事な人との連絡だけ・LINE履歴に残したくない会話だけ、など、LINEから移行できそうな相手とだけ利用する。
享受できるもの:通話・メッセージのメタデータ収集からの離脱。
失うもの:相手も使ってないと意味がない、という普及率の壁。LINEスタンプ文化圏の日本だと特に移行コストが高い。
ブラウザのコンテナ機能・拡張
Firefox Multi-Account Containers:GoogleやFacebook系サービスを別コンテナに隔離して、他サイト閲覧時に紐付けられないようにする公式拡張機能。
NoScript:サイトごとのJavaScript実行を制限。フィンガープリント対策として効くが、対応の手間は大きい。
享受できるもの:ログイン中のGoogle/Facebookアカウントが、他サイト閲覧の追跡クッキーとして使われるのを防げる。
失うもの:NoScriptは壊れるサイトが頻発するので、上級者向け。
スマートTV:ACR(自動コンテンツ認識)をオフにする
スマートTVの多くは画面に映ってる映像を解析して「今何を見てるか」を判定し、広告データとして送信するACR機能がデフォルトON。
Roku/TCL:設定 → プライバシー → スマートTV体験 → 「TV入力からの情報の使用」をオフ
Hisense:設定 → システム → プライバシー → 「スマートTV体験」をオフ
Fire TV:設定 → 環境設定 → プライバシー設定 → 関連項目を全てオフ
メーカー・機種で名称が違うので、自分の機種名+ACRやプライバシーで検索するのが確実。
享受できるもの:視聴内容の外部送信の遮断。
失うもの:番組に応じたおすすめ表示など一部機能が使えなくなる(が、そもそも要らない機能な人が多いはず)。
Pi-hole:家全体のトラッカーを一括ブロック
Raspberry PiやDocker上で動かすDNSサーバーで、自宅ネットワークに繋がる全端末(スマホ、PC、スマートTV、IoT機器)のトラッカー通信をまとめてブロックできる。個別の端末設定が不要になる。Tier 3寄り。
享受できるもの:ブラウザに依存しない、アプリ内トラッカーやIoT機器のテレメトリまで一括遮断。管理画面でどれだけブロックされてるか可視化される。
失うもの:初期構築の手間(Raspberry Piの用意、DNS/DHCP設定)。外出先のモバイル回線では効果が及ばない。個別端末で手動でDNSを変更されるとすり抜けられる。
Tier 3:非現実ゾーン(やる人はほぼいないやつ)
ここから先は「プライバシー防壁構築が趣味」みたいな過激派向け。
挙げるだけ挙げるけど、正直ここまで行くと日常生活とのトレードオフが大きすぎる。
GrapheneOS:Googleを完全に抜いたAndroid
Pixelシリーズ専用の、プライバシー特化のカスタムOS。grapheneos.orgの公式Webインストーラーからコマンドライン不要で導入できる(対応機種はPixel 6以降)。
享受できるもの:GoogleのOSレベルでの収集経路そのものを断てる。センサーごとの権限制御も標準Androidより細かい。
失うもの:Google Playの一部サービスに依存するアプリ(銀行アプリ、一部ゲーム)が正常動作しない場合がある。対応機種がPixelに限定される。設定・トラブルシューティングの技術的ハードルが高い。
Torブラウザ:匿名性重視の最終手段
Tor Project公式のブラウザ。通信を複数の中継サーバー経由で匿名化する。GrapheneOSとファラデーバッグの中間くらいの立ち位置。実用に耐えない遅さ。
享受できるもの:閲覧元のIPアドレスと身元の紐付けをほぼ不可能にする。
失うもの:通信速度が大幅に低下。動画視聴やログイン必須のサービスとは相性が悪い。「Torを使ってる」こと自体が一部サービスから不審なアクセスとして扱われることもある。
ファラデーバッグ:電波を物理的に遮断する
スマホを入れると5G/GPS/Bluetooth/Wi-Fiの電波を全部遮断する袋。「Mission Darkness Dry Shield」あたりが定番で挙げられてる。
享受できるもの:物理的に電波を通さないので、位置情報トラッキングを技術的に完全に無効化できる。
失うもの:袋に入れてる間、スマホとして一切機能しない。普段使いには非現実的すぎて、特定の場面(機密性の高い打ち合わせに持ち込む時など)以外の使いどころがほぼ無い。
複数ペルソナ運用:生活そのものを分人化する
本名で使うアカウント群と、完全匿名で使うアカウント群を意図的に分離して運用する。メールも決済も交友関係も別に管理する。
享受できるもの:一方のペルソナが特定されても、もう一方の生活には影響が及ばない。
失うもの:管理コストが跳ね上がる。友人・家族との連絡すら分離対象にすると社会生活が破綻しかねない。
現金決済オンリー生活
デジタル決済を一切使わず、現金で生活する。
享受できるもの:購買データという経路そのものを物理的に消す。
失うもの:ネット通販、サブスク、多くのキャッシュレス前提のサービスが使えなくなる。
ネットをやめる
終着点。
享受できるもの:精神的自由。
失うもの:全て。
まとめ
Tier 1は誰でも15分でできて、正直これだけでも最低限の追跡からは十分距離を置ける。
Tier 2は面倒だけど個人でも現実的に運用できる範囲。
Tier 3は、はっきり言ってやらなくていい。挙げたのは「対策には天井がある」ことを実感してもらうため、くらいの温度感。
リストアップしてみても、やっぱり「これさえやれば安心」なものはない。
広告ID、位置情報、IP、DNS、フィンガープリント、それぞれ別の経路で、対策も別々に打つしかない。
でも、Tier 1だけでもやっておく価値は十分にある。
今回記事に纏めてみて、トラッキングからの逃避の難しさを再認識できたのと、改めて環境を見直すきっかけにもなった。
不便を感じない範囲で試してみるといいかも、ってお話でした!
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